カイ・シデン
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カイ・シデン(U.C.0061年~?)は、アニメ『機動戦士ガンダム』の登場人物。第2話~43話に登場。続編の『機動戦士Ζガンダム』にも登場している。(声:古川登志夫)
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
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[編集] 概要
サイド7に住むプエルトリコ系移民の17歳。大型特殊の免許をいくつか持っており、安彦良和の漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、コンボイレーサーとして名の知られた存在であることを自身で語っている。家族関係は劇中では明かされないが、父親はサイド系技術者、母親は医者と設定されている。
一年戦争終了時の最終階級はTV版:伍長、劇場版:少尉である。
名前は、日本海軍局地戦闘機・紫電改にちなむ。
[編集] 性格
元々民間人で戦争に対する意識も逃避的であったため、当初は皮肉や嫌味など憎まれ口が多く、ブライトを始め他の乗組員らから煙たがられていた。 特に、第2話に初登場して間もなくセイラ・マスに軟弱者と罵られ平手打ちされる場面は、セリフと共に有名である。第7話でも業を煮やしたブライトから鉄拳制裁を受けている。更に20話で一時的にハヤトらと脱走した際にも彼だけがリュウに殴られており、一言多いひねくれた性格が災いしてか、物語前半の彼は散々な目に遭っている。また、序盤は積極的に戦闘に参加せず常にひねくれた態度をとっていた。表向きはおちゃらけたキャラクターで、皮肉を飛ばしたり照れ隠しにうそぶいたりもするが、実際は誰よりも現実主義者で、物事の本質を突く能力に長けている。が、人前ではそういった姿は滅多に見せなかった。
第26話でホワイトベースがベルファストに寄港した際、軍人になるのを嫌った彼は艦を降りる。その際、ジオンのスパイであるミハル・ラトキエと出会うが、彼女が弟妹を養うために否応無くスパイに身をやつしていることを看破し、戦争の非情さを感じ取る。同情したカイは、ミハルにホワイトベースの状況を伝える。その後、水陸両用MSの攻撃に苦戦するホワイトベース・クルーの様子を見かねて、再び軍へ舞い戻りガンタンクで応戦する。ベルファストを後にしたホワイトベースに潜入したミハルは、カイと艦長室にて偶然にも再会する。しかし、心の交流も短く大西洋上で死別してしまうのだった。ミハルの死は、今まで戦争というものに真正面から向かっていなかった彼に戦う意味を与え、その後の行動に大きな影響を与える転機ともなった。第29話ジャブロー攻防戦ではその悲しみを乗り越え、力強くジオンを叩く決意を表す。
その後、物語後半以降は、敵MS部隊に先制射撃をするスレッガー・ロウを嗜めたり、アムロを除く他のパイロットにリーダーシップを発揮したりと、積極的に戦闘に参加する場面が見られた。ア・バオア・クー攻略戦前のブリーフィングでは相変わらずの口ぶりであったが、その意識は当初の軟弱者からは想像できないほどに変わっていた。戦災孤児であるカツ・ハウィン、レツ・コ・ファン、キッカ・キタモトらを可愛がっており、ジャブロー寄港時に、3人が施設に預けられそうになるのを阻止したりするなど、子供好きの面も見せていた。
ア・バオア・クーでの決戦時、機体を破壊されるも脱出し白兵戦でホワイトベースを死守。後にアムロの声を聞き、他の乗員と共にランチで脱出した。
[編集] 搭乗兵器
ホワイトベースが正規軍人の戦死で人手不足であった事と、作業機械のライセンスを持っていた事から、機銃やガンタンクの操縦手に半ばなし崩し的に駆り出される事になる(初陣である第3話では、ハヤトと共にガンタンクに搭乗し見事パプア補給艦を撃沈させている)。ホワイトベースが地球に降りてからはガンペリーも操縦し、13話ではガンダムの空中換装などにも協力している。物語中盤以降は、主にガンキャノンのパイロットとなる。ランバ・ラルや黒い三連星など、ジオンのエースパイロットには押され気味であったが、機体性能に助けられつつ、着実にパイロットとしての腕を上げていった。
ソロモン、ア・バオア・クーなどの主要攻略作戦では、ホワイトベースの主戦力として活躍し、多数の敵機を撃墜している。ソロモンではガンダムと連携して要塞上陸の突破口を開き、ア・バオア・クーでは冷静な判断でSフィールドへの上陸を果たすなど、多大な戦果を上げた。ガンダム=アムロの陰に隠れてしまってはいるが、実際はかなりの戦績を上げており、実質ホワイトベース隊のNo.2とも言える。
[編集] 一年戦争後
一年戦争を最後まで戦い抜くが、戦争終結後は軍を退役、社会復帰プログラムの援助を受け、ベルファスト大学でジャーナリズムを専攻。通信社勤務を経てフリーのジャーナリストへと転向する。
『機動戦士Ζガンダム』劇中では、地球連邦軍の内情を探ろうと白い背広姿という出で立ちでジャブローに潜入する。そこで、エゥーゴから偵察を命ぜられていたレコア・ロンドと出会うが、共に連邦軍兵士に捕まってしまう。その後はレコアと共にカミーユ・ビダンに救出される。 彼はクワトロ・バジーナ=シャア・アズナブルであると看破していたが、クワトロという偽名を使い指導者にならないシャアに疑問と不満を抱いていた。その後は兵士としてエゥーゴやカラバには参加しなかったものの、ジャーナリストという立場で独自の行動を続け、エゥーゴやカラバの活動を様々な形で支援した。シャア(クワトロ)がダカールで演説をしている場面では、酒場にいるカイの姿が映し出される。(一見無関心を装ってTVの方に背を向けながらも、演説はしっかりと聞いている様子だった。) なお、TV版ではハヤトにクワトロはシャアだと書かれたメモだけを残して有耶無耶に消えているが、劇場版では、直接ハヤトに「クワトロはシャアだ」と告げるシーンが描かれている。また、ラストではセイラ・マスと再会し、シャアに関するインタビューを行うシーンが添えられた。
ことぶきつかさの漫画『機動戦士Ζガンダム デイアフタートゥモロー ―カイ・シデンのレポートより―』では、グリプス戦役時代のジャーナリストとしてのカイを主役に据えて物語が展開されていた。こちらは劇場版『Zガンダム』準拠のストーリーである。
ゲームブック『機動戦士ガンダム シャアの帰還』では、第一次ネオジオン抗争後にホンコンシティでシャアと遭遇した場面が描かれている。シャアが再び歴史の表舞台に登場する事を信じ、ルオ商会への紹介状を渡すことで間接的ながら挙兵に協力した。
『SDクラブ』に掲載(No.8~12)された青木健太、松川健一の漫画『機動戦士ガンダム 英雄伝説』では、第二次ネオジオン抗争で行方不明になったアムロを探すカイを描いている。かつてのガンダムチームの面々と接触し、レストアされたガンキャノンでヤザン・ゲーブルの駆るギラ・ドーガと戦った。
UC.0099年におけるアナハイム・エレクトロニクス社の企業広報誌という設定の『アナハイム・ジャーナル』には、カイがアナハイム社のメラニー・ヒュー・カーバイン名誉会長(当時)に行ったインタビューが収録されている。
戦後の代表的な著作に「巨人達の黄昏~グリプス戦役」「天国の中の地獄」「月の専制君主たち」があるという。
[編集] 小説版『機動戦士ガンダム』
小説版では民間人ではなく、他のキャラクターと同様最初から軍人である。 終盤では、アムロ、ハヤトと共にニュータイプへと覚醒、怒涛の活躍を見せた。ハヤトに続きアムロまでもが戦死する中でカイは物語の最終局面まで生き残り、キシリアやシャア、ペガサスクルーと共にズム・シティへ乗り込んで制圧。逃亡を図るギレンを感知して捕捉したのもカイのニュータイプ能力が為せる業だった。ギレンを射殺したキシリアまでも即座にシャアに殺されるという一連のザビ家滅亡の顛末を見届けた(その際にアムロに向かって「コレで良かったのか?」と呟くシーンがある)。
[編集] 逸話
ソロモン編で、出撃の際に注意を受けたセイラへ「愛してるよ」と返すシーンがある。声優の古川登志夫は本気の告白であるととり、そのように演じたが、監督の富野由悠季から「カイはそんなセリフを喋る男ではない」と怒られ、軽口を叩いているように演じ直させられた。このことは古川には少々不満の種になったらしく、あとで残念がっている。