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アホ毛 - Wikipedia

アホ毛

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

頭部の飛び跳ねた髪がアホ毛
頭部の飛び跳ねた髪がアホ毛

アホ毛(アホげ)とは、日本の美容業界で使用されている隠語で、まとめた髪の毛の表面からぴんぴん出てきて(跳ねて)いる短い毛のことを指す。対応する英単語は"Frizz"である。別名ジェニファーとも呼ぶ。また、そこから派生して漫画アニメゲームなどで、頭部から1本(または複数本)触角のように飛び出して立っている毛のこともアホ毛と呼ぶ。本項では後者について詳述する。

目次

[編集] 語源・由来

同人界では古くから使われ、正確な初出は不明であるが、商業では 山田南平久美子 & 慎吾シリーズ』で「アホ毛」という語が初めて用いられたという説がある。この作品は白泉社の雑誌「花とゆめ」1990年20号からシリーズ連載が開始されている。そのコミックスの中で作者自らヒロイン久美子の1本毛の事を「アホ毛」と言及。山田は同人出身であるため、その影響と思われる。 また東浩紀著『動物化するポストモダン』 (ISBN 4-06-149575-5) では、

「『触角のように刎ねた髪』は、筆者の観察では、90代の半ば、ノベルゲームの『』で現れたことから一般化し」 (p.66)

と記されている。同ゲームのキャラクター・柏木初音の「触角のように跳ねた髪」は本項の「アホ毛」そのものであり(ただしこれは本来は「鬼の角」をイメージしたものと思われる)、同作が発売された1996年当時からこのような表現が見られたこと、そしてその時点ではまだ これを「アホ毛」と呼ぶのが一般的でなかったことを示している。「触角」はその翌年に同社がリリースしたToHeartの雛山理緒が、ある昆虫に類似した跳ねた前髪をしていた為、これと言い分けられるようになったとも取れる。ドリマガ増刊 RASPBERRY Vol.17には、アホ毛の最初の由来はStudio e.go!のマスコットキャラであるデボスズメだと記載されている。

[編集] キャラクター造形におけるアホ毛

2本の場合は触角と呼ばれる
2本の場合は触角と呼ばれる

アニメや漫画におけるアホ毛は、毛髪1本だけではなく、細い髪房として表現されることが多い。「アホ毛」という言葉が一般化する以前は「触角」・「アンテナ」と呼ばれていたが、後には「触角」はアホ毛が2本飛び出している状態を指すことが多くなった(触角を持つ代表的なキャラクターとして小林よしのりなど)。アホ毛がキャラクターデザインに取り入れられる場合、その本数は1本ないし2本が殆どだが、『魔法遣いに大切なこと』の主人公菊池ユメはアホ毛が3本であるなど、例外も存在する。このように、アホ毛はそのキャラクターの外観を構成する設定上の要素となっている(つまり、常時アホ毛のあるキャラクターとして設定されている)ことが多い。また、アホ毛は萌えの対象ともなっている。

ただし磯野波平(『サザエさん』)のように、禿頭で頭頂部から1本毛が生えているだけの場合は、アホ毛とは呼ばれない(波平スタイルなどと呼ばれる)。アホ毛はあくまでも、他にも多数の毛髪が頭頂部に存在している場合に、それにも関わらず他の髪の毛から飛び出しているものに対する名称である。

日本の少女漫画の嚆矢である手塚治虫リボンの騎士』の主人公サファイア、また後年の『ふしぎなメルモ』の主人公メルモではさらに明らかに、髪を跳ねさせることによるキャラクター造形を見られる。このように呼称そのものは比較的新しいが、キャラクターの造形法としての歴史は古く『ベティ・ブープ』までさかのぼることができる。

アホ毛は女性キャラクターに多く見られるが、『ケロロ軍曹』の日向冬樹や『鋼の錬金術師』のエドワード・エルリック、『ぷよぷよフィーバー2【チュー!】』のシグ、『ハレのちグゥ』のハレ、『最遊記』の沙悟浄、『P2! - let's Play Pingpong! -』の藍川ヒロム、『太臓もて王サーガ』の大木玲夜、押上仁露、『スクールランブル』の播磨拳児など、男性キャラクターでもアホ毛が設定されている例は珍しくない。

アホ毛を持つ男性キャラクターの元祖は『ジャングルはいつもハレのちグゥ』(1996年から連載開始)のハレと推測される。ゲームでは『ファイナルファンタジータクティクス』(1997年)の主人公ラムザ・ベオルブがアホ毛を持っている。なお「疲労・落胆」のパターンにおいては、魔夜峰央パタリロ!』作中、ジャック・バンコランマライヒ、ヒューイットら長髪の美形男性キャラクター達が困ったり言いくるめられたりしたときに、困惑の度合いに応じてまとまった髪の中の1本または数本、あるいは束になってくるりと1回転して撥ね出てくる描写がある。

一方、アメリカン・コミックス(アメコミ)の世界においては、男性のアホ毛は古くからその存在が確認されている。たとえば、古典アメコミの代表格である『スーパーマン』では、主人公スーパーマンの前髪一束が小さくはねるように描かれており、それ自身が彼のトレードマークとなっている。実際、その実写映画においても、彼を演じた俳優クリストファー・リーヴブランドン・ラウスらは、前髪に意識的にアホ毛を作り出して撮影に臨んだ。

[編集] 拡張

設定上の要素からさらに拡張され、アホ毛自体に特殊な能力を持たせる例や、感情や表情の変化に応じてアホ毛の形状が変化する例もある(『すぱすぱ』など)。また、髪の毛に特殊な能力を持たせる例は水木しげるゲゲゲの鬼太郎』の主人公鬼太郎の「妖怪アンテナ」(妖気を感じると髪の毛が一房棘のように逆立つ)の表現に原型を見ることができる。さらに遡ればA・E・ヴァン・ヴォークトのSF小説『スラン』の触毛スランが元祖と思われる。里見桂のマンガ『なんか妖かい!?』のヒロイン・ミルは、鬼太郎と同じ「妖怪(妖気)アンテナ」を持っている(同作へのオマージュである)。これを切ってしまうと能力が発揮できなくなるなどの描写もある。雑誌連載は1982年からであり、女性キャラクターの例としては最初期に属すると思われる。

アホ毛の認識度や知名度の上昇に伴い、アホ毛がキャラクターを語る上で重大な意味を持ったり、アホ毛そのものがキャラクター本人よりも重要であったりする例も見られるようになってきた。コミック漫画・アニメ・ドラマCD・その他の他雑誌への作者の出張掲載において『ぱにぽに』の主要ヒロインの一人・姫子のアホ毛は取り外し可能であったり、あらゆる精神波や電波や虫の知らせのような概念的・超自然的なもの、果ては異星人のファ-ストコンタクトをそのアホ毛で受信したり、アホ毛そのものに人格が存在したり、あろうことか寄生虫のごとく姫子を乗っ取ろうとしたりと、明らかにキャラクター本人よりも重要に扱われている。また『Fate/hollow ataraxia』においては、ヒロインの一人・セイバーのアホ毛を他者が触れることで、彼女の別人格である黒セイバー(セイバー・オルタ)が現れ、人格のみならず服装も瞬時に変貌する。さらに『トップをねらえ2!」においては、主人公がアホ毛を用いて数億体ものバスター軍団を指揮するなど、アホ毛に関する仕掛けはますます大掛かりなものになりつつあると言えよう。

[編集] 外部リンク


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