鴨川ホルモー
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鴨川ホルモー | |
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ジャンル | ファンタジー |
小説 | |
著者 | 万城目学 |
出版社 | 産業編集センター |
発表期間 | 2006年4月 - 以下続刊 |
漫画 | |
原作・原案など | 万城目学 |
作画 | 渡会けいじ |
出版社 | 角川書店 |
掲載誌 | 月刊少年エース |
発表期間 | 2008年3月 - 連載中 |
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『鴨川ホルモー』(かもがわホルモー、KAMOGAWA HORUMO)は、日本の男性作家・万城目学の青春ファンタジー小説。産業編集センターより2006年4月20日発行。この作品を原作とした漫画作品が月刊少年エースにて連載中。また、2009年には実写映画が公開予定。
2007年11月にはこの作品の続編である『ホルモー六景』が刊行された。本項ではこちらについても記載する。
目次 |
[編集] 概要
本作は第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞を経て刊行された作者のデビュー作である。「京大青竜会」なる怪しげなサークルに勧誘された主人公が、「ホルモー」という謎の競技を通じて経験する2年間の青春と恋愛を描いた作品。陰陽道を取り入れた奇抜な設定とテンポのよい作風、そして個性的なキャラクターが作り出すコミカルで、時に切ない物語が話題を呼んだ。2008年現在の発行部数は11万部。
本の雑誌エンターテインメントで高い評価をうけ、2006年度第1位を獲得。また、 東京放送「王様のブランチ」内の本のコーナーにおいて、ブランチBOOK大賞新人賞を受賞している。2007年本屋大賞候補にもなった(結果は6位)。
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
[編集] あらすじ
二浪の京大新入生・安倍は、葵祭のエキストラのアルバイトの帰り、同じく新入生の高村と共に三回生のスガ氏から「京大青竜会」というサークルの勧誘を受ける。新歓コンパにだけ参加するつもりだった安倍だが、その席で早良京子という女性に一目惚れし、彼女に近づきたい一心で入会してしまう。
当初はただのリクリエーションサークルと思われた青竜会だが、やがて安倍たちは、自分達が京都を舞台に鬼や式神を使って争う謎の競技「ホルモー」で戦うために集められたことを知らされる。半信半疑の安倍たちであったが、吉田神社での儀式を終え、自らの目で「オニ」たちを見るに至り、否応なくホルモーの世界に引き込まれることとなる。
安倍、高村、早良、芦屋、楠木、三好兄弟、松永、坂上、紀野たち10名からなる第500代目京大青竜会は、ホルモーの練習を重ね、初戦に臨む。オニたちを巧みに使役する芦屋の活躍で勝利を目前にした京大青竜会であったが、高村の失策により敗北を喫する。使役するオニが全滅した高村は、断末魔の叫び声を挙げ、メンバーはホルモーの恐ろしさを知ることとなる。
この敗戦直後、安倍と芦屋との不和が表面化する。敗戦後、しばらく姿を見せなかった高村は、チョンマゲ頭で安倍の前に現れる。そして高村の口から、安倍が恋心を抱く早良は、よりにもよって安倍が忌み嫌う芦屋と交際していることを知らされる。心に傷を負った安倍は、ホルモーの練習を拒絶するようになった。
しかし、ホルモーを途中で投げ出すことができないことを知った安倍は、芦屋とは別のチームを組んでホルモーを続行する手立てを模索する。スガ氏から、各校のチームを2分して全8チームとする特別ルール「17条ホルモー」の存在を聞き出した安倍は、17条ホルモー実現のために奔走する。高村、楠木、三好兄弟の協力を得て17条ホルモーを実現し、「京大青竜会ブルース」を結成した安倍たちだが、夜な夜な黒いオニによる虐殺を目撃するという堪え難い恐怖に見舞われることになってしまった。これを解消するためには優勝するしかない。
安倍たちは、楠木の天才的な采配によって勝ち進み、決勝戦は、芦屋率いる「京大青竜会神撰組」との対戦となった。京大青竜会ブルースは、安倍と楠木とが不和に陥り、楠木のメガネが壊れて十分な指揮を採れなくなるという2つのトラブルに見舞われるも善戦し、安倍たちが黒いオニたちを見ることはなくなった。
そして、2回生となった安倍たちの後日談が語られ、物語は終わる。
[編集] 作中設定
[編集] 競技内容
「ホルモー」とは鬼や式神(作中ではオニと表記)を使い、勝敗を決める競技をさす。名前は勝負のクライマックスで発せられる雄叫びに由来する。現在は京都産業大学玄武組、龍谷大学フェニックス(旧・朱雀団)、立命館大学白虎隊、京都大学青竜会の4つのサークルで争われている。(なお、かつてはもう1チーム「ホルモー」を行っていたが、戦時中の混乱で中止になって以降、参加していない。『ホルモー六景』第四景を参照)1チームは10人で構成され、各人100匹ずつ(つまり1チーム全体で1000匹)使役し、オニ語を発して攻撃部隊と補給部隊に分かれて攻守を行う。攻撃部隊と補給部隊を何人ずつにするかはチームの自由だが、攻撃陣8:補給部隊2で、女性が補給部隊を担当するのがセオリーとされている。最終的に相手のオニを全滅させるか、代表者を降参させることで勝敗を決める。ただし、オニを全滅させる前に代表者が降参することがほとんどで、前者は形骸化している。
「ホルモー」の歴史は実に1000年といわれており、メンバーは2年に1度の割合で変わる。
[編集] オニ
本作でのオニは体長20センチと小さく、4頭身。顔には目も鼻も口も無いが(耳はある)、その代わりに顔の中心に茶巾絞りの“絞り”のような突起がある。その姿はオニを使役できる者にしか見えず、また使役者もオニに触れることはできない(オニの側から人の手や頭の上に乗ることはできる)。使役されるサークルごとに、色の異なる膝丈ほどの襤褸を身にまとっている(青竜会=青、玄武組=黒、フェニックス=赤、白虎隊=白)。この襤褸から熊手や棍棒などの武器を取り出し攻撃を行う。オニは攻撃を受ける度に絞りの部分がへこみ、完全に埋没すると地面に消えてしまう。この前に補給部隊に属するオニがレーズンを与えることで回復する(このレーズンは使役者が地面にばら撒いた市販のレーズンから取り出された「残像」のようなもので、現実にレーズンを消費するわけではない)。
[編集] 主なルール
- ホルモーは京都府内で行う。その際、道路やオニを扱う各神社で行うことは禁じられている。
- オニを使役するもの同士の体に触れてはいけない。故意に行った場合、反則負けを言い渡されることがある。
- 各チームの公正を期すため、祇園祭の宵山まで「ホルモー」の存在を明かすことが一切禁じられている(通称・宵山協定)。
- 覚書の17条には「サークル内での仲間割れなど、サークルの存続が難しくなった場合、チームを2つ、5人にまで分割することが可能である。」と表記されている。これを発動させる条件はサークル内の半数以上の支持を取り付ければよいが、反面、発動した者と支持者にはペナルティが課せられる。なお、1人が使役するオニは倍の200匹になる。1サークルがチームを分割した場合、残りのサークルも強制的にチームを分割させられ、同じサークル同士で対決することにもなる。
[編集] 主なオニ語
ここで基本的なオニ語を紹介する。下記のような言葉は、まるで中年男性が洗面所で吐き気をもよおす際の声に似ているとされる。
- 「ぐああいっぎうえぇ」(進め・攻撃の際の基本語)
- 「ふぎゅいっぱぐぁ」(止まれ)
- 「くぉんくぉんくぉんくぉん」(走れ走れ)
[編集] その他
- 各サークルの名前は陰陽五行説に由来しており、その中の四神の名をサークルに冠している。チームカラーもこの色に合わせている。なお、京都以外でも「ホルモー」を行うサークルは存在するようである。(『ホルモー六景』第五景より)
- 『鴨川ホルモー』というタイトルから、しばしば「ホルモン」と間違われやすい(これは作品内でもネタになっている)。また、「鴨川で行われるホルモー」という意味でもない。各シーズン前にはシーズンを通しての名称を京都の地名からとることを便宜的に決めており、第五百代目は「鴨川」という地名を採用しているだけで、この代は京都のどこで行っても「鴨川ホルモー」と呼ばれる。エッセイ「ザ・万歩計」にて作者はこのタイトルが分かりづらかったことを踏まえ、「次の作品ではわかりやすいタイトルをつけよう」と考えていたが、その教訓は生かされなかったという(その作品は『鹿男あをによし』)。
[編集] 登場人物
[編集] 第五百代京都大学青竜会メンバー
- 安倍(あべ)
- 本作の主人公で語り部。京都大学総合人間学部一回生。二浪の上に誕生日が4月3日で、入学時点で既に21歳だったためサークル活動に興味を示していなかった。浪人の経験からできる限り親に迷惑をかけたくないと考え、仕送りはほとんど受けずにアルバイトで自活しており、サークルの新歓コンパで食費を浮かせていた。物事に対してやや斜に構えた態度をとるが、恋愛には極端に奥手で好きな相手には話すことすらできない。ある女性には「どうしようもなく駄目な感じの人」と思われている。女性の鼻に並々ならぬ関心を持ち(いわゆる鼻フェチ)、そのことが青竜会に入るきっかけとなる。浪人時代の心の支えは、大ファンであるさだまさし。名前のモチーフは平安時代の陰陽師・安倍晴明。
- 高村(たかむら)
- 安倍と共に青竜会に勧誘された経済学部一回生。帰国子女で、入学前は家族と10年ほどロサンゼルスに住んでいた。日本を長く離れていたせいかやや常識はずれなところがあるが、時にまっとうな正論を語る。また壊滅的なファッションセンスの持ち主で、安倍から「イカキョー(いかにも京大生)」と内心蔑まれていた。安倍が抱いた第一印象は「面倒な奴」だったが、「ホルモー」を共に戦う中でよき相談相手となっていく。初めての「ホルモー」実戦での敗退後に姿をくらましていたが、その後、髪型を劇的に変化させて戻ってくる。他のサークルの構成員からは名前より先にこの特徴的な髪型を思い出される。名前のモチーフは小野篁。
- 早良 京子(さわら きょうこ)
- 教育学部一回生で安倍が思いを寄せている人物。落ち着いた雰囲気の美しい女性。普段は穏やかな性格だが恋愛に関しては激情家で周りが見えなくなるところがあり、一方でかなりしたたかな一面を持つ。そのことが「青竜会」にとっての大きな事件のきっかけになってしまう。
- 芦屋 満(あしや みつる)
- 法学部一回生。180cm近い長身で色黒のスポーツマンタイプ。安倍も認めざるを得ない男前。「ホルモー」に対する優れた適性を示し、「吉田の呂布」と呼ばれるほど。最下位続きだった青竜会再興の原動力となる。しかし生来の仕切り屋体質で自分がリーダーシップを発揮しないと気が済まない性格で、安倍とはそりが合わずほとんど口もきかない。名前のモチーフは安倍晴明のライバルといわれた陰陽師・芦屋道満。下の名前は「ホルモー六景」の第四景にて明らかになっている。
- 楠木 ふみ(くすのき ふみ)
- 理学部一回生。第五百代青竜会女性メンバー二名のうちのもう一人。流行遅れの髪型とレンズ面の広い眼鏡から、陰で高村に「凡ちゃん」とあだ名を付けられている。極端に無口かつ無愛想で、安倍の問いかけに応じないことも多いが、意外と女性的な一面を見せ、また数学のことに関しては饒舌になる。彼女が青竜会に入った理由は終盤明らかにされる。
- 三好兄弟(みよしきょうだい)
- 双子の京大生。あまりにそっくりで安倍達も見分けがつかない。兄弟共に温厚篤実で柔らかな物腰を忘れない。
- 松永、坂上、紀野(まつなが、さかがみ、きの)
- 第五百代青竜会の残りのメンバー。松永、坂上は芦屋の舎弟キャラを確立している。坂上と紀野は工学部建築学科在籍。
[編集] その他の登場人物
- 菅原 真(すがわら まこと)
- 理学部三回生。作中では「スガ(氏)」と呼ばれている。第四百九十九代京大青竜会会長。安倍達を五百代目のメンバーとして勧誘した。飄々としたとらえどころのない人物で、一回生からの「ホルモー」に関する追及をのらりくらりとかわす。後輩の面倒見は決して悪くないが、「ホルモー」の重要な情報を小出しにする。名前のモチーフは菅原道真。
- 立花 実伽(たちばな みか)
- 龍谷大学のホルモーサークル「龍大フェニックス」第四百九十九代会長。元々のサークル名「朱雀団」を、OBの猛反対を押し切り「フェニックス」に改めた女傑。安倍達の「ホルモー」初戦の立会人を務める。
以上で物語・作品に関する核心部分の記述は終わりです。
[編集] ホルモー六景
2007年11月に刊行された全6編の短編集。続編と銘打っているが、時間軸は『鴨川ホルモー』のストーリーとリンクしている。
[編集] あらすじ
- 第一景・鴨川(小)ホルモー
圧倒的な強さを誇る京産大玄武組。その原動力となっている「二人静」と呼ばれる彰子と定子の恋物語。高校、大学と好きな相手を作れなかった二人は新歓コンパで知り合い意気投合。世の中のありとあらゆる記念日に常に一緒にいることを誓った。しかし、それから半年後、定子は新しい彼氏を見つけ、その誓いを破ろうとしていた。定子からそのことを打ち明けられた彰子は定子に「決闘」を申し渡す。
- 第二景・ローマ風の休日
楠木ふみのサイドストーリーを同じバイト先で働く高校生・聡司を中心に描く。イタリアンレストランのバイトにやってきた楠木ふみ。無愛想でとらえどころのない性格に当初はいい印象を抱かなかった聡司。しかし、店長が招いたトラブルをきっかけに楠木ふみの才能を知ることになる。そんな夏の日、聡司は楠木ふみを誘って京都を散策する。第一景、第四景よりは後の設定である。
- 第三景・もっちゃん
ある実在の小説家の人生をベースにホルモーを取り入れたフィクション。安倍は入学から仲の良かった「もっちゃん」という男から恋愛の打ち明け話を聞く。なかなか思いを伝えられないもっちゃんに安倍はラブレターを書くことを勧める。彼の要望で安倍もラブレターを書く羽目になるのだが、やがてもっちゃんの運命を変える失敗をおかしてしまう。
- 第四景・同志社大学黄竜陣
芦屋の元彼女・山吹巴が「ホルモー」の謎を解明することになる物語。一浪の末、同志社大の学生になった巴はあこがれの教授に会おうとするが、その際、ひょんなことから書庫の荷物を取りに行く羽目になる。そして、書庫の中に「HORUMO」と書かれた手紙を見つけてしまう。時系列では第一景とほぼ同じ時期のものであり、京大青竜会にとっての大問題が発生する遠因になっている。
- 第五景・丸の内サミット
合コンで偶然出会ったかつてのライバルの前に思いもよらぬものが登場する。京産大学玄武組・第四百九十八代会長の榊原康と龍大フェニックス・第四百九十八代会長であった井伊直子は東京でサラリーマンとして働いている。二人はかつてホルモーで好勝負を演じたライバルであった。4月、互いの合コンで偶然二人は再会する。しかし、驚きもつかの間、その二人の前に黒い異様な物体が登場する。
- 第六景・長持の恋
立命館白虎隊・細川珠実の時代を超えた切ない恋物語。貧乏生活を送っていた珠実はアルバイト雑誌で見かけた料亭「狐のは」でバイトを始めることになる。そして2月、蔵に行く用事ができた珠実は織田信長が使っていたという長持を見つける。そこには「なべ丸」という名前の書かれた板切れが入っていた。これを見た珠実は自分の意志とは無縁に名前を書き込んでしまう。この日から「なべ丸」と「おたま」の文通が始まった。しかし、実は「なべ丸」は時空を超えた安土桃山時代の人物で、とある歴史的出来事に巻き込まれる運命にあったのだった。時系列は第二景よりも後の設定になっている。
[編集] 書籍
- 鴨川ホルモー(産業編集センター、ISBN 978-4-916199-82-9 )
- ホルモー六景(角川書店、ISBN 978-4-04-873814-9 )
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