民族音楽
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
民族音楽(みんぞくおんがく、ethnic music)とは、民族土着の音楽、またはそこから発展した音楽のことである。
目次 |
[編集] 「民族音楽」の誕生
民族音楽という語に含まれる「民族」とは、ethnicという英語に集約されるように(語源であるエトノスという語は、古代ギリシアにおいて周縁的な人々を指した。詳しくは民族の項を参照)、ヨーロッパ人が自分たちの作り上げた近代文明国家に対しての他者という意味で用いた語である。植民地主義全盛の19世紀、植民地研究が盛んに行われたが、民族音楽という概念もそのような文脈から生まれて来たのである。
その結果、歴史的には、ヨーロッパから見て他民族の音楽が民族音楽と呼ばれてきた。他方で、ベラ・バルトークのように自国の民族音楽の掘り起こしも行われ、それが新たな創作の基盤となった例もある。
[編集] 「ワールド・ミュージック」
[編集] 「全ての民族は音楽を持っている」のか?
音楽は、(マンダ教徒などを除けば)、およそあらゆる民族が持っているものであり、人間の文化には不可欠かどうかはともかく、あらゆる文化圏に於いて、それなりの音楽が存在すると広く信じられている。こうした主張は音楽人類学者のジョン・ブラッキングやアラン・メリアムらによって広められたものであるが[1]、近年ではアメリカや日本のろう者の間で、自らを少数民族と位置づける論調もあり[2]、しかも彼らは(一切音響を用いない手話歌はともかく)一般的な意味においての音楽を排除する傾向にあることから[3]、「あらゆる民族が音楽を持っている」という信念には疑問符も付けられている。
[編集] 出典
- ^ ジョン・ブラッキング『人間の音楽性』岩波書店、1978年
- ^ 木村晴美・市田泰弘「ろう文化宣言」、現代思想編集部編『ろう文化』青土社、1999年
- ^ Darrow, Alice-Ann. "The Role of Music in Deaf Culture: Implications for Music Educators." Journal of Research in Music Education, Volume41, No2, 1993.
[編集] 類義語
トラッド、トラディショナルミュージック、ワールドミュージック