紙巻きタバコ
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紙巻きタバコ(かみまき-)とは、刻んだタバコの葉を紙で巻いてあるタバコのことである。シガレット(英:cigarette)とも呼ばれる。
パイプなどと違い他の喫煙器具を要せず、タバコ単体でそのまま喫煙可能なように加工されているため(着火装置は必要だが)広く普及しており、特に日本では単に「たばこ」と言えば紙巻きタバコを指すことが多い。
なお、タバコ全体に係る内容については、喫煙の項を参照されたい。
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[編集] 概要
形状は刻みタバコを紙で筒状に巻いたもので、銘柄にもよるが直径は約6mm、長さは6cmほど。一本あたり約0.7gの葉が使われる。ただし長さや太さには銘柄(製品)による差異がある。
葉を巻く紙は、タバコの葉をこぼさず包み、かつ喫煙時には中の葉へ燃焼に適度な酸素を与え、また葉と同じペースで燃える必要があるため、特別な紙が使用されている。具体的には、ライスペーパー(シガーペーパー)と呼ばれる燃焼速度・排煙量・臭気・紙色のコントロールに炭酸カルシウムを添加されたものが利用されている(ライスペーパーとは言っても、食用のライスペーパーとは関係がない)。
タバコ会社により、紙巻タバコ1本に含まれるニコチン量のコントロールが行われている。
現在では、吸い口の部分にニコチン、タールなどを吸収するフィルターがついたものが主流となっている。このフィルターには主にアセテート繊維が利用されており、日本たばこ産業の製品では日本フィルター工業が生産、活性炭を加えたチャコールフィルターがよく使われる。ただしフィルターは煙中のタールを吸着させることが主目的で、また完全にフィルターで吸収されるわけではない。
元来、紙巻きタバコは刻み煙草を紙で巻いただけの両切りと呼ばれる、フィルターの無いものしかなかったが、ロウ引きの吸い口付き(口付き)のものを経て、フィルター付きが一般的になった。両切りはピース (タバコ)など一部銘柄に残っているが、口付きは国内生産品では朝日 (タバコ)を最後に消えた。しかし別途プラスチックなどでできた吸い口も販売されており、これを接続する者もいる。日本国外の製品では、一部にこの吸い口を残すものも見受けられる。
紙巻きタバコは19世紀ごろに喫煙パイプや葉巻とは別の喫煙方法として発達していったが、後に工業化によって大量生産の手法が確立されると、その簡便さから一般的な喫煙方法としての地位を確立していった。当初こそ専用に発注して巻かせるなど手間のかかった喫煙方法ではあったが、今日ではこの大量生産によって主流となったこともあり、前述の通り一般において喫煙といえば、紙巻きタバコを消費する行為を指すまでになっている。
紙巻き煙草の税率が高いEU諸国では、あらかじめ長い煙草を作り、自分で切ってさや紙に詰める製品もある([ドイツのStax Trio Zigaretten]等)。また、刻みたばこ(いわゆるシャグタバコ)とシガレットペーパーを別々に購入し、自分で手巻きして喫煙する方法も一般的である。こういった国の街のタバコ屋では、一般に見られる20本詰めの紙巻きタバコパッケージのほか、刻みタバコとシガレットペーパーが併せて販売されているケースがほとんどである(日本でも多くの喫煙具専門店では同様のものが販売されている)。紙を巻くための専用の器具も存在し、ハンドルを回すことで紙巻きタバコの形になる。
[編集] 喫煙方法
一本あたりの平均的な燃焼時間は3–5分程度で、概ね半分から2/3程度吸ったら火を消して、吸殻として捨てる。
この場合、フィルター近くにタバコの葉が残るため、吸殻の残った部分を惜しんでギリギリまで吸う人もいる。また残った吸い殻の残った葉の部分に再度火を付けたり(いわゆる『シケモク』)、ほぐして紙に巻き直すか煙管を使い吸う方法もあるが、かつて日本が貧しかった時代はともかくとして、個々の事情を別にすると近年はあまり見られない。「一度吸った物をまた吸う行為」自体を忌避するのもさることながら、シケモクでは饐えたような香りがしてしまうことから、喫味が低下するためである。この辺は、再点火して喫煙する葉巻(2度目以降の点火だと葉が適度に湿り気を帯びて風味が良いとして好まれる)との違いになっている。
火のついた先端は非常に高温で800度近くにもなる。紙巻きタバコは火と灰が剥き出しに近いので、人混みの中で安易に扱うと喫煙者や周囲の人に火傷を負わせることになりかねないほか、可燃物に引火し火災を引き起こす可能性もあるので、燃焼しているタバコの扱いには注意を要する。また、喫煙に際して必ず灰と吸殻が生じるので、灰皿のある場所で吸うか、携帯灰皿を携行するのがマナーである。
[編集] パッケージ
日本では一般的に「ソフトタイプ」と「ボックスタイプ」の2つに分けられている。
[編集] その他
- 日本では欧米の外国ブランドの紙巻きタバコを、俗に「洋モク」と呼ぶ。ただ、一般に洋モクと呼ばれるものでも、キャメルなどの旧R.J.Reynolds製品など、日本たばこ産業で国内生産しているものもある。また、マールボロのように、かつて国内でライセンス生産されていた関係で、現在も日本向けに独自のブレンドを施しているものもある。
- かつてテレビドラマや映画等で、長い時間同じ場所で待っている(じっとしている)ことを表すために、地面に吸い殻が大量に足元に転がっている描写がよく使われた。しかし、喫煙マナー向上が叫ばれ、ゴミの投げ捨てを禁止する法律や条例が制定された国・地域があることもあり、現在ではあまり見られなくなった