03式中距離地対空誘導弾
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
03式中距離地対空誘導弾(まるさんしきちゅうきょりちたいくうゆうどうだん)は、陸上自衛隊で使用されている純国産の中距離防空用地対空ミサイルシステムである。2006年現在、地対空誘導弾改良ホークの後継種として配備が進んでいる。主契約者は三菱電機。略称「SAM-4」、通称「中SAM」。
目次 |
[編集] 開発
西側各国では、長らくホーク等の地対空ミサイルに改良を行い使用してきたが、これ以上の性能向上が難しいとの判断により、アメリカ・ドイツ・イタリア等欧州各国が新型ミサイルの開発計画(中距離拡大防空システム,MEADS:Medium Extended Air Defense System )をスタートさせた。日本も参加を求められたが、国内事情から参加を断念し、日本独自の新型地対空誘導弾の研究開発が進められる事となった。
2003年(平成15年)に制式化され、航空自衛隊の地対空誘導弾ペトリオット(長距離防空用)と陸上自衛隊の81式短距離地対空誘導弾(短距離防空用)の間を埋める地対空ミサイルシステムとして配備が進められている。
2008年現在、配備されている部隊は下記のとおり。
[編集] 特徴
対空戦闘指揮装置の搭載車体には73式大型トラックを使用し、幹線無線伝送装置・幹線無線中継装置・射撃統制装置の搭載車体には高機動車を使用、捜索兼射撃用レーダー装置・発射装置・運搬装てん装置の搭載車体には専用8輪大型トラック(重装輪回収車と車体基本部分を共通化)が使用されており、高い機動展開性によって有事に即対応できる。操作に必要な要員も、ホーク時代の50人体制から、03式中距離地対空誘導弾は20人体制で行うことができる。
ミサイル本体は発射筒を兼ねたコンテナに収められた状態で、発射装置及び運搬装てん装置に各6発ずつ搭載されており、ロシアの防空システム:S-300、米欧共同開発のMEADS等と同様の垂直発射方式である。この為、陣地展開に必要な土地面積が従来方式に比べ少なくて済む様になり、用地探しが簡単になっている。
レーダーはアクティブフェーズドアレイレーダーであり、標的捜索のほか、目標の追尾および射撃管制も行う。また、高度なECCM(対電子妨害対処)能力と多目標同時対処能力を持ち、空対地ミサイルや巡航ミサイルによる遠距離攻撃に対処する能力も有するとされている。レーダーは回転することにより、全周捜索を行う。将来的には現在開発中の対空戦闘指揮統制システムやE-767早期警戒管制機等とのデータリンクによる戦闘能力の向上もされるとしている。ミサイル誘導方式は中間指令誘導とアクティブレーダーホーミングの組み合わせとなっている。
現在、03式中距離地対空誘導弾は世界最新鋭の対空防衛兵器であり、その高性能さを強調する為に一部のマスコミや軍事関係の書籍では「ミニペトリオット」という造語も用いられたが、全周方向対処が可能な点や、多目標同時対処能力等はペトリオットより優れているとされている。だが、03式中距離地対空誘導弾はあくまでも地対空誘導弾ペトリオットと81式短距離地対空誘導弾との間を埋める存在にすぎず、イージス艦や弾道ミサイル警戒用の軍事衛星等とのリンクの有無も明らかでないため、弾道ミサイルの迎撃能力まで与えられているかどうかはわからない。マスコミ各社の報道では、改良で射程距離を延伸することによって地対空誘導弾ペトリオットを凌ぐ弾道ミサイル迎撃手段となる可能性が十分にあり、これを地対空誘導弾ペトリオットの後継とする改良型の計画もあるというが、現在そのような話は公式には発表されていない。
1個群は4個中隊からなり、8個群が本システムに更新される予定である。1個群の価格は約470億円で、同規模のペトリオットの調達価格である約850億円より低く抑えられている。
[編集] 性能
- 全長:約4.9m
- 直径:約0.32m
- 重量:約570kg
- 弾頭重量:約73kg
- 射程:50km以上[1]
- 価格:ワンセット(1個群)約470億円
[編集] その他
[編集] 情報漏洩事件
2006年(平成18年)、朝鮮総連系の科学者団体「在日本朝鮮人科学技術協会(科協)」と関係があると言われるソフトウェア会社に、ミサイル部分の資料が流出したことが各種メディアで報道された。この会社を通じて北朝鮮に対して情報が流出したとされており、流出した情報には未公開のものも含まれるとみられる。ただし、防衛庁(現:防衛省)は「流出した情報はごく一部であり、異なる部分もあるため、このことが中SAMの運用に悪影響を与えるおそれはない。」としている。