萩原英雄

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萩原 英雄（はぎわら ひでお、1913年（大正2年）-、2007年（平成19年）11月4日）は日本の画家。油彩画、現代木版画などを描く。

[編集] 略歴

1913年（大正2年2月22日）、山梨県甲府市相生町（現在の甲府市宝）に生まれる。父は警察署長で文芸にも明るく、飯田蛇笏とも親交があった。1921年（大正10年）に父の転勤により朝鮮へ渡った後、1929年に単身で帰国して東京の日本大学第二中学校（現・日大二高）に編入する。この頃より油彩画をはじめる。

文化美術学院を経て、1933年（昭和8年）に東京美術学校（現・東京藝術大学美術学部）油絵科へ入学。東美時代は授業で木版画や銅版画とも接している。1938年（昭和13年）に卒業するが、この年には父が死去し、浮世絵の複製を手がけていた高見沢木版社に入社して主に図版の出版や職人のマネージメントに携わった。1943年（昭和18年）に召集されて陸軍東部第17部隊に属し、短期間で除隊。1945年（昭和20年）の東京大空襲で自宅のアトリエや蒐集品とともに初期の作品の多くが失われている。

戦後は生活のために勤めることはせず、極貧生活のなかで制作活動に励んだ。この時期の画風は美術学校で学んだアカデミックな雰囲気を持つ写実的なもので、1951年（昭和26年）には銀座の資生堂で油絵作品の個展を開催し、油彩画の他に銅版画も手がけていた。1953年（昭和28年）に肺結核に倒れて救世軍杉並療養所に入所し、3年間の療養生活を余儀なくされる。療養中には素描や水彩画を制作しているが、画題は風景や花など身近なものや身近な人物の肖像などが多くなり、色彩も原色傾向に移り抽象傾向に傾いていく。またキリスト教の影響も受けた作品も多い。

療養初年度に友人への年賀状を木版画で制作したことをきっかけに、木版画制作をはじめる。本来平面的な木版画に油絵の持つ色彩の深さを加えることを目標とし、空摺りなど伝統的な技法を守りつつも、板目木板を刀で彫るという基本的な木版画の技法を捨て、版木に建築資材の端材や朽木、ベニヤの木片などを用い、それらを鋸で切断し接着することで木目の方向を克服し、オブジェ的に版を構成し木版凹版を開発した。また高見澤出版社時代に接した浮世絵の技法を応用し、和紙を湿らせることで紙に含まれる滲み止め薬のドーサの働きを弱め、浸透性の高い染料を針金を巻いた独特なバレンで摺るこよによって裏側からも摺る「両面摺り」の技法を開発した。

このため、萩原の作品は偶然性による滲みの具合に左右され、一点一点が微妙に異なるモノグラフ（一点制作）の版画となっている。萩原は「幻想」シリーズや「石の花」シリーズにより抽象版画家としての地位を築き、1960年（昭和35年）には第二回東京国際版画ビエンナーレで「石の花」シリーズが神奈川県近代美術館賞、1962年にはルガノ国際版画ビエンナーレで「白の幻想」がグランプリを受賞した。1979年から1990年まで日本版画協会理事長を務める。1986年には野口賞を受賞。1988年にはノーベル文学賞を受賞した川端康成の記念品を製作する。

油彩や木版画のほか、ガラス絵、パステルやグワッシュ、コラージュなどあらゆる平面の表現媒体に取り組んでおり、墨彩画や書、陶芸も行っている。「三十六富士」「ギリシャ神話」「イソップ物語」など木版画のシリーズ作品もある。2000年（平成12年）、自らの作品と蒐集品と自らの作品を山梨県立美術館に寄贈している。2007年に死去、94歳。

[編集] 参考文献

• 向山富士雄「萩原英雄版画再考」『萩原英雄全仕事』
• 神野真吾「萩原英雄の藝術」『萩原英雄全仕事』