ディック・リー
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ディック・リー | |
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出生 | 1956年8月24日 シンガポール共和国 |
職業 | ミュージシャン |
各種表記 | |
簡体字 | 李炳文 |
繁体字 | 李炳文 |
ピン音 | Lǐ Bǐngwén |
発音転記 | |
英語名 | Dick Lee |
ディック・リー(Richard "Dick" Lee Peng Boon)は、シンガポール共和国出身のミュージシャンである。アジアポップス界のボス(ソニーアジア副社長を歴任)。
目次 |
[編集] 略歴
中国系の裕福な家庭で5人兄弟の長男。交通事故で妹を亡くしている。幼少の頃からクラシック音楽を聴き、イギリスへ留学し西洋の生の音楽に触れる。学生時代には、ディープ・パープルなどのコピーバンドを始めるが、シンガポール政府がハードロックを禁止したため、ニール・ヤングの様なタイプのシンガーソングライターとして方向転換する。
そして1974年、アルバム『ライフ・ストーリー』でデビュー。元々はファッションデザイナー兼イベント会社の経営者であるが、歌手としての成功はデザイナー時代からの夢であった。しかし、発表する楽曲の売れ行きはどれも芳しくなかった。そして、1989年に発表したアルバム『マッド・チャイナマン』を最後に引退しようとしたが、このアルバムがヒットしたことにより、歌手活動を続ける事を決心したという。『マッド~』は、自身の音楽性のルーツである、地元に伝わる民謡や童謡をポップアレンジしたカヴァー中心のアルバムだった。時代は折りしもワールド・ミュージックブームであり、日本のメディアにも取り上げられるようになった。2003年には日本の福岡市より第14回福岡アジア文化賞芸術・文化賞を授与された。
また彼は、自分を含む多くの東洋人を「バナナ」と揶揄(黄色人種でも中身は白人、という皮肉)しており、常に東洋人のアイデンティティーについて問う楽曲を作り、また発言をしている。特にシンガポールで敬遠されがちなシングリッシュ(中国語、マレー語訛りの英語)を数少ない自国の文化だと主張している。その思想が顕著に現れた例として、『マッド・チャイナマン』の1曲目に収められた『ラサ・サヤン』という曲ではシングリッシュを多用し、シンガポールの文化を風刺したラップ調の曲である。この曲は政府の方針で当初は放送禁止になったものの、余りのヒット振りにやむなく解禁となった。そして『シングリッシュ講座』なるバラエティ番組に出演し、好評を得た。
ディックのサウンドはアジア風、天才的なメロディセンスによって紡ぎだされるメロディーはAOR風、歌詞は英語、マレー語、広東語というのが彼のミュージックスタイル(彼自身英語、マレー語、フランス語、広東語ができる)である。そして歌詞の内容は痛烈な風刺、感傷的なラブソング、コミカルなものと幅広い。 感性そのものが、裕福で、ハイソサエティー的であるが、どこか悲しみを持っているところがまさにシンガポールの表現である。
又音楽プロデューサーとしても活動し、香港の歌手であるサンディ・ラムのアルバム『野花』(1991年)、サンディーの『マーシー』(久保田麻琴と共同プロデュース)などに参加している。
1992年には、ディック本人による原作、主演のオペレッタ『ナガランド』をシンガポール、香港、日本で公演。日本のミュージシャン、宮沢和史が唯一の日本人役者として出演した。
彼が日本でもヒットを飛ばし、歌手としての活動が最盛期にあった頃のレコード会社はWEAであったが、同社は当時のマスターテープを紛失している模様。これにはディック本人も激怒している。
[編集] 代表曲
- CDシングル
- Cockatoo(コカトゥー、1990年)
- アルバム「Asia Major」からのシングルカット。
- シャナナナナ(1996年、ポンキッキーズ主題歌)
- CDアルバム
- The Mad Chinaman(1989年)
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- RASA SAYANG
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- ASIA MAJOR(1990年)
- ORIENTALISM (1991年)
- THE YEAR OF THE MONKEY(1993年)
- PEACE LIFE LOVE (1993年)
- SINGAPOP (1996年)
- エブリシング Everything(2000年、セルフカバーアルバム)
[編集] 映画音楽
- 君さえいれば/金枝玉葉 (1994年、陳可辛監督)
- 海ほおずき The Breath (1996年、林海象監督)
[編集] 関連人物
- 久保田麻琴(サンディー&ザ・サンセッツのギタリスト、久保田とディックは音楽性に共通点があり、お互いに影響を受ける)
- サンディー(サンディー&ザ・サンセッツのボーカル。ディックは詩・曲を提供したり、サンディーはディックのアルバムにコーラスなどで参加)
- 松任谷由実(愛・地球博でFriends Of Love The Earthを結成し活動)
- ZOO (シングル曲「Adam」を作曲)
- 宮沢和史(THE BOOMボーカリスト。1992年にディックが主催したミュージカル「ナガランド」に参加、以降BOOMの楽曲にコーラスで参加したり宮沢と歌を共作したりしている)
[編集] 外部リンク
- 公式サイト
- レコード会社プロフィール(東芝EMI)
- レコード会社公式(ソニー・ミュージックエンタテインメント)
- 混沌のアジアを象徴するマッド・チャイナマン ディック・リー
- 略歴