AZEL -パンツァードラグーン RPG-
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ジャンル | RPG |
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対応機種 | セガサターン |
開発元 | チームアンドロメダ |
発売元 | SEGA |
人数 | 1人用 |
メディア | CD-ROM |
発売日 | 1998年1月29日 1998年4月30日 1998年 |
対象年齢 | ESRB: T (Teen) |
AZEL -PANZER DRAGOON RPG- (アゼル パンツァードラグーン アールピージー)は、1998年1月29日にセガが発売したセガサターン用コンピュータRPGである。
目次 |
[編集] ゲームの概要
本作は3Dシューティングゲームである『パンツァードラグーン』シリーズの第3作として発表されたが、シリーズ中で本作のみRPGとして制作された。これはシリーズ新規客層の獲得と、RPG市場で劣勢を強いられていたセガサターンの挽回を企図してのことと思われる[要出典]。
特長のひとつはポリゴンで構築された美しい世界である。幕間のストーリーデモは(一部でムービーが使われたものの)ほとんどリアルタイムポリゴンで描写され、他の場面との違和感を解消していた。こういったポリゴン劇は今でこそ当たり前だが、『メタルギアソリッド』シリーズが知られるまでは珍しいものだった。セガのオリジナルゲームで、本作のように物語世界の描写やストーリーを重視したものは珍しい。
RPGとしての戦闘システムも特殊である。基本的にはファイナルファンタジーシリーズ(IV以降)のように半リアルタイムで戦闘が進むが、ここに本作独自の位置取りシステムが加わることで、独特の楽しみを得ることができた。敵キャラクターには攻撃を得意とする方位と弱点とがあり、ドラゴンを敵の弱点へ移動させることにより、戦闘を有利に進めることができる。この位置取りには若干の時間を要し、また敵は時折方向を変えるので、移動と攻撃の時間バランスを考えながらコマンドを選択するのである。
さらに、プレイヤーはドラゴンの能力バランスを自由に設定することができる。これは戦術上の能力を設定するのみならず、それに合わせてドラゴンの姿がモーフィングのように変化するため、視覚的にも楽しむことができた。
[編集] ストーリー
高度な文明が滅び、残されたわずかな人類が、自らの生み出した攻性生物たちにおびやかされながら暮らしていた時代。かつての科学文明を発掘して攻性生物を駆逐しようとする帝国は、領土拡大のため諸国との戦争に明け暮れていた。
少年エッジは、帝国の遺跡発掘現場で、警備の傭兵として暮らしていた。傭兵とはいっても、敵国と戦うというよりは、発掘した兵器や攻性生物が暴れたときに鎮圧するのが主な任務であった。退屈な日々に嫌気がさしていたある日、何者かが遺跡を急襲した。襲ってきたのは味方であるはずの帝国軍将校クレイメンが率いる艦隊であった。傭兵たちは果敢に反撃を試みるが、圧倒的なクレイメンの前になすすべがない。混乱する遺跡の中でエッジが見たものは、石盤の中に埋め込まれた少女のようなものであった。
クレイメン一味は破壊の限りを尽くし、ついには石盤ごと少女を奪い去ってしまう。後を追おうとしたエッジだったが、仮面の男ツァスタバの攻撃によって谷底へ落とされてしまう。間一髪エッジを救ったのは、伝説のドラゴンに似た攻性生物だった。ただ一人生き残ったエッジは傭兵仲間の復讐を誓い、ドラゴンに乗ってクレイメンを追う……。
[編集] 登場人物
[編集] 作品の評価
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
本作はセガサターン待望のオリジナル大作RPGとして期待されたが、実際のセールスは8万本程度にとどまったと言われる。これには複数の原因が指摘されている。既存ファンの大半はRPGへの路線変更に失望して買い控えたこと、逆にRPGファンは本作を「シューティングゲームにRPGの要素を加味したもの」と誤解して敬遠したことなどが挙げられる。当時のセガは「せがた三四郎」のキャラクターイメージによるプロモーションを優先しており、ゲームそのものの内容が消費者に伝わらなかった可能性も否めない。さらに当時は『センチメンタルグラフティ』にセガサターンユーザーの注目が集中していた時期であり、『街』『仙窟活龍大戦カオスシード』等と同様に埋没してしまった感が強い。また、ドリームキャストの発売が発表された時期であり、セガサターンそのものからの客離れも存在した。
しかし一方で、実際に本作を手に取ったプレイヤーたちの評判は良好である。先に挙げたポリゴンによる世界構築や、独自の戦闘システムなどが高く評価された。
ただしストーリー面ではいくつかの批判が寄せられている。世界設定が『風の谷のナウシカ』に酷似していること、ヒロインであるアゼルのストーリー的役割が『装甲騎兵ボトムズ』のフィアナを連想させることなどである。さらには結末がメタフィクション的なことにも批判が強まった。後のゲーム市場では『ガンパレードマーチ』のようなメタフィクション設定のゲームを受け入れる土壌も出来上がったが、本作発表当時はまだこのような「モニターの内と外」をリンクさせる設定のゲームを受け入れることの出来るプレイヤーは少なかったのである(この時点で著名なメタフィクション設定のゲームはMOTHER2 ギーグの逆襲位しか見あたらない)。また、他作品との類似点も、そもそも『風の谷のナウシカ』自体が『地球の長い午後』(ブライアン・オールディス)など、古代文明の残滓の残る退化した未来世界を描いた海外SF作品によく見られる設定の延長線上にあり、本作もまた、パンツァードラグーンの世界をSF作品らしく突き詰めていった当然の帰結であったと考えるほうが自然である。
また本作をクリアするまでの標準的プレイ時間はおよそ20時間以下と、大作RPGとしては短く、このことも評価を分けた。時間に余裕のない社会人プレイヤーなどには歓迎された一方、大ボリュームを期待した学生などのプレイヤーは期待を裏切られたと感じた。ゲームデザインと、プレイヤーのライフスタイルとの相性が重要であることを物語る故事である。
ただ本作にも、戦った敵キャラクターの図鑑や、ドラゴンを最終形態へ変身させるためのキーアイテム、マップ巡回率の表示などといったやり込みを促す要素は存在する。短いプレイ時間に対しても、従来の長い大作RPGと違い折り返しプレイがしやすいという意見もある。