馬主
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馬主(うまぬし、ばぬし)とは、広義ではウマ(馬)を所有する人を指す。この項では主に競走馬を所有している人・法人・組合について触れる。
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[編集] 概要
馬主として活動するためには各競馬主催者による馬主登録が必要である。また、中央競馬・地方競馬、両方に競走馬を所有している馬主も少なからず存在する。競走馬がレースで8着以内に入れば、賞金を獲得するが、その賞金の10%が調教師、騎乗した騎手と厩務員に5%ずつがそれぞれ進上金として配分され、残りの80%が馬主の収入となる。また、自ら所有することを目的として競走馬の生産を行う生産者のことを「オーナーブリーダー」という。
いわゆる一口馬主は、愛馬会法人に出資しているだけであって正確には馬主ではない。
[編集] 中央競馬における馬主
[編集] 馬主の種類
- 個人馬主
- 法人馬主
- 組合馬主(法人格なき組合・2001年秋より)
[編集] 登録審査基準
中央競馬の馬主は、日本中央競馬会を通して馬主申請を行う。
- 個人馬主
- 年間所得額が2年連続1800万円以上で資産額が9000万円以上。
- 法人馬主
- 法人については資本金1000万円以上で代表者が50%以上出資し過去2年黒字決算、法人代表者については年間所得額が2年連続1800万円以上で資産額が9000万円以上、代表者が個人馬主資格を持っていること。(この個人馬主資格は後に抹消される。)
- 軽種馬生産個人馬主
- 年間所得額が2年連続1100万円以上、牧場規模15ha以上(自己所有7.5ha以上)、自己所有繁殖牝馬6頭以上、北海道以外の地区は牧場規模要件は半減。
- 軽種馬生産法人馬主
- 代表者の年間所得額が2年連続1100万円以上、牧場規模15ha以上(自己所有7.5ha以上)、自己所有繁殖牝馬6頭以上、法人の資本金1000万円以上で代表者が50%以上出資、過去2年黒字決算、北海道以外の地区は牧場規模要件は半減、代表者の個人馬主資格の有無は問わない。(個人馬主資格を有していた場合は後に抹消される。)
- 組合馬主
- 組合員各々の年間所得額が1000万円以上(軽種馬生産者は750万円以上)、組合名義の定期預金が1000万円以上、3名以上10名以下で民法第667条で規定された「組合契約」を組合員間で交わしていること。(組合員が個人馬主資格を有していた場合は後に抹消される。)
- これらの要件はあくまで目安で、これら以外の要件もある
- 2002年度までは、年間所得額が2000万円以上(軽種馬生産者は1200万円以上)、資産額が1億4000万円以上、軽種馬生産者の自己所有繁殖牝馬頭数が7頭となっていた。
- 年間所得額には、一時的に得た所得(株式の売却等)や競馬に関する所得(地方競馬の賞金等)は含まれない。
- 資産額には、保険証券・ゴルフ会員権・美術品等は含まれない。
- 国内に居住する外国人の馬主登録は、日本人と同様に扱っている。
- 個人馬主の資格を有している者が、法人馬主の代表者もしくは組合馬主の組合代表・組合員となることはできない。(個人馬主登録を抹消する必要がある)
- 法人馬主の代表者もしくは組合馬主の組合代表・組合員が、個人馬主の資格を有することはできない。(代表者の変更もしくは組合からの離脱の必要がある)
[編集] 共有
競走馬は基本的には1頭につき1名(社)の馬主によって所有するが、場合によっては複数の馬主によって所有することができる。
- 共有する理由
- 「オーナーズクラブ」による共同所有(社台オーナーズクラブ等)
- 1頭すべてを所有することが難しいため
- いわゆる「1年抹消」を回避するため
- 知り合いの馬主と共同所有したいため
- 生産した牧場と共同所有したいため
共有は、2名以上10名以下で、個人馬主と法人馬主が混在してもよい。共有持分は1名10%以上で1%単位(割り切れない場合は1%以下の単位もあり得る)、原則として最も高い比率を持つ馬主が共有代表馬主となる。 馬に掛かる経費や獲得賞金等は共有持分によって折半・配分される。
組合はそれ自体が共有であるため、組合員の中に個人馬主・法人馬主・他組合馬主の組合員を含めることができない。各組合員の共有持分は1名10%以上50%未満で1%単位、最も高い比率を持つ組合員が組合代表となる。
[編集] 仮定名称
馬主は登録された名称とは別の名称(通称名・芸名・イニシャルなど)を設定することができる。昭和初期は一般的なものであったが、近年では数えるほどしか存在しない。
- 現在でも使われている仮定名称(カッコ内は登録名)
- 那須野牧場(恵比寿興業株式会社)、千明牧場(株式会社丸沼)、シンボリ牧場(和田農林有限会社)、有限会社シルク(有限会社サラブレットオーナーズクラブ・シルク) 等
[編集] 同姓同名の取り扱い
馬主登録をした時点で同姓同名の馬主が存在していた場合、混同を避けるため名前の後ろに馬主登録番号を追加して区別する。
[編集] 勝負服
勝負服は馬主毎に設定される。設定できる勝負服は1つまでで、後日変更が可能。共有馬は共有代表馬主の勝負服を使用する。
[編集] 馬主登録の取消
- 馬主が死去した時(法人・組合は解散した時)ただし、名義は死後一ヶ月までは有効
- 個人馬主の資格を有する者が別の法人馬主の代表に就任した時
- 個人馬主の資格を有する者が別の組合馬主の組合員となった時
- 組合馬主の組合員が3名以下となった場合
- 登録抹消の申請をした時
- 日本中央競馬会競馬施行規程第8条に該当した時
- 名義貸しが判明した時
- 共有馬を含む競走馬を1年以上所有しなかった時(いわゆる「1年抹消」で、競馬施行規程11条6項に該当) 等
(詳しくは日本中央競馬会競馬施行規程第10条及び第11条に記されている。)
[編集] 馬主協会
馬主協会とは、函館・札幌・新潟・福島・中山・東京・中京・京都・阪神・九州の10か所分かれている馬主組織で、各競馬場内にその事務所を置いている。馬主の親睦のほか寄付などの福祉活動も行っている。各馬主協会の統括組織として日本馬主協会連合会 (JOA)がある。最近はJOAチャリティーオークションを競馬場にて主催し福祉関係にその売上金を寄付している。
[編集] 馬主席
馬主席は馬主協会を通じて申し込むため、全国のいずれかの馬主協会に所属していなければ席の確保が難しい。また、割り当て席数の都合上所属協会と競馬場は同一、もしくは同地域(東京と中山、京都と阪神等)でなければさらに難しくなる。(例えば函館所属の馬主が阪神競馬場の馬主席を利用すること等)また、共有馬のみの馬主に対しても馬主協会によっては難しい場合がある。
馬主以外の人(いわゆる一口馬主の出資者を含む)が馬主席に入るには、馬主の紹介以外に方法は無い。
なお馬主席への入場に当たっては正装が義務付けられており、男性は少なくともジャケット・ネクタイを着用していなければならなく、スニーカーやジーンズなどのカジュアルな服装では基本的に入場(席章・通行章の発行)が拒否される。
[編集] 口取り
所有馬がレースに優勝した時には、ウイナーズサークルにて行われる表彰式で口取りができる。G1競走の際には芝コース上で行われる。
馬主以外にもその家族や知人、生産牧場関係者も多数参加する。一口馬主の出資者については各クラブによって異なるが、出資人数が多数であるため、参加人数を制限している。
[編集] 馬主登録数
2007年3月末の時点で2360。
1991年には3000を超える登録数があったがその後の景気の低迷とともに減少傾向にある。
[編集] 地方競馬における馬主
[編集] 馬主の種類
- 個人馬主
- 法人馬主
- 組合馬主(法人格なき組合・2002年より)
[編集] 登録審査基準
地方競馬の馬主は、預託予定の地方競馬調教師を通して馬主申請を行う。調教師につてがない場合には調教師会、馬主会の紹介を受けることもできる。地方競馬組織のいずれかで登録されれば、日本全国どこの地方競馬でも馬を持つことができる。
- 個人馬主
- 年間所得が500万円以上
- 法人馬主
- 法人代表者については年間所得が500万円以上、法人への出資金額が300万円以上。 定款の目的に競馬事業(競走馬の所有及び競走への出走等)が明記されていること。
- 組合馬主
- 組合員各々の年間所得が300万円以上、組合名義の定期預金が300万円以上、3名以上10名以下で民法第667条で規定された「組合契約」を組合員間で交わしていること
- これらの要件はあくまで目安で、これら以外の要件もある
[編集] 共有
2名以上20名以下で、個人馬主と法人馬主が混在してもよい。共有持分は1名5%以上で1%単位、最も高い比率を持つ馬主が共有代表馬主となる。
組合はそれ自体が共有であるため、組合員の中に個人馬主・法人馬主・他組合馬主の組合員を含めることができない。各組合員の共有持分は1名10%以上50%未満で1%単位、最も高い比率を持つ組合員が組合代表となる。
[編集] 勝負服
勝負服は騎手毎に設定されるため、馬主の勝負服は存在しない。
(ダートグレード競走やホッカイドウ競馬の一部競走を除く)
[編集] 馬主登録数
2005年末の時点で6578(個人6175、法人392、組合11)。
[編集] 海外競馬における馬主
[編集] 馬主の種類
- 個人所有
- パートナーシップ
- シンジケート
- リース
等々
[編集] 登録審査基準
海外競馬の馬主は、それぞれの国または州の競馬主催者を通して馬主申請を行う。審査基準はそれぞれの国で異なる。
[編集] 勝負服
勝負服は馬主毎に設定される。帽色も設定可能である。(日本では枠番によって帽色が決まっている。)
[編集] 名義貸し
馬主登録が完了していない者もしくは馬主登録を受けていない者が、馬主登録を受けている他人の名義で競走に出走させることを「名義貸し」という。競馬施行規程第11条第4号により禁止されており、事実が発覚した場合、名義を貸した馬主は登録の取消処分となる。また、預託調教師に対しても競馬主催者より調教停止や調教師免許取消等の処分となる。
- 「トロットサンダー事件」
- 競走馬トロットサンダーはもともと地方競馬所属馬で、地方競馬の馬主資格を持つ「有限会社有匡」が所有していた。地方競馬での活躍により中央競馬への移籍を目指していたが、「有限会社有匡」は中央競馬の馬主資格を持っていなかった。
- 本来ならば自ら中央競馬の資格を取得するか、オグリキャップのように中央競馬の馬主資格を持っている他の馬主に売却しなければならなかったが、中央競馬馬主資格を持っている「藤本照男」の名義を借り、中央競馬へ移籍した。
- 中央移籍後も実質的な所有権は「有限会社有匡」にあり、「名義貸し」の状態であった。後日、名義貸しの事実が発覚してしまい、馬主「藤本照男」は馬主登録取消、預託調教師「相川勝敏」は2ヶ月の調教停止処分が下された。