アイルランド料理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アイルランド料理(アイルランドりょうり)とは、主にアイルランドで食べられる料理で、シンプルで伝統的な家庭料理と、飲食店やホテルで提供される現代的な料理とに大別される。
主食となるのはパンおよびジャガイモ。肉は豚肉および羊肉、牛肉が用いられる。また魚介類が豊富に採れるため、魚ではサケやタラ、その他に甲殻類やカキが利用される。野菜では前述のジャガイモのほか、キャベツやタマネギなど寒冷に強い作物が使用される。
[編集] 伝統的料理
特に伝統的な料理ではジャガイモと乳製品は欠かせない食材となっている。 コルカノンはキャベツを混ぜたマッシュポテトのサラダ。チャンプは牛乳で煮たみじん切りのタマネギを加えたポテトサラダである。ボクスティはジャガイモのパンケーキの一種で焼く、または茹でて調理される。
パンはイーストでは無く重曹を加えた無発酵パンで、ソーダブレッドと呼ばれる。この生地を丸くのばしたのちに十字に四等分してから焼いたものは、ファールと呼ばれている。
アイルランドの一般的な朝食は、ベーコンの脂で焼くベーコンと卵、ソーセージ。これにボクスティやスライスしたフライドポテトがつくことがある。
[編集] 食の歴史
初期のアイルランド文学には食物や飲料に関する多くの記述が見られる。特に蜂蜜と蜂蜜酒は食事場面に高い頻度で登場する食べ物だが、実際は毎食それらを食せる状況には無かったと考えられている。
アイルランドではフロクトフィアード(Fulacht fiadh)と呼ばれる青銅器時代の調理遺構が発見されており、石焼きを利用して鹿肉などを煮たとされる。また、ビールの醸造に用いたとする説もある。
ダブリン海岸のヴァイキングの遺跡からは当時の食の痕跡が見つかっている。肉では、牛、豚、羊、鶏およびガチョウと魚。ハシバミに代表されるナッツ類と野生のベリー。穀物ではソバやアカザの種子を粥にして食べていたとされる。
中世農奴制の元、農民は牛の生産を行わされ、生産された牛肉は、貴族や富裕層のみが消費していた。農民は燕麦や大麦と、牛乳、バター、チーズなどの乳製品、肉では牛の内臓や、ブラック・プディングと呼ばれる血のソーセージなどを食べていた。
16世紀にジャガイモが持ち込まれると、寒冷で痩せた土地にも強いためアイルランド全域で耕作され、主要な作物になった。またジャガイモを餌に豚を育て食肉とし、ベーコンやハムに加工していた。しかしジャガイモへの依存度が高すぎたたゆえに、飢饉が発生する元となった。特に1845年から1849年の4年間にわたってヨーロッパ全域で発生したジャガイモ疾病によって大きな被害をうけた。このジャガイモ飢饉により約100万人が餓死し、200万人が海外へと移住することになった。
アイルランドの料理では豚の使用が一般的なのだが、アメリカ合衆国へ渡ったアイルランド系移民にとって、豚は入手が難しく、牛肉が手頃な食肉であったため、コンビーフの利用が一般的になった。
[編集] アイルランド料理の一品
- アイリッシュシチュー
- ビーフアンドギネス (牛肉のギネス煮込み)
- ブラックプディング
- ソーダブレッド