このまちだいすき
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このまちだいすき(この町大好き)とは、日本放送協会 (NHK) の教育テレビジョン (ETV) で放送されていたテレビ番組で、小学校段階の教科「社会」のうち第3学年で行う学習を対象とする学校放送番組(教育番組の1種)のことである。
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[編集] 概要
番組における設定と内容(プロット)は、宇宙アカデミーの卒業試験として(第1シリーズから第4シリーズ)、又は宇宙ライブラリーの調査員として(第5シリーズ)、地球に来た異星人の主人公が、特定の地域に住みこんで地域の情報や仕事などを報告するというものである。番組に対する視聴者の評判については、比較的良かったといわれており、又、番組の製作については、番組の音楽担当に山本正之を起用したり、様々な他局のテレビ番組のパロディを取り入れたりした事から、意欲的であったといわれている。
「このまちだいすき」は、1992年(平成2年)4月から1999年(平成11年)3月の7年間にかけて放送された。この番組の前身は、チョーさん(役者は長島雄一)という特徴的な主人公を冠していた『たんけんぼくのまち』(探検、僕の町)という番組であり、前身の「たんけんぼくのまち」と同様に、主人公がその時々に抱いた疑問を自分の力で主体的に解決していくという問題解決学習の姿勢が描かれていた。番組は、視聴者の問題解決学習を支援するものでないものの、番組中の主人公が試行錯誤をしながら問題解決に至るという物語を見る事で、視聴者は、気づきにくい意外な物事の盲点を知る(あるいは改めて認識する)事が出来た。
この番組が好評であった理由は、ストーリー仕立て、主人公のキャラクターへの親密感、笑いをとるなどで視聴対象者の児童を飽きさせなかった事にもあるが、表面的な知識の提示を避けて幅広い事項を扱う事で、日常生活を豊かにする知識が視聴者に伝えられていた事にもある。なお、多様な社会事象を扱うというコンセプトについては、後身の『まちへとびだそう』という番組にも引き継がれている。
[編集] 各シリーズ
「このまちだいすき」は、次のシリーズに区分されている。主人公、住みこむ地域などについては、シリーズごとに異なっていた。
- なお、番組の最後に主人公の調査報告を評価する「シゴック先生(第5シリーズはセッカチーフ教授)」は、声優の青野武が演じている。
[編集] 第1シリーズ(シラベル編)
第1シリーズは、2年間にわたる製作・放送であった。主人公の名前は、シラベル(役者は東善智 - あずまよしとも)であり、下宿先は、元小学校教諭の年配夫婦宅であった。第1シリーズには、本作音楽担当の山本正之や作家の志茂田景樹、担当プロデューサーの佐々木和哉(故人)をはじめとする多彩な特別出演者などによって印象深い場面が多い。このため第1シリーズは、「このまちだいすき」の中核をなすものといわれている。また、第1シリーズにおいては、銚子市の紹介に貢献したということで、同市から主人公の「宇宙人シラベル」に対して感謝状が贈られている(番組内では、表彰の模様が放送された)。
第1シリーズ中、1年目に放送された作品は、これまでの学校放送番組をある程度厳格に踏襲していたが、2年目に放送された作品からは、学校放送番組の既成概念を超える娯楽的な要素が数多く取りこまれたといわれている。娯楽的な要素として主にあげられる事項には、サブタイトルにアニメ「機動戦士ガンダム」の各話サブタイトルをもじって付けたり、かつての日本テレビ系ドラマ「探偵物語」のパロディ、日活映画「渡り鳥シリーズ」のパロディ、加えて当時流行ったフジテレビの深夜番組「カルトQ」をもじった「銚子タルトQ」(出題問題の中にクイズ世界はSHOWbyショーバイ!!の「何を作ってるんでしょーか?」クイズやクイズダービー、クイズヒントでピントのパロディ部分も登場)などがあった。このような娯楽的な要素については、視聴対象者の児童のほか、教員にも親しまれる番組をめざすために企画されたものなのではないかという説がある。
なお、渡り鳥シリーズのパロディ回には番組プロデューサーが出演し、また、相手役「エースのチョー」(宍戸錠演じる「エースのジョー」のパロディ)は、前身番組「たんけんぼくのまち」の主人公・チョーさんこと長島雄一が演じていた。実は会社社長という設定であり、チョーさんのその後と考えることもできる。
[編集] 第2シリーズ(サガセル編)
第2シリーズは、1年間の製作・放送であった。主人公の名前は、サガセル(役者は大塚寛 - おおつかひろし)であり、下宿先は、仏教寺院であった。また、第2シリーズは多彩なパロディーに満ちており娯楽的な要素が強かった。
サガセルがあこがれる女性(マドンナ)として「よしこ」が登場し、役者には、しばしば競馬情報の放送を担当していた結城未来が起用されていた。主人公のサガセルが、女性と親しくなりたいあまりに女子大生との男女合同コンパ(合コン)を催し、口説く場面もあった。また、 最終回は主人公・サガセルとマドンナ役との恋愛物語に徹し、ほとんど社会科的要素を含まないという教育番組として異色の回であった。
[編集] 第3シリーズ(シラベラ編)
第3シリーズは、1年間の製作・放送であった。主人公の名前は、シラベラ(役者は川崎香 - かわさきかおり)であり、下宿先は当初造り酒屋の店主宅だったが、1学期最後の第8話で彼の甥一家が経営する簡易郵便局を兼ねる商店に変更になった。なお、シラベラは、第1シリーズの主人公であったシラベルの妹という設定であった。このシリーズでは、シラベラの兄であるシラベルを主人公としていた第1シリーズと同様に、テレビ東京系のテレビ番組「プレイガールQ」のもじりがあった。なお、シラベラの役を担当した川崎香は、取材記者(レポーター)やディスクジョッキー(DJ)として現在活躍している。
[編集] 第4シリーズ(マナベル編)
第4シリーズは、2年間の放送であった。最初の1年目の放送分については、年間を通して製作され、2年目の放送分については、再放送と新作を半々ぐらいにおり交ぜて放送された。主人公の名前は、マナベル(役者は野地将年 - のじまさとし)であり、下宿先は、年配夫婦が経営する乾物店であった。また、第4シリーズには、第2シリーズのようにマナベルがあこがれる女性「ゆきの」が登場した。また、マナベルのほかに宇宙アカデミーから地球に来た女子生徒(役名はイズタン、役者は伊藤いずみ)が、このシリーズにのみ登場した。
[編集] 第5シリーズ(アチコチ編)
第5シリーズは、1年間の製作・放送であった。このシリーズでは、番組の設定が大きく変更され、主人公は、宇宙ライブラリーから「宇宙大百科事典」を制作するために地球に派遣された調査員とされた。主人公の名前は、アチコチ(役者は三谷亮太、ただし当時の芸名はロケット亮太)であった。下宿先は、喫茶店を経営する年配夫婦宅。地球上のアチコチは、上司のセッカチーフ教授(青野武)の他に、黄色いオウム型ロボットのウォッチ鳥(声の出演は小田木美恵)の監視下におかれていた。また、長島雄一が「星チョースケ」という役名の主人公の父親として出演。「巨人の星」の星一徹を彷彿とさせるシゴキをアチコチに与えるためしばしば宇宙からやってきていた。
[編集] 関連項目
[編集] 前後番組の変遷
NHK教育テレビ 学校放送 小学3年向け社会科番組(1992~1998年度) | ||
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前番組 | 番組名 | 次番組 |
このまちだいすき
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まちへとびだそう
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