sinc関数
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sinc 関数(シンクかんすう)は、正弦関数をその変数で割って得られる初等関数である。sinc(x), Sinc(x), sinc x などで表される。
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[編集] 定義
sinc 関数は、正規化 sinc 関数と非正規化 sinc 関数という名で区別される、2種類の定義を持つ。
いずれの場合も、可除特異点である 0 での値が必要であればしばしば明示的に sinc(0) = 1 が定義として与えられる。sinc 関数はいたるところ解析的である。
[編集] sinc関数の性質
特にことわらないかぎり、正規化sinc関数について述べる。 非正規化sinc関数は、スケール・ファクターπが違うだけなので、非正規化sinc関数についての式を得るには、を代入すればいい。
[編集] 特殊値など
- ただし、は整数の集合、はクロネッカーのデルタ。
- つまり、である。
[編集] フーリエ変換
[編集] テイラー展開
[編集] 定積分
[編集] 不定積分
- (非正規化)sinc関数の不定積分を正弦積分と呼び、で表す。は特殊関数である。
[編集] 直交性
- sinc関数の平行移動同士は直交する。
[編集] 他の関数との関係
- ただし、は、0次の第1種ベッセル関数。
- ただし、はディラックのデルタ関数。
- ただし、はガンマ関数。
[編集] 無限積
[編集] 信号処理への応用
さまざまな用途が考えられるが、コンパクト・サポートでない(非0の値が有限区間に限定されていない)ため、非常に多くの計算量を要することが多い。有限長で計算をうち切らなければならないことも多く、無限長では生じない問題が発生することもある。概して、理論的背景やシミュレーションにとどまることが多い。
- 直交性と ±∞ での収束性から、直交ウェーブレット変換の基底に用いる。ただし、コンパクト・サポートでないため、計算量が O(N2)(ランダウの記号)で増える。これは、コンパクト・サポートな基底だと計算量が O(N) であることに比べ、大きなデメリットである。
- フーリエ変換が矩形関数であることから、リサンプリングや内挿の補間カーネル(低域通過フィルタ)に用いる。無限系列では、sinc 関数は理想的な補間カーネルである。しかし、コンパクト・サポートでないことが問題になるため、実際には、sinc 関数に似たコンパクト・サポート関数である、3次畳み込み関数や、ランツォシュ・フィルタ(Lanczosフィルタ)などが使われることが多い。
- 矩形関数のフーリエ変換であることから、sinc 関数を使えば、理想的なD/A変換ができる。ただしこれは、重要な概念ではあるが、実際にこのやりかたで D/A 変換がなされるわけではない。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- シンク関数の数学的諸性質 - 佐藤郁郎
- 正弦積分 - 宮田重明 (正弦積分のアルゴリズム)