NWF
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
NWF(National Wrestling Federation 全米レスリング連盟)は、1970年代前半にアメリカに存在したプロレス団体。プロモーターのペドロ・マルチネツと、現役レスラー兼プロモーターのジョニー・パワーズを中心に設立・運営された。ニューヨーク州バッファロー、オハイオ州クリーブランドを拠点に、アメリカ北東部、五大湖地区、及びカナダを主要エリアとして活動した。North American Wrestling Federationが正しい名称だという説もある。
米国プロレス史全般からみれば短命のローカル団体に過ぎず、設立経緯や活動内容に不明な点も多い。しかし新日本プロレス、アントニオ猪木との深い関わりのため、日本には愛着や関心を持つプロレスファンが多い。
目次 |
[編集] 概要
1971年にバッファローを中心とする北東部の大物プロモーター、ペドロ・マルチネツと、同地のトップスターであり、クリーブランドのプロモート権を得ていたジョニー・パワーズを中心に、メジャー団体のNWA、WWWFと一線を画す独立団体として設立された。同年11月17日、バッファローにおいて世界ヘビー級王者決定戦が行われ、ワルドー・フォン・エリックを破ったパワーズが初代王者となった。その後王者は目まぐるしく交代する。(パワーズがロサンゼルスでフレッド・ブラッシーを敗り初代王者になったという説も存在するが、信憑性は低い。)
最盛期にはミシガン、メリーランド、カナダのトロント、モントリオールへとテリトリーを拡大、弱小団体とは呼び難い勢力を持つに至った。ボボ・ブラジル、ジョニー・バレンタイン、アブドーラ・ザ・ブッチャー、ザ・シーク、アーニー・ラッドら一流レスラーが多数集結、パワーズとバレンタイン、ラッドとブッチャーとの抗争などの名物カードも生み、米プロレス誌上でNWA、AWA、WWWFに次ぐメジャー団体と認知された時期もあった。
しかし、1973年に入ると勢力は衰退・縮小していく。同年12月10日に東京で行われた世界戦において、第14代世界王者となっていたパワーズがアントニオ猪木に敗れ王座が日本に渡る。その後もパワーズは1974年3月には猪木を招聘してクリーブランドで世界戦を行うなど、1975年初めまでは同地で興行を行っていた。しかし、前年に一時プロレス界から離れていたマルチネツが関わった新団体IWAに吸収されるかたちで、同年半ばまでには事実上活動を停止し消滅状態となった(このIWAも同年中には活動停止となっている)。
以上のように米国プロレス史全般からみれば短命のローカル団体に過ぎず、設立経緯や活動内容、歴代王者等に不明な点も多々ある。しかしアントニオ猪木が同団体認定世界ヘビー級王座を1973年の獲得から看板タイトルとして1981年まで長く保持したこと、また日本でも高名な大物レスラーが多く参加していたこと等により、日本には愛着や関心を持つプロレスファンが多い。
[編集] 新日本プロレスとの関係
一般にNWFと新日本プロレスとの結びつきは、1966年に東京プロレスに初来日して以来の、パワーズとアントニオ猪木の関係によるものとされている。しかし実際には、NWF設立以前の1969年に当地をサーキットし、パワーズとも旧知の坂口征二によるブッキングと考えるのが妥当であろう。
日本では「パワーズが図らずも猪木に王座を奪われたため、隆盛を誇っていたNWFが一転凋落に向かった」という伝説が、長年史実として語られてきた。現在では、パワーズが新日にタイトルを売却したとの見方が通説になっている。この王座売却の時点で既にパワーズは団体自体を店じまいするつもりだったとの極端な見方もされるが、その後も1975年初めまではクリーブランド等で興行を行っており、これも断じ難い。
1975年初めで事実上NWFが消滅した後も、新日は1977年初め頃まではNWFが存続しているようなアングルを組んでいた(上述のIWA崩壊後もパワーズはIWAの名で1976年末頃まではノースカロライナ州で興行をしており、パワーズ一派という意味ではNWFの存続もまったくの絵空事ではない)。しかしそれ以降はNWFの消滅は日本でも周知の事実となり、同王座は事実上、新日認定タイトルとなった。1981年4月、IWGP提唱に伴い、スタン・ハンセンとの王座決定戦に勝った猪木により封印された。
尚、同王座は2003年1月に藤田和之の提案により復活したが、タイトルの名称としてであり、かつての団体とは一切関係ない。2004年1月に高山善広より王座を奪取した中邑真輔により再度封印された。
[編集] NWF世界ヘビー級王座 歴代王者
- ジョニー・パワーズ
- ワルドー・フォン・エリック
- ドン・デヌーチ
- ワルドー・フォン・エリック
- アーニー・ラッド
- アブドーラ・ザ・ブッチャー
- アーニー・ラッド
- ジョニー・バレンタイン
- アーニー・ラッド
- アブドーラ・ザ・ブッチャー
- ジョニー・バレンタイン
- ジャック・ルージョー
- ジョニー・バレンタイン
- ジョニー・パワーズ
- アントニオ猪木
- タイガー・ジェット・シン
- アントニオ猪木(1976年に「世界」を外し、NWFヘビー級王座となる。)
- スタン・ハンセン
- アントニオ猪木
- アントニオ猪木
※猪木獲得前の米国での王座変遷には異説もある。
復活後