ディフェンダー (サッカー)
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ディフェンダー (defender) は、サッカーにおけるポジションの一つであり、主に守備を担当する。略号はDF。かつてはバックスとも呼ばれた。
一般に必要とされる能力は相手のドリブルなどに対応できるスピード、他の選手への的確なコーチング、確実性。能力の高い選手は展開を読んでDFラインを統率したり、フィジカルの強さで相手FWを止めたりすることができる。近年のサッカーではさらに高さ(ヘディング)への対応も重要になってきたことから、DFには長身の選手を据えることが多くなっている。そういった選手は味方のコーナーキックなどのチャンスには攻撃参加するなどの攻撃に対する意識も問われる。
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[編集] センターバック
(英) centreback (centerback)、central defender、centre half (center half)
ディフェンス・ライン中央のゴール前方に位置するディフェンダーのこと。 相手選手のマークをし、地上でも空中戦でも相手を抑え込むことを担当する。 また最終ラインの統率、及び攻撃面でのビルドアップを担当することもある。
広義では、以下のストッパー・スイーパー・リベロも含む中央を守るディフェンダーであるが、狭義では4バック時の中央の2名である。マークの受け渡しにより、ストッパーとスイーパーの両方の働きをする。
[編集] ストッパー
(英) stopper
センターバックのうち、相手フォワードをマークして攻撃の機会を奪う役割の選手のこと。
代表選手は
- ユルゲン・コーラー(引退、ドイツ)
- トーマス・リンケ(引退、ドイツ)
- マルコ・マテラッツィ(インテルミラノ、イタリア)
- フィリップ・メクセス(ASローマ、フランス)
- アレッサンドロ・ネスタ(ACミラン、イタリア)
- ダニエル・ファン・ブイテン(バイエルン・ミュンヘン、ベルギー)
- リオ・ファーディナンド(マンチェスター・ユナイテッド、イングランド)
- カルレス・プジョル(FCバルセロナ、スペイン)
- ジョン・テリー(チェルシー、イングランド)
- ファビオ・カンナバーロ(レアル・マドリード、イタリア)
- 中澤佑二(横浜Fマリノス、日本)
など。
[編集] スイーパー、スウィーパー
(英) sweeper
センターバックのうち、特定の相手選手を1対1でマークせず、他のディフェンダーの後ろに位置し、カバーリングや他のディフェンダーへ指示を出す役割の選手のことをいう。または、3バック時のセントラルセンターバックを言う場合もある。「現代式リベロ(スイーパー型リベロとも言う)」の役割をになうポジションであるが、近年では4バックやゾーンディフェンスの主流もあり、あまり使われなくなったポジションである。
代表選手は
- ガエタノ・シレア(引退、イタリア)
- ロナルト・クーマン(引退、オランダ)
- ダニエル・パサレラ(引退、アルゼンチン)
- フランコ・バレージ(引退、イタリア)
- 井原正巳(引退、日本)
- 宮本恒靖(レッドブル・ザルツブルク、日本)
など。
[編集] リベロ
(伊) libero
スイーパーの中でも、チャンスのときには積極的に攻撃参加する選手のことを言う。元々は、イタリアのカテナチオという戦術におけるスイーパーのこと。相手FWをマンマークをする他のDFとは別に、1人余って特定のマークする相手を持たない=「(マンマークの守備から)自由な人」ということで、イタリア語で「自由」を意味する『リベロ』と呼ばれた。その後、旧西ドイツ代表のフランツ・ベッケンバウアーが、機を見て攻撃参加のために前線に上がるというこのポジションのスタイルを確立したと言われている(それに対し、元オランダ代表ヨハン・クライフが始めたポジショニングこそが正しいリベロという意見もあるが、一般的ではない。この場合はイタリア語の「自由」の意味通り、全く固定の位置はなかった。後のルート・フリットもそれに当てはまる)。
「攻撃参加もするセンターバック」というイメージは定着しているが、実際リベロと呼ばれていても攻撃参加はほとんど行わない(従来のスイーパー)ケースが少なくない(本来の「特定のマークを持たない」という意味では不適切な呼び名ではない)。
また、ストッパーの前方にポジショニングし、一人余るリベロの役割をする選手を「フォアリベロ」と呼ぶことがあるが、守備的ミッドフィールダーに分類されるケースが多い。元リベロの選手がコンバートされた場合に呼ばれることも多い。
リベロ(旧西ドイツ式)、フォアリベロの代表選手は
- フランツ・ベッケンバウアー(引退、ドイツ)
- ローター・マテウス(引退、ドイツ)
- マティアス・ザマー(引退、ドイツ)
- 洪明甫(引退、韓国)
- ヴォルフガング・ファイアージンガー(引退、オーストリア)
- フェルナンド・イエロ(引退、スペイン)
- 田中マルクス闘莉王(浦和レッズ、日本)
など。
[編集] サイドバック
(英) side back, fullback
4バックのディフェンスラインの外側、左右両サイドに位置するディフェンダーのこと。基本的にはピッチ両サイドの守備を担当するが、ディフェンスラインのラインコントロールにも参加し、CBのカバーに回ったりもする。またチャンスの時には、積極的にサイドをオーバーラップして攻撃に参加、クロスを上げるなどして、前線で攻撃的選手の手助けをする。攻め上がる回数はセンターバックよりは多いが、ウイングバックと比べると少ない。
相手チームのサイドアタッカーを1対1の勝負で抑えこめる体格や守備技術、試合中ずっとサイドラインを駆け上がっては戻るということを繰り返すための運動量が求められる。攻撃面では特性上1対1の突破よりも、主にサイドアタッカーのサポートやスペースへの動き出しが重要視される。体力・技術ともに高レベルでの共存がプレーの前提となる為か「一番上手い選手のポジション」と言われることもある。チームの攻撃の基点となる選手がこのポジションに入ることも少なくなく、本来はMFの選手でもサイドからの攻撃に定評のある選手はこのポジションを任されることも多い。
サイドバックは和製英語で、英語ではフルバック(fullback)、特に左のfullback を left back、右の fullback を right back と呼ぶ。ただし、最近の日本製サッカーゲームによって、sideback という言葉が海外に逆輸出されている。
代表選手は
- ジュゼッペ・ベルゴミ(引退、イタリア)
- ジャチント・ファッケッティ(引退、イタリア)
- ビセンテ・リザラズ(引退、フランス)
- フィリップ・ラーム(バイエルン・ミュンヘン、ドイツ)
- パオロ・マルディーニ(ACミラン、イタリア)
- エリック・アビダル(FCバルセロナ、フランス)
- ギャリー・ネビル(マンチェスター・ユナイテッド、イングランド)
- ファビオ・グロッソ(リヨン、イタリア)
- アシュリー・コール(チェルシー、イングランド)
- セルヒオ・ラモス(レアル・マドリード、スペイン)
- 長友佑都(FC東京、日本)
など。
[編集] ウイングバック
(英) wing back
3-5-2のフォーメーションで、「5」の両サイドに位置する選手のこと。日本ではMFに分類されることが多い。ウイングのような攻撃的な位置からバックスの守備的な位置まで動き回るポジション。サイドでのディフェンスからフォワードまでの役割を全てこなす。つまりウイングのような動きをするサイドバックのことで前線に上がる回数はサイドバックと比べると多いが、サイドを一人で担当することになる為、より運動量が必要。
この呼称は、もともと90年代初頭にドイツなどで使われるようになったものである(3-5-2のシステム自体は80年代半ばからあった)。3バック自体は、4-4-2のフォーメーションの2トップに対応して生まれた。それまでは4バックが主流だったのが、FWを2人にするのが当たり前になってきたため、「2人のFWに対して4人で守る必要は無い」との考えから、センターバックの人数を1人増やし、2トップにつけた2人のマンマーカーとそのカバーリングをするスイーパー1人の計3人が最終ラインに残った。その代わりに、マークすべき相手がいなくなったサイドバックが、より前方に位置するようになったのである。攻撃もサイドバックより積極的に上がるようになり、「ウイングのような役割もするバック」ということでウイングバックと呼ばれるようになった。
上がったウイングバックのカバーは、守備的MFが務める。
代表選手は
- アンドレアス・ブレーメ(引退、ドイツ)
- パウル・ブライトナー(引退、ドイツ)
- カフー(ブラジル、ACミラン)
- ロベルト・カルロス(フェネルバフチェ、ブラジル)
- ファン・ブロンクホルスト(フェイエノールト、オランダ)
- ハビエル・サネッティ(インテルミラノ、アルゼンチン)
- ジャンルカ・ザンブロッタ(FCバルセロナ、イタリア)
- ダニエウ・アウヴェス(セビージャ、ブラジル)
- 加地亮(ガンバ大阪、日本)
など。
[編集] 関連項目
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ゴールキーパー(GK) |
ゴールキーパー(GK) |