おふくろさん騒動
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おふくろさん騒動(―そうどう)は川内康範が作詞した曲「おふくろさん」の歌詞改変をめぐる騒動のこと。
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[編集] 概要
紅白歌合戦で森進一が「おふくろさん」を歌ったが、その際にオリジナルにはないセリフが無許可で足されているとして、2007年2月に作詞をした川内が著作権の侵害を訴え、「もう森には歌ってもらいたくない」と激怒した騒動である。森はこの楽曲を封印することを宣言した。
[編集] 付け加えられたセリフ
おふくろさんのイントロ前に「いーつーも心配かけてばかり…」というバースが入った。この部分は当時森のコンサートをすべて仕切っていた保富康午が補詞を付けることを提案、当時森が所属していた渡辺プロダクションの賛成の元に原作曲者の猪俣公章が曲をつけたものであった。だが、これは作詞者の川内には伝えられていなかった。
[編集] 森の謝罪行脚
川内の激怒に森は笑みを浮かべながら、最初「歌いだしの部分は事務所(当時所属していた渡辺プロダクション)がやってくれていると思っていた」と弁解していたが、大物歌手としてのプライドからか「あの歌は“森進一のおふくろさん”」、「(自分が主導していたのではなく当時の所属事務所が主導していたのに自分が)謝る理由がわからない」といってしまう。
この発言にさらに川内は激怒。「人間失格だ!」とまで言い放ってしまう。これに恐れをなした森は川内に直接謝罪するために青森県八戸市にある川内の自宅に出向くが、当時川内は東京にいたため会えずじまいであった。森は川内邸にとらやの羊羹と手紙を置いたが、川内は「三文芝居」と大激怒し、品物を森の事務所に送り返してしまった。川内はもう森とは会わないことを宣言し余計にこじれる結果となってしまった。川内が「三文芝居」と激怒したのは、森がマスコミに対しては川内宅に謝罪に訪れる事を事前に通知し、取材陣を引き連れて訪問した一方、肝心の川内自身には事前のアポイントを取らなかった事も原因である[要出典]。
一方で、この歌詞改変部分は保富作詞、猪俣作曲であり、さらに渡辺プロダクションの全面的な賛成の元に実施されたものである。本来著作者人格権の同一性保持権を侵害しているのはこの両名および許可を取らなかった渡辺プロダクションであるという意見もある。ただし、保富や猪俣がすでに故人であり、また森進一はすでに渡辺プロダクションを独立している事から、既にこの件に関して責任があるのは森進一だけになっている。森だけが批判の矢面に立たされているのも、ある意味当然である。
そもそも、森進一が渡辺プロダクションから独立し、全民放で出演ができなくなった時に、せめてNHKでは出演できるように取りはからってくれたのが川内である。また川内も唐突に森を非難した訳ではなく、既に10年前に歌詞の改変は自分の意思に反する事を森には伝えており、その時に森は歌詞改変をやめる事を承諾している(というのが川内の主張である)。今回の騒動は、森がその約束を破った件についての、川内の抗議である。
そのため川内の怒りは相当なもので、この件を問いただす記者の質問にはそれまで機嫌よく回答していた態度を急変させ、「三文芝居の片棒を担ぐお前らの質問には答えない」などとあからさまに不快感を示し、電話取材を勝手に打ち切ってしまうなどの行為も見られた。なかにし礼は社会が著作権軽視している現状のためか川内の今回の対応を絶賛しているが、今回の件は著作権侵害というよりは、むしろ森が約束を守らない事に対して川内が立腹しているのである。
[編集] 法律的観点
同一性保持権という法律的なことから見ると2007年3月8日放送分のニュース、ワイドショー番組「イブニング・ファイブ」などでは、著作者である川内の意に反した改変であるため、川内が提訴した場合森が敗訴する可能性が高いと述べられている。一方で当時の森の立場などを考えると森に対する訴えでは勝訴できない、本当に訴訟で解決するには改変部分の作詞者と作曲者および当時の所属事務所である渡辺プロダクションを訴訟相手としなければならないとする専門家の意見もある。2007年3月8日になって日本音楽著作権協会(JASRAC)は、「改変版の歌唱・利用許諾はできない」とし、森は改変された「おふくろさん」を歌うことは事実上できなくなった。