ガンマ関数
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数学においてガンマ関数(ガンマかんすう)とは、実部が正の複素数について次の積分で定義される関数をいう[1]。
この積分は第二種オイラー積分と呼ばれるものである。一般の複素数については次の無限乗積で定義される。
ガンマ関数は、階乗の複素数への拡張としてオイラーによって考案されたものであり、自然数nについてΓ(n) = (n − 1)!が成立する。これに加えて、任意の正の実数x > 0についてΓ(x + 1) = xΓ(x)であり、対数凸な有理型関数であるという条件を与えればガンマ関数が一意に特定される。
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[編集] 概要
ガンマ関数は、元は階乗の一般化としてオイラーが得たもので、Γという記号は、アドリアン=マリ・ルジャンドルが用いたものである。 以前はΠ(x)などと表記していた(ただしΠ(x) = Γ(x + 1))。 オイラー積分による定義から
であり、自然数nについて
- Γ(n) = (n − 1)!
が成り立つ。従って、ガンマ関数は階乗の定義域を複素平面に拡張したものといえる。そのような関数は無数に存在するが、正の実軸上で対数凸である解析関数という条件を付ければ、それは一意に定まりガンマ関数に他ならない(→ボーア・モレルップの定理)。右半平面においてオイラー積分で定義されたガンマ関数は全平面に有理型に解析接続する。ガンマ関数は零点を持たず、原点と負の整数に一位の極を持つ。その留数は、
である。また、非整数でのガンマ関数の値のうちで最も有名なのは、おそらく以下のものであろう。
[編集] 定義の整合性
定義の積分表示と乗積表示が一致することを示す。
とすればであるからである。t = nuの置換により
nzを除く部分をgn(z)として
これにより
を得る。故に
である。
[編集] ワイエルシュトラスの乗積表示
オイラーの乗積表示からオイラーの定数を括り出すとワイエルシュトラスの形式が得られる。ワイエルシュトラスはガンマ関数が負の整数に極を持つことを嫌って逆数を用いた。ガンマ関数の逆数は複素平面全体で正則である。
[編集] ハンケルの積分表示
ガンマ関数は次の経路積分で表される[2]。積分経路は正の無限大から実軸の上側に沿って原点に至り、原点を正の向きに回り、実軸の下側に沿って無限大に戻るものとする。但し、その偏角はとする。
この積分は、積分経路を適当に変形し、数値積分でガンマ関数の値を求めるために使われることがある[3]。
[編集] ハンケルの積分表示の導出
極座標表示( − t) = reiθを用いると、実軸の上側に沿う部分はθ = − πでからr = δまで、原点を回る部分はr = δでθ = − πからθ = πまで、実軸の下側に沿う部分はθ = πでr = δからまでとなる。
とするとでであるから
である。しかし、左辺の被積分関数はzが有界であるかぎり正則であるから、左辺は複素平面全体に解析接続する。従って、
である。s = reiθとすれば、同様にして
を得る。また、反射公式により、
を得る。
[編集] スターリングの公式
ガンマ関数はスターリングの公式で近似される。この漸近近似は複素平面全体(負の実数を除く)で成立するが、に近づくにつれ近似の誤差が大きくなる(極限の収束が遅くなる)ため、応用上は反射公式などを用いて程度に制限することが多い。
[編集] 反射公式
次の恒等式をオイラーの反射公式(reflection formula)という。
この恒等式はオイラーの乗積表示から得られる。
この分母は正弦関数の無限乗積展開であるから、
である。反射公式にz = 1 / 2を代入すれば
となり
を得る。
[編集] 乗法公式
次の恒等式をガウスの乗法公式(multiplication formula)という。
この証明を示す。両辺の比をf(z)とすると
故に、任意に大きな自然数mについてf(z + m) = f(z)が成立する。スターリングの公式により
途中で
を適用した。
であり、故に
が成立する。
[編集] いくつかの具体的な値
[編集] 出典
- ^ Wolfram mathworld: Gamma Function
- ^ Springer Online Reference Works: Gamma-function
- ^ Schmelzer & Trefethen (2007), Computing the Gamma function using contour integrals and rational approximations