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『RAINBOW-二舎六房の七人-』(レインボー・にしゃろくぼうのしちにん)は作家・安部譲二原作、漫画家・柿崎正澄作画の漫画である。2001年から小学館発行週刊ヤングサンデーに連載され、同社より単行本1巻~20巻が発行されていて、300万部突破。2006年第51回小学館漫画賞大賞を受賞した。
[編集] 物語
昭和30年(1955年)、罪を犯し「湘南特別少年院」・二舎六房に堕ちた6人の男たちがいた。彼らは同房にいた年上の『アンチャン』の教えを胸に、出所後、望まないのに向かってくる少年院や世間に満ちた苦しみ、不条理と向き合い、力強くそれぞれの人生を生きていく様を描く。原作者の安部曰く「愛と勇気の物語」。安部譲二の自叙伝ともいえる作品である。
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
[編集] 登場人物
[編集] 二舎六房の七人
- 桜木六郎太(さくらぎ ろくろうた/通称アンチャン)
- 通称の由来はみんなの『アンチャン』から
- 「二舎六房」の先輩。入所理由は不明であるが、父を自殺に追い込んだ自責の念から「自分が殺した」と出頭した可能性がある。
- 現実に負け、目標も夢もなくした6人に「愛と勇気」を持って強く生きることを教えた。
- 釈放目前であるが、ある理由で塀の中に封じ込められている。夢はボクシング世界チャンプ。
- 水上真理雄(みなかみ まりお/通称マリオ)
- 通称の由来は名前の『真理雄』から
- 暴行罪/傷害罪/殺人未遂で入所。仲間のためなら誰であろうと体を張る、鉄火肌な男。悪く言えば短気。
- ある事情で右の拳を潰された(後に治るか治らないかの大手術をし、完治した)。6人の中で一番出所が遅かった。アンチャンの意志を受け継ぎ、ボクシング世界チャンピオンを目指す。今では仲間たちが一瞬アンチャンと見間違えるほどの風格を漂わせるようになった。
- 前田昇(まえだ のぼる/通称スッポン)
- 通称の由来は武器が自分の歯で噛み付いて離さない(=『スッポン』)ところから
- 窃盗罪/脱獄罪で入所。広島に投下された原爆により孤児となる。
- 頭部に10円ハゲを持つ。背が低い。口が上手い根っからの商売人で、大金持ちになる夢を持つ。
- 遠山忠義(とおやま ただよし/通称ヘイタイ)
- 通称の由来は『ヘイタイ』になるという夢から
- 暴行罪/傷害罪/公務執行妨害/過剰防衛で入所。怒らせると怖い任侠気質の風貌を持つ硬派の大男。
- 「兵隊」になるという明確な夢を持っている。
- そのため自衛隊に服役中ながら入隊、一番早く出所した。右目と額に切り傷がある。
- 野本龍次(のもと りゅうじ/通称バレモト)
- 通称の由来は座右の銘?である「『バレ』て『モト』モト」から
- 詐欺罪/横領罪で入所・父親が満州で戦死、
- 終戦後の混乱が原因で人間不信に陥ったが、仲間や他人のおかげで救われる。
- いつもずり落ちそうな眼鏡をかけている。紆余曲折あって検事を目指すことに。童貞なのを気にしている。母親と彼に良く似た2人の弟(名前は「達夫」と「和夫」)がいる。
- 横須賀丈(よこすか じょう/通称ジョー)
- 通称の由来は名前の『丈』から
- 暴行罪/傷害罪/不純異性交遊で入所。混血児。幼少時に母親の手で妹(メグ)と共に混血児のための孤児院の門前に置き去りにされ、そこで育ったが、優れた容貌のせいで女性院長に目をつけられて性的虐待を受ける。入所後に妹が養父に引き取られ、長らくお互いの行方を知らないまま離れ離れだった(のち再会)。
- 歌手になりたいという夢がある。目元に泣きぼくろがある、金髪碧眼の風貌を持つ二枚目。
- 松浦万作(まつうら まんさく/通称キャベツ)
- 通称の由来は右肩の岩牡丹の刺青が『キャベツ』に見えることから
- 暴行罪/傷害罪で入所。頭の回転が鈍い、優しすぎる大食いの怪力男。
- 他の仲間に比べなかなか道が定まらなかったが、ある人物の紹介でプロレスラーに活路を見出す。
[編集] その他登場人物
- 石原(いしはら)
- 「湘南特別少年院」の看守。
- ある事件の真相をアンチャンに知られているため、佐々木と手を組んで、どんな手段を使ってもアンチャンの出所を阻止しようとする。
- ヒロポン中毒者になる。
- 佐々木(ささき)
- 同院の嘱託医師。自らが引き起こしたある事件の真相と証拠をアンチャンに知られ、隠匿して闇に葬ろうと石原同様彼を虐待する。同性愛者であり、収監されている少年たちを夜な夜な自室に連れ込んで犯していた。
のちに議員として出馬するが、6人の策略により演説会で制裁を受ける。スキャンダル発覚により、落選。
- 熊谷(くまがい)
- 同院の看守。石原と違い7人に同情的な温厚な人。のちに石原らの陰謀により、死亡。
- 荻野栄一(はぎの えいいち)
- 強盗罪で湘南特少に入所。
- ある事件の被害者。アンチャンに事件の真相と証拠を託し自殺した。
- 小池(則松)節子(こいけ(のりまつ) せつこ)
- 看護婦。塀の中から脱出したメンバーを匿った。また、アンチャンの恋人でもあった。後にマリオに想いを寄せられて一度は受け入れるが、直後に彼の元を去る。則松俊郎と結婚し、一児をもうけた。
- リリィ
- 米軍基地に出入りする娼婦。いわゆるパンパン。地位の高い将校の愛人であり、その立場を活かして7人の窮地に便宜を図ってやった。米軍の引き揚げで一度は全てを失うが、のちに自分の店を持つことができた。
- 高田
- 検事。ある一件がきっかけで、バレモトの法律の師匠になる。決して悪を許さない、口をへの字に曲げた、頑固一徹を顔に書いた人物。後に弁護士に転身した。
- 横須賀メグ(よこすか めぐ)
- ジョーの妹。ジョーが二舎六房に入所中の12歳の時、養父に引き取られる。
- その養父に性的な虐待を受け続け、15歳のとき逃げ出して場末のキャバレーなどで働いていた。現在はリリィの店の手伝いをしている。後にヘイタイと結婚。
- ジェフリー
- ボクシングが売りの米兵。マリオと勝負し、彼の才能に惚れ込む。
- 有藤(ありとう)
- ヤクザの若頭。キャベツをプロレス団体に紹介した。左の頬に派手な刀傷がある。
- 岩崎(いわさき)
- 自衛隊員でヘイタイの後輩。狩野川台風の際ヘイタイと任務を共にした。元々は泳げなかったが、前述の台風の際に克服した。
- 杉さん
- 金利1割で金を貸す「一分屋」を営む老人。スッポンに商売の厳しさを叩き込んだ。
- 前畑伸之輔(まえはた しんのすけ)
- メグの里親。自分の夜の相手をさせるためメグを引き取る。後に逃げ出したメグを追う。
- 田中(たなか)
- 人相が悪いヤクザの一人。キャベツの元教育係。キャベツに命を助けられたため恩義を感じている。
- 昔はプロボクサーを目指していた。
- ジミー・ブラウン
- マリオのトレーナーで、日本語が喋れる。ジェフリーとは知り合いであり、米軍基地にいることもある。
- 則松俊郎(のりまつ としろう)
- レストラン経営者。節子と結婚し一児の父親となった。
[編集] 舞台
- 第一章は昭和30~31年、第二章は昭和32~33年、第三章は昭和35年~を舞台にしている。
- 尚、東京・湘南が舞台の中心となっている。
[編集] 単行本
単行本の表紙は、二舎六房の七人が、交代で登場する。そのローテーションは、マリオ→アンチャン→スッポン→ヘイタイ→バレモト→ジョー→キャベツ→マリオとなっている。
- ISBN 4091530311 2003年4月5日初版発行 CRIME 1.-CRIME 9.
- ISBN 409153032X 2003年7月5日初版発行 CRIME 10.-CRIME 20.
- ISBN 4091530338 2003年10月4日初版発行 CRIME 21.-CRIME 31.
- ISBN 4091530346 2003年12月5日初版発行 CRIME 32.-CRIME 42.
- ISBN 4091530354 2004年4月5日初版発行 CRIME 43.-CRIME 52.
- ISBN 4091530362 2004年7月5日初版発行 CRIME 53.-CRIME 62.
- ISBN 4091530370 2004年10月5日初版発行 CRIME 63.-CRIME 73.
- ISBN 4091530389 2004年12月27日初版発行 CRIME 74.-CRIME 84.
- ISBN 4091530397 2005年4月5日初版発行 CRIME 85.-CRIME 95.
- ISBN 4091530400 2005年7月5日初版発行 CRIME 96.-CRIME 106.
- ISBN 4091532918 2005年11月4日初版発行 CRIME 107.-CRIME 117.
- ISBN 4091510477 2006年2月3日初版発行 CRIME 118.-CRIME 127.
- ISBN 4091510809 2006年5月2日初版発行 CRIME 128.-CRIME 138.
- ISBN 4091511082 2006年8月4日初版発行 CRIME 139.-CRIME 149.
- ISBN 4091511341 2006年11月2日初版発行 CRIME 150.-CRIME 160.
- ISBN 978-4-091511690 2007年3月5日初版発行 CRIME 161.-CRIME 171.
- ISBN 978-4-091512048 2007年6月5日初版発行 CRIME 172.-CRIME 182.
- ISBN 978-4-091512260 2007年9月5日初版発行 CRIME 183.-CRIME 193.
- ISBN 978-4-09-151257-4 2007年12月28日 初版発行 CRIME 194.-CRIME 204.
- ISBN
[編集] 舞台化
2007年2月、アクサルにより舞台化された。(内容は第一章完結まで)