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鞍馬天狗 (小説) - Wikipedia

鞍馬天狗 (小説)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

文学
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鞍馬天狗』(くらまてんぐ)は、大佛次郎大正昭和期における時代小説、およびその主人公の名前。幕末期を舞台に「鞍馬天狗」を名乗る勤王志士の活躍を描いたもので、大衆小説の代表作である。

1924年(大正13年)の誕生以降、1965年(昭和40年)まで長編・短編併せて計47作が発表された。

何度も映画化され、特にアラカンこと嵐寛寿郎が主役の映画作品は有名であり、一般に思い浮かべられる鞍馬天狗像は嵐寛寿郎の演じたものの影響が強い。

本項では映画版、テレビドラマ版についても記述する。

目次

[編集] 舞台背景

幕末期を舞台にしており、生麦事件蛤御門の変といった歴史上の事件を背景としたものもある。作品同士の関連性は、初期を除けば明確なつながりは見えない(「ポケット」連載分は一連につながっている所がある。また『鞍馬天狗倒れず』は『天狗倒し』の続きとなっている)。

『角兵衛獅子』『天狗廻状』のように京都大坂が中心となるが、作品によっては江戸横浜の関東地方、果ては松前といった場所も舞台となる。また、戦後発表された作品には明治を舞台にしたものも見受けられる。

[編集] 人物としての鞍馬天狗

普段は倉田典膳(くらたでんぜん)と名乗るが本名ではない。また作品によっては館岡弥吉郎(たておかやきちろう)、海野雄吉(うんのゆうきち)とも名乗る。その容姿は、『角兵衛獅子』に「身長五尺五寸ぐらい。中肉にして白皙、鼻筋とおり、目もと清(すず)し。」という描写がある。宗十郎頭巾紋付着流し姿をしたイメージは、アラカン主演の映画における姿である。

日本の未来を思う討幕派の志士ではあるが、幕府側である勝海舟と繋がったり、新撰組近藤勇とも奇妙な交友関係をもつ(実際小説で近藤勇と一対一で対峙するのは『角兵衛獅子』1作のみ)。また、維新後は明治政府に対して否定的な部分を持つなど、権力の批判者であることを貫いている。

剣は一刀流の凄腕。時には短筒も使う。その素性は謎が多く、天狗党の生き残りではないかと言われたこともあるが定かではない。作者は鞍馬天狗の最後は『パリ燃ゆ』の舞台であるパリ・コミューンの市街戦で戦死させる構想を持っていたという。

[編集] 鞍馬天狗と関わる人物

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杉作(すぎさく)
鞍馬天狗を小父さんと慕う少年(実は、女の子)。
黒姫の吉兵衛(くろひめのきちべえ)
元盗賊で鞍馬天狗の右腕的存在。

[編集] 作品一覧

作品名 短・長編 掲載誌 掲載年
鬼面の老女 短編 ポケット 大正13(1924)年
銀煙管 短編 ポケット 大正13(1924)年
女郎蜘蛛 短編 ポケット 大正13(1924)年
女人地獄 短編 ポケット 大正13(1924)年
影法師 短編 ポケット 大正13(1924)年
刺青 短編 ポケット 大正13(1924)年
鬘下地 短編 ポケット 大正13(1924)年
香りの秘密 短編 ポケット 大正13(1924)年
御用盗異聞 長編 ポケット 大正14(1925)年
小鳥を飼う武士 長編 ポケット 大正15(1926)年
角兵衛獅子 長編 少年倶楽部 昭和2-3(1927-28)年
鞍馬天狗余燼 長編 週刊朝日 昭和2-3(1927-28)年
鞍馬天狗(剣俠閃光陣) 長編 文芸倶楽部 昭和3(1928)年
山岳党奇談 長編 少年倶楽部 昭和3-5(1928-30)年
青銅鬼 長編 少年倶楽部 昭和6(1931)年
天狗廻状 長編 報知新聞 昭和6-7(1931-32)年
地獄の門 長編 講談倶楽部 昭和9(1934)年
江戸頭巾 長編 新愛知新聞、福岡日日新聞等 昭和9-10(1934-35)年
宗十郎頭巾 短編 講談倶楽部 昭和10(1935)年
雪の雲母坂 短編 講談倶楽部 昭和10(1935)年
御存知鞍馬天狗 長編 オール読物 昭和11-12(1936-37)年
鞍馬天狗(幕末俠勇物語) 短編 少年倶楽部 昭和11(1936)年
江戸の夕映 短編 週刊朝日 昭和15(1940)年
薩摩の使者 短編 週刊朝日 昭和16(1941)年
西国道中記 短編 週刊朝日 昭和16(1941)年
天狗倒し 長編 週刊朝日 昭和18(1943)年
鞍馬の火祭り 長編 毎日新聞 昭和19(1944)年
鞍馬天狗破れず 長編 東奥日報、佐賀新聞等 昭和20(1945)年
新東京絵図 長編 苦楽 昭和22-23(1947-48)年
紅梅白梅 短編 少年クラブ 昭和25(1950)年
海道記 短編 オール読物 昭和26(1951)年
拾い上げた女 短編 オール読物 昭和26(1951)年
淀の川船 短編 オール読物 昭和26(1951)年
風とともに 短編 オール読物 昭和26(1951)年
一夜の出来事 短編 オール読物 昭和27(1952)年
青面夜叉 長編 サンデー毎日 昭和27-28(1952-53)年
雁のたより 長編 サンデー毎日 昭和28(1953)年
紅葉山荘 短編 オール読物 昭和29(1954)年
夕立の武士 長編 サンデー毎日 昭和29-30(1954-55)年
夜の客 長編 サンデー毎日 昭和30(1955)年
影の如く 長編 サンデー毎日 昭和30-31(1955-56)年
女郎蜘蛛 長編 サンデー毎日 昭和32(1957)年
深川物語 長編 家の光 昭和32-34(1957-59)年
天狗が出た 短編 日本経済新聞 昭和33(1958)年
黒い手形 長編 週刊明星 昭和33(1958)年
西海道中記 長編 週刊明星 昭和33-34(1958-59)年
地獄太平記 長編 河北新報 昭和40(1965)年
  • 短編と長編は福島行一の分け方による。

[編集] 映画版

鞍馬天狗の映画版は、1924年の実川延笑主演の『女人地獄』に始まり、1965年の市川雷蔵主演の『新 鞍馬天狗 五条坂の決闘』まで、延べ60本近く製作され、天狗は様々な俳優が演じてきた。特に原作からは『角兵衛獅子』、『天狗廻状』が多く映画化されている。

その内40本以上はアラカンこと嵐寛寿郎(当初は嵐長三郎名義)が演じており、アラカンの鞍馬天狗が最も有名である。

しかし、戦前撮られた『鞍馬天狗』には紛失・消失してしまい、現在では観られないものが多々ある。

[編集] アラカンと鞍馬天狗

マキノ入社直後、嵐はマキノ省三から「このなかからやりたい役を選べ」と少年倶楽部昭和2年(1927年)3月号を渡される。嵐は『角兵衛獅子』を読み、鞍馬天狗をやりたいと伝えたことにより、『鞍馬天狗余聞・角兵衛獅子』で映画デビューを果たす事となる。その後、嵐のはまり役として寛プロ・東亜キネマ・新興・日活・東宝・東映とまたに駆けて40本以上もの鞍馬天狗映画に出演した。嵐扮する鞍馬天狗が敵を次々と切り倒すその壮快なチャンバラ劇は長きに渡り大衆を魅了し続けた。

しかし、原作者である大佛はこれに不満を持っていた。1954年、大佛は著作権無視、原作を書き換えて題名だけ盗んでいる、映画の鞍馬天狗は人を斬りすぎて原作者の意向を無視している等との理由を挙げて非難し、嵐が演ずる鞍馬天狗の中止を要求。そして大佛は自ら「天狗ぷろだくしょん」を設立してプロデューサーとなり、同年より小堀明男の主演による『新鞍馬天狗』シリーズの製作を開始。この作品にはアラカンの鞍馬天狗なら5本は撮れると言われた程の資金が毎回投入されたと言われる。

しかし、原作者自ら手がけたこの小堀版鞍馬天狗は、小堀の天狗姿が常に嵐と比較されて酷評された上、近藤勇役に当時既に五十代で老け役も演じていた志村喬を起用するなど配役に無理があり、その上、ストーリーもクライマックスで天狗が戦わずに拳銃を構えるだけ構えて大儀を唱えて退散してしまうなど、大衆が好む時代劇の骨法や様式から完全に外れていた、ある意味で大佛の自己満足に近い代物であった。この様な作品が成功する道理は当然無く、興行面で不振を極め、「日本映画史に残る失敗作」「大佛が作家としての自身のキャリアに自ら疵を付けた」と評された程の無残な結果に終わった。結局、全10作を予定するも3作目『新鞍馬天狗 夕立の武士』を最後に打ち切りとなる。

その後、小堀主演作品の不入りに不満を持った映画館側からの要望を大佛が呑まされる形で、アラカンの鞍馬天狗が復活するも、経緯がゆえにもはや嵐自身も乗り気ではなく、僅か2作品で打ち止めとなった。

[編集] 歴代鞍馬天狗

[編集] テレビ版

ドラマ
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テレビドラマ
プロジェクト
テレビドラマ
  
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テレビでも幾度となく放映された。

[編集] 漫画版

[編集] 参考文献

  • 福島行一『大佛次郎 上巻』草想社
  • 川西政明『鞍馬天狗』岩波書店〈岩波新書〉
  • 小川和也『鞍馬天狗とは何者か-大佛次郎の戦中と戦後』藤原書店
  • 竹中労『鞍馬天狗のおじさんは-聞書アラカン一代』 筑摩書房〈ちくま文庫〉


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