アビイ・ロード
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アビイ・ロード | ||
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ビートルズ の アルバム | ||
リリース | 1969年9月26日 | |
録音 | Abbey Road 1969年4月20日 - 8月18日 |
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ジャンル | ロック | |
時間 | 44分 9秒 | |
レーベル | アップル・レコード, パーロフォン, EMI | |
プロデュース | ジョージ・マーティン | |
専門評論家によるレビュー | ||
ビートルズ 年表 | ||
イエロー・サブマリン (1969年) |
アビイ・ロード (1969年) |
レット・イット・ビー (1970年) (UK) ヘイ・ジュード (1970年) (US) |
『アビイ・ロード』("Abbey Road")は、1969年9月にリリースされたビートルズの12作目のオリジナル・アルバムである。
目次 |
[編集] 解説
[編集] 概要
『アビイ・ロード』は1969年初頭からのアルバム『ゲット・バック』のセッションが失敗に終わった後、ポール・マッカートニーがジョージ・マーティンにプロデュースを依頼し、完成されたアルバムである。ポール・マッカートニーは「昔のように、かつて自分たちがそうしたように」ビートルズのアルバムを制作することをジョージ・マーティンに提案、マーティンは「彼らが以前行った方法」でできるのであればと同意した。以前は本作の完成前にアルバム『レット・イット・ビー』が完成されていたかのように伝えられていたが、後年ビートルズのレコーディング記録が明らかになり、事実と異なることがわかっている[1]。
アルバムのA面とB面はそれぞれジョン・レノンとポール・マッカートニーの作風が如実に表れている。ジョン・レノン色の強いA面はシングル・トラックの集合であり、ポール・マッカートニー色の強いB面は短い曲から構成される長いメドレーとなっている。ジョージ・ハリスンは2曲を提供し、両曲ともに彼の傑作と評されている。なおオーケストレイションはジョージ・マーティンによるものである。
ローリングストーン誌では、「本作のB面のみで、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に匹敵する」と評された。ヒット・チャートでは全英・全米とも1位を獲得、ビートルズのアルバムの中では最高の売り上げを記録している。アナログ盤でも1300万枚以上を売り上げ、1960年代のアルバムのセールスにおいても最高のアルバムになった。EMIレコーディング・スタジオはこのアルバムの大ヒットをきっかけにビートルズに敬意を表して「アビー・ロード・スタジオ」と改称した。『これが最高!(Critic's Choice Top 200 Albums)』(1979年 クイックフォックス社)の英米編では9位、日本編では2位にランクされ、『Rolling Stone's 500 Greatest Albums of All Time』(Wenner Books 2005)では14位にランクされている。
なおイギリスでは前作の『イエロー・サブマリン』までモノラル盤も発売されていたが、このアルバムからステレオ盤のみの発売となっている。また、モノラルと銘打たれたオープンリールも存在するが、これはステレオをそのままモノラルにしただけのものであるので、実質的にこのアルバムのモノラル盤は存在しない。
[編集] ジャケット写真
[編集] 概要
『アビイ・ロード』のジャケット写真はレコード史上最も有名なものの一つである。エンジニアのジェフ・エメリックは、当初アルバムタイトルをエメリックが吸っていた煙草の銘柄にちなんで "Everest" にして、ジャケット写真をエヴェレスト山の麓で撮影する予定だったと語っている。しかし「ヒマラヤにまでジャケット写真を撮りにいくのはごめんだ。ちょっと外に出てそこで写真を撮り、タイトルを(通りの名前)アビイ・ロードにすれば良いじゃないか」とポールが言い出して[2]、ジャケット写真はスタジオのすぐそばにあるアビイ・ロードの横断歩道で1969年8月8日に撮影された。それでも行き当たりばったりではなく一応の打合せはあったようで、ポールによるアイデア・スケッチと簡単なメモが残っている。ジャケット写真の背景の歩道に立っているのは、アメリカ人観光客のポール・コールという人物であり、彼は撮影の数カ月後に本アルバムが発売されるまで自分が撮影されていたことに気づいていなかった。なお日本のアナログ盤ジャケットの裏に記された曲順は間違っており「サムシング」と「マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー」の曲順が入れ替わっていた。
日本のサザンオールスターズの『キラーストリート』をはじめとして世界中で最もジャケットがパロディー化されるいわゆるパロジャケが多いジャケット写真としても知られる。かぐや姫の曲「アビーロードの街」では、横断歩道をこのジャケット写真になぞらえている。
[編集] 観光スポット
アビー・ロード・スタジオ前のこの横断歩道は人気の観光スポットとなっており、道路は現在も通常に使用されているにもかかわらず、ジャケット写真のポーズを取る観光客が後を絶たない。この横断歩道には信号がないが、交通法規上、横断歩道を渡る歩行者は絶対的に優先されるので、歩行者の横断写真は比較的容易に撮影することが可能。とはいえ交通量が多い道路なので、ラッシュ時の撮影は避けるべきであろう、昔から観光客の死亡事故、接触事故などもおこっている。
[編集] 「ポール死亡説」の根拠
『アビイ・ロード』のジャケット写真は、いわゆる「ポール死亡説」の根拠の一つともなった。写真でのポールは一人だけ裸足であり、左利きにもかかわらず右手にタバコを持っている、路上に駐められたフォルクスワーゲン・タイプ1のナンバープレートが「281F」であるのが、もしポールが生きていれば28歳である(「28」「IF」)ことを意味している、白いスーツで長髪にひげを蓄えたジョンは「神父」、黒いスーツを着たリンゴは「葬儀屋」、スーツ姿で裸足のポールは「死体」、デニムシャツにジーンズ姿のジョージは「墓堀人」を意味しているという理由からだった。この「281F」のフォルクスワーゲンは1980年代に行われたサザビーズのオークションで5000ポンドの値段が付いた。当時のロックンロールのコレクションの相場異例の高価格であった。
[編集] 収録曲
[編集] アナログA面
- カム・トゥゲザー[3] - Come Together (Lennon - McCartney)
- 演奏時間:(4'20")、リード・ヴォーカル:ジョン・レノン
- サムシング - Something (Harrison)
- 演奏時間:(3'03")、リード・ヴォーカル:ジョージ・ハリスン
- マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー - Maxwell's Silver Hammer (Lennon - McCartney)
- 演奏時間:(3'27")、リード・ヴォーカル:ポール・マッカートニー
- オー!ダーリン - Oh! Darling (Lennon - McCartney)
- 演奏時間:(3'26")、リード・ヴォーカル:ポール・マッカートニー
- オクトパスズ・ガーデン - Octopus's Garden (Starkey)
- 演奏時間:(2'51")、リード・ヴォーカル:リンゴ・スター
- アイ・ウォント・ユー - I Want You (She's So Heavy) (Lennon - McCartney)
- 演奏時間:(7'47")、リード・ヴォーカル:ジョン・レノン
[編集] アナログB面
- ヒア・カムズ・ザ・サン - Here Comes The Sun (Harrison)
- 演奏時間:(3'05")、リード・ヴォーカル:ジョージ・ハリスン
- ビコーズ - Because (Lennon - McCartney)
- 演奏時間:(2'45")、リード・ヴォーカル:ジョン・レノン
- ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー - You Never Give Me Your Money (Lennon - McCartney)
- 演奏時間:(4'02")、リード・ヴォーカル:ポール・マッカートニー
- サン・キング - Sun King (Lennon - McCartney)
- 演奏時間:(2'26")、リード・ヴォーカル:ジョン・レノン
- ミーン・ミスター・マスタード - Mean Mr. Mustard (Lennon - McCartney)
- 演奏時間:(1'06")、リード・ヴォーカル:ジョン・レノン
- ポリシーン・パン - Polythene Pam (Lennon - McCartney)
- 演奏時間:(1'12")、リード・ヴォーカル:ジョン・レノン
- シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウィンドー - She Came In Through The Bathroom Window (Lennon - McCartney)
- 演奏時間:(1'57")、リード・ヴォーカル:ポール・マッカートニー
- ゴールデン・スランバーズ - Golden Slumbers (Lennon - McCartney)
- 演奏時間:(1'31")、リード・ヴォーカル:ポール・マッカートニー
- キャリー・ザット・ウェイト - Carry That Weight (Lennon - McCartney)
- 演奏時間:(1'36")、リード・ヴォーカル:ポール・マッカートニー
- ジ・エンド - The End (Lennon - McCartney)
- 演奏時間:(2'19")、リード・ヴォーカル:ポール・マッカートニー
- ハー・マジェスティー[4] - Her Majesty (Lennon - McCartney)
- 演奏時間:(0'23")、リード・ヴォーカル:ポール・マッカートニー
[編集] 脚注
- ^ 完成されていたのは発表せずに終わったアルバム『ゲット・バック』であり、『アビイ・ロード』リリース後もアルバム『レット・イット・ビー』のセッションは続き、1970年1月に追加録音・同年3~4月にかけてフィル・スペクターの再プロデュースによるオーヴァー・ダブ(リンゴ・スターが参加)が行われている。
- ^ The Beatles アンソロジー、リットーミュージック、2000年、337ページ
- ^ アメリカで発売されたカセットテープでは「カム・トゥゲザー」と「ヒア・カムズ・ザ・サン」が入れ替えられたヴァージョンが存在したが、その後発売された全てのヴァージョン(CDを含む)はオリジナルの曲順に修正されている。
- ^ 当初B面の11曲目である「ハー・マジェスティー」はジャケットにクレジットされていなかった。詳細はハー・マジェスティーを参照のこと。
[編集] 各国での発売形態
国 | 日付 | レーベル | 発売形態 | カタログ番号 |
イギリス | 1969年9月26日 | Apple Records | LP | PCS 7088 |
アメリカ | 1969年10月1日 | Apple, Capitol Records | LP | SO 383 |
日本 | 1969年10月21日 | 東芝音楽工業(現:EMIミュージック・ジャパン)/Apple | LP | AP 8815 |
Worldwide reissue | 1987年10月10日 | Apple, Parlophone, EMI | CD | CDP 7 46446 2 |
日本 | 1987年10月19日 | 東芝EMI | CD | CP32 5332 |
日本 | 2004年1月21日 | 東芝EMI | Remastered LP | TOJP 60142 |
[編集] 脚注
[編集] 外部リンク
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