インディカ種
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インディカは、イネの品種群の一つ。長粒種である。
イネは、長粒種のインディカ種、大粒種のジャバニカ種、短粒種のジャポニカ種の3つの亜種に分類される。
ただし、近年遺伝子の解析によって生物学的には長江流域で栽培化された単系統の品種群をジャポニカと定義し、長江流域に発する稲作文化の影響下に西方で新たに野生種から栽培化された複数の品種群をインディカと定義する見解が生じている。こうした生物学的インディカ種には長粒品種と短粒品種が混在しており、従来のインディカ種と生物学的インディカ種は必ずしも一致しない。ジャポニカとインディカの分岐は数千年におよび、両系統の遺伝情報に多くの変異が蓄積された結果、二代雑種においては生殖的隔離が見られる。
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[編集] 特徴
米粒が細長く、アミロース含量が高くて粘り気が少ない。パサパサした食感が特徴で、ピラフやカレー、炒飯などに向いている。ご飯とおかずの混ぜ合わさった調理法が好まれている。
一般的にインディカは、大量の水で煮沸し、米が柔らかくなると煮汁を捨ててしまう(パスタの調理法と同じ)。このため粘り気がなくなり、汁気の多いおかずとの相性が良い。しかし、煮汁に含まれる栄養分の損失が大きく、また河川の富栄養化への影響もあり、一部の地域ではジャポニカのように炊飯器で炊くことが推奨されている。
[編集] 生産地
インド型イネと呼ばれるインディカは、インドを中心に広まり、タイをはじめ中国の中南部、インドネシア、カスピ海沿岸、アメリカなどで作られている。東南アジアを中心に気温の高い所で主に栽培されている。
日本ではほとんど栽培されておらず、ごく一部の東南アジア系(エスニック)料理で使われている程度であった(例外的に、沖縄では泡盛や食品の原材料としての輸入は盛んに行なわれていた)が、1993年の冷夏による米不足の際、「タイ米」として輸入されて一般に知れ渡った。日本人には馴染みのない種類のため調理方法に苦心し(短粒種のジャポニカを前提とした日本の炊飯器ではうまく炊飯できない場合もあった)、料理番組や外食産業などでは調理法の研究や解説が盛んに行われた。
一例としては
- 水加減を多めにする
- 炊飯セット時に大さじ1杯のサラダ油を入れる
- 少量の寒天と一緒に炊く
- 中国などから輸入したジャポニカ種とブレンドして使用(一部小売店や外食産業ではこの方法が取られ、牛丼などのご飯にインディカ米が混ざっているのが見えた)
などがあった。
2006年現在、エスニック食材として一部の専門店でインディカ種の米が売られている。ただし、1993年と異なり高めの価格で販売される(これは米不足当時のタイ米がまったく低級なものであったことに加え政治的に値段が抑えられていたこと、そして後に輸入されているのは現地でも高級とされている品種であることから、単純に比較するものでもない)。
[編集] 生産量
世界で最も多く作られている栽培品種群で、世界のコメ生産量の80%以上を占める。日本は例外的に、インディカ種の栽培がほとんどない国である。