ボーア・モレルップの定理
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ボーア・モレルップの定理(Bohr-Mollerup Theorem)はガンマ関数を特徴づける定理である。この定理によると、正の実軸上で対数凸であり、G(x + 1) = xG(x)であり、G(1) = 1である複素解析関数は唯一ガンマ関数のみである[1]。
[編集] 証明1
初めにガンマ関数が正の実軸上で対数凸であることを確かめる。ワイエルシュトラスの乗積表示から
であり、対数の二階微分が正であるからガンマ関数は正の実軸上で対数凸である。また、Γ(x + 1) = xΓ(x)とΓ(1) = 1もガンマ関数の特徴として周知のものであるから、ガンマ関数はボーア・モレルップの定理の要求を充足する。次に未知の関数G(x)がボーア・モレルップの定理の要求を充足するものと仮定してG(x) = Γ(x)であることを証明する。
- f(x) = logΓ(x) − logG(x)
と定義する。G(x + 1) = xG(x)であるから
であり、nを任意の自然数としてf(x + n) = f(x)である。また、G(1) = Γ(1) = 1であるからf(n) = 0である。背理法を用い、となる点が実軸上に存在すると仮定する。しかし、であるから、が存在するためにはf'(x1) > 0,f'(x2) < 0が存在しなければならず、延いてはf''(x3) = ε > 0が存在しなければならない。これは
を意味する。しかし、とするとであるからとならなければならず、G(x)が対数凸であるという要求に反する。故に背理の仮定は成立せず、常にf(x) = 0であり、G(x) = Γ(x)である。以上により、x > 0でG(x) = Γ(x)が示されたが、一致の定理により正則な定義域全体でG(z) = Γ(z)となる。
[編集] 証明2
初めにガンマ関数が正の実軸上で対数凸であることを確かめる。ヘルダーの不等式により、
であり、対数をとると
であるから、故にガンマ関数は対数凸である。また、Γ(x + 1) = xΓ(x)とΓ(1) = 1もガンマ関数の特徴として周知のものであるから、ガンマ関数はボーア・モレルップの定理の要求を充足する。次に未知の関数G(x)がボーア・モレルップの定理の要求を充足するものと仮定してG(x) = Γ(x)であることを証明する。G(x)は実軸上で対数凸であるから
である。また、
であるから、合わせて
となる。 x = nを整数とし、とすれば不等式の両端が一致して
を得る。以上により、でG(x) = Γ(x)が示されたが、一致の定理により正則な定義域全体でG(z) = Γ(z)となる。