社会人野球日本選手権大会
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社会人野球日本選手権大会(しゃかいじんやきゅうにっぽんせんしゅけんたいかい)は毎年11月後半に行われる社会人野球のトーナメント。元々産業別大会(後楽園球場で1973年まで実施)だったのを一新して設立された。
会場は関西圏の球場を転々としており、阪神甲子園球場、大阪球場、グリーンスタジアム神戸(現・スカイマーク・スタジアム)を経て1997年から大阪ドームに落ち着く。
2002年までは10月後半に行われていたが、2003年から実施時期がおよそ1ヶ月遅くなり、社会人野球のシーズンを締めくくる大会となった。一方でプロ野球のドラフト会議の実施後であったり、大会中にドラフト会議が実施されるなど、開催時期について疑問を呈する声もある。
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[編集] 特徴
- 都市対抗とは違って補強制度はなく単独チームの日本一決定戦として行われている。ただし、都市対抗は日本野球連盟に所属している全てのチームに門戸を開いているのに対し、日本選手権は都道府県連盟によってクラブチームによる1次予選を行わず、企業チームのみを県代表として地区2次予選に出場させているところもある。
- 優勝旗には巨大なダイヤモンドがモチーフのデザインが施されていることから、「ダイヤモンド旗」と呼ばれる(都市対抗野球の黒獅子旗参照)。
- 開幕試合の始球式には、決勝戦をテレビ放映するNHK大阪放送局が、毎年年度下半期に製作する連続テレビ小説の出演者を来賓ゲストとして招待している。2005年は『風のハルカ』から木南晴夏が、2006年は『芋たこなんきん』から瀬戸カトリーヌ、2007年は『ちりとてちん』から宮嶋麻衣がそれぞれ始球式を行った(かつては竹内結子、宮地真緒など主演者が行ったこともある)。
- 1991年から1997年には全日本大学野球選手権大会の優勝チームとともに全日本アマチュア野球王座決定戦(アマチュア野球の日本シリーズ)で、真のアマチュア日本一を争っていたが、現在は廃止された。
- 都市対抗同様、1・3塁側の客席最前列に応援団用の特設ステージが設えられる。
- 開・閉会式の入場行進曲は、同じ毎日新聞社主催の関連からか同年度のセンバツ高校野球のそれと全く同じ曲が用いられる。また、開会式の優勝旗返還及び閉会式の優勝旗授与の際の演奏曲も、センバツ同様「栄光」(永野慶作作曲のオリジナル曲)が演奏される(但し、どちらもブラスバンドによる生演奏ではなくテープによる録音)。
[編集] 「日本選手権改革」
日本選手権はその名のとおり、その年の社会人ナンバーワンチームを決める至高の大会である。しかし、社会人野球界においては歴史と伝統のある都市対抗野球の人気が相対的に高く、日本選手権が軽んじられる風潮にある。日本において「日本選手権」があるにもかかわらず他の大会の方が人気が高いというスポーツジャンルは珍しい。
そこで日本野球連盟は、2006年8月24日に開かれた臨時理事会において、日本選手権の地位向上を目指すため、日本選手権を「年間王座決定戦」と位置づけ、2007年の第34回大会から実施に移すための改革を実行に移すことを決定した。その具体的内容は、
- 現行26チームの出場チームを32チームに増やす。これで大会期間を9日間から11日間に拡大
- 都市対抗野球と全日本クラブ野球選手権大会の優勝チームに日本選手権の出場権を付与する(この点については2006年から実行に移す)。
- 地区連盟主催大会のうち、次項目に紹介した各大会(2007年度は9大会+上述2大会を含め11大会)を制したチームに日本選手権の出場権を付与する。
- 残りの21枠をめぐり、各地区で予選を行い、予選を勝ち上がったチームに出場権を付与する。その内訳は、北海道1、東北1、北信越1、関東4、東海3、近畿6、中国2、四国1、九州2。
- 2及び3で同一チームが複数大会で優勝した場合、そのチームが所属する地区の出場枠をその分増やす。
[編集] 日本選手権出場決定の対象となるトーナメント
- 2007年度の開催順に並べた。
- JABA東京スポニチ大会
- JABA静岡大会
- JABA四国大会
- JABA岡山大会
- JABA長野県知事旗争奪野球大会
- JABA京都大会
- JABA九州大会
- JABA東北大会
- JABA北海道大会
- 都市対抗野球大会
- 全日本クラブ野球選手権大会
しかし、主催の毎日新聞社そのものが日本選手権よりも都市対抗野球に力を入れて報道している現状や、それに伴い企業チームは日本選手権よりも都市対抗野球の方が企業名の露出が高いと考えていることからすると、出場チームの内容を変えるのみで日本選手権の地位向上が果たせるのか疑問を呈する声もある。また、上記2に掲げられた大会のうち長野県知事旗争奪大会以外は以前「日本野球連盟公認大会」とされていた大会であったが、2002年から日本野球連盟は地区連盟主催大会における「公認大会」と「準公認大会」の区分を廃止しているにもかかわらず、これらの大会の優勝チームを優遇することで、事実上「公認大会」制度が復活しているのではないかとの指摘もある。
[編集] 1日に割り当てる試合数
- 1・2回戦は各開催日とも1日3試合。準々決勝は1日4試合をまとめて開催する。
- 試合開始時間(2007年)
- 4試合日(準々決勝のみ) 第1試合9時、第2試合12時、第3試合15時、第4試合18時
- 3試合日 第1試合10時30分、第2試合13時30分、第3試合16時30分
- 2試合日(準決勝のみ) 第1試合12時、第2試合15時
- 1試合日(決勝のみ) 13時
- 前の試合が延長戦などにより長引いた場合は遅延することがあるが、早く終了した場合の試合開始の繰り上げは行わない。
[編集] 歴代優勝チームと開催球場
- 第1回(1974年) 三協精機;阪神甲子園球場
- 第2回(1975年) 鐘淵化学;阪神甲子園球場
- 第3回(1976年) 新日鉄名古屋;阪神甲子園球場
- 第4回(1977年) 住友金属;阪神甲子園球場
- 第5回(1978年) 北海道拓殖銀行;阪神甲子園球場
- 第6回(1979年) 住友金属;阪神甲子園球場
- 第7回(1980年) 日本鋼管福山;大阪球場
- 第8回(1981年) 富士重工業;大阪球場
- 第9回(1982年) ヤマハ発動機;大阪球場
- 第10回(1983年) 住友金属;大阪球場
- 第11回(1984年) 住友金属;大阪球場
- 第12回(1985年) 本田技研;大阪球場
- 第13回(1986年) NTT東海;大阪球場
- 第14回(1987年) 中山製鋼;大阪球場
- 第15回(1988年) 東芝;大阪球場
- 第16回(1989年) 住友金属;大阪球場
- 第17回(1990年) 日本生命;グリーンスタジアム神戸
- 第18回(1991年) 日本石油;グリーンスタジアム神戸
- 第19回(1992年) 東芝;グリーンスタジアム神戸
- 第20回(1993年) 住友金属;グリーンスタジアム神戸
- 第21回(1994年) 日本通運;グリーンスタジアム神戸
- 第22回(1995年) 三菱自動車川崎;グリーンスタジアム神戸
- 第23回(1996年) 住友金属;グリーンスタジアム神戸
- 第24回(1997年) 三菱重工神戸;大阪ドーム
- 第25回(1998年) NTT関東;大阪ドーム
- 第26回(1999年) シダックス;大阪ドーム
- 第27回(2000年) 松下電器;大阪ドーム
- 第28回(2001年) 三菱重工長崎;大阪ドーム
- 第29回(2002年) 日本生命;大阪ドーム
- 第30回(2003年) 日産自動車;大阪ドーム
- 第31回(2004年) JFE西日本;大阪ドーム
- 第32回(2005年) 松下電器;大阪ドーム
- 第33回(2006年) 富士重工業;京セラドーム大阪
- 第34回(2007年) トヨタ自動車;京セラドーム大阪
[編集] 歴代最優秀選手
- 第1回(1974年) 大塚貴代美投手(三協精機)
- 第2回(1975年) 宮田典計投手(鐘淵化学)
- 第3回(1976年) 水谷啓昭投手(新日鉄名古屋)
- 第4回(1977年) 森繁和投手(住友金属)
- 第5回(1978年) 高岡茂夫内野手(北海道拓殖銀行)
- 第6回(1979年) 高橋修二投手(住友金属)
- 第7回(1980年) 田村忠義投手(日本鋼管福山)
- 第8回(1981年) 向田佳元投手(富士重工業)
- 第9回(1982年) 鈴木政明投手(ヤマハ発動機)
- 第10回(1983年) 高橋修二投手(住友金属)
- 第11回(1984年) 高橋修二投手(住友金属)
- 第12回(1985年) 伊東昭光投手(本田技研)
- 第13回(1986年) 笠井孝志登投手(NTT東海)
- 第14回(1987年) 藤野悦勝投手(中山製鋼)
- 第15回(1988年) 南渕時高内野手(東芝)
- 第16回(1989年) 尾山敦投手(住友金属)
- 第17回(1990年) 新谷博投手(日本生命)
- 第18回(1991年) 鈴木健投手(日本石油)
- 第19回(1992年) 三原昇投手(東芝)
- 第20回(1993年) 尾山敦投手(住友金属)
- 第21回(1994年) 松田訓内野手(日本通運)
- 第22回(1995年) 玉木重雄投手(三菱自動車川崎)
- 第23回(1996年) 宮内洋内野手(住友金属)
- 第24回(1997年) 新井正広投手(三菱重工神戸)
- 第25回(1998年) 阿久根鋼吉内野手(NTT関東)
- 第26回(1999年) 田中善則内野手(シダックス)
- 第27回(2000年) 愛敬尚史投手(松下電器)
- 第28回(2001年) 後藤隆之投手(三菱重工長崎)
- 第29回(2002年) 佐藤充投手(日本生命)
- 第30回(2003年) 伊藤祐樹内野手(日産自動車)
- 第31回(2004年) 田中敬人投手(JFE西日本)
- 第32回(2005年) 山本隆之投手(松下電器)
- 第33回(2006年) 阿部次男コーチ兼投手(富士重工業)
- 第34回(2007年) 服部泰卓投手(トヨタ自動車)
[編集] 特別ルール
- タイブレーク制度 以前は都市対抗野球大会とともにサスペンデッドゲーム(試合開始から4時間以上経過した場合、その日の最終戦終了後に続行試合を行う)を取り入れていたが、応援団や選手の再招集が困難であることなどから2003年以後、延長13回以後でなおかつ4時間以上経過した場合に限ってタイブレーク(前イニングの最後の打者から数えて3人がランナーとなって、1アウト満塁の段階から再開)を取り入れることとなった。どちらか一方の場合(延長13回を超えても4時間を満たなかったり、その逆で4時間を越えても延長12回まで消化していない場合)は通常ルールである。
- 現在ではこのルールが適用されたのが1試合だけ。2004年31回大会の1回戦でJR西日本硬式野球部3-1七十七銀行硬式野球部が延長15回まで行われた試合で初採用となった。
[編集] 放送での中継
- NHK教育テレビジョンで決勝戦の模様を生中継(編成の都合上録画放送となる場合あり)で放送している。現在では社会人野球の公式戦が全国ネットの地上波放送でオンエアされる唯一の試合である。
- GAORAでは準々決勝以後を生中継している。実況は城野昭、水谷勝海(GAORA専属)をはじめ、毎日放送アナウンサーが出演