砲兵
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砲兵(ほうへい、英:artillery)とは、戦闘において大砲・ミサイルなど用いて戦闘支援を行う兵科の一種である。自衛隊用語では特科という。
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[編集] 概要
砲兵が行う砲撃は戦闘において非常に大きな威力を持っており、敵のあらゆる戦闘力を破壊することができる。しかも前線から少なくとも数キロメートルの距離をおいた場所から射撃を行うことができるため、直接的な反撃を受ける危険性は低い。装備する兵器は榴弾砲やロケット砲、ミサイルなど、比較的長い射程を持つもので、これらは購入・整備にかかる費用が非常に高いため、優秀な砲兵部隊を保有しているのは主に先進国に限られている。
[編集] 歴史
登場以来、野戦において重要な役割を果たしてきた。特に三十年戦争、ナポレオン戦争では、カノン砲や榴弾砲を持つ砲兵の有無、数、配備位置が勝敗を決した。さらに、攻城戦においても大口径の曲射砲が無くては外壁を打ち崩せなかった。
[編集] 組織
伝統的には野砲兵・山砲兵・野戦重砲兵などに分かれていたが、現代では基本的に対地攻撃を行う野戦砲兵と、対空攻撃を行う防空砲兵に分かれる。
陸上自衛隊では砲兵を特科としていて、野戦砲兵を野戦特科と、防空砲兵を高射特科と呼んでいる。 砲兵部隊は一般的に大隊を基本にして編成されている。一個大隊には同一種・同一口径の火砲が12門から24門配備されて運用される。一個大隊は主に三個中隊で編成されており、火砲は三分されており、それとは別に射撃・通信などの情報を一元的に統制する本部が置かれる。国によっては補給・整備・雑務などを担当する第五の中隊が編成される場合もある。18門を保有する一個大隊が保有する射撃要員はおおむね200名弱、弾薬の補給要員に約100名、その他の支援部隊は100名から200名で構成される。 砲兵大隊はしばしば師団・旅団に所属するが、軍団や方面軍に直接所属していることもある。一個の上級部隊に5個の砲兵大隊が属している場合、そのうち3個砲兵大隊は標準的な口径(現代においては155ミリ前後)の火砲を装備している部隊で編成されるが、それ以外の2個砲兵大隊は地対地ロケット弾やより大口径の火砲を装備していることが多い。 ただし、砲兵部隊の編成については国の用兵思想によって大きく異なるため、一概には言えない。
[編集] 任務
砲兵の任務とは、間接照準射撃を以って遥か後方から最前線の戦闘部隊を掩護することである。但し、近年においては、砲の長射程化とロケット・ミサイル等の発達もあいまって、砲兵と砲兵の火力戦闘、いわゆる対砲兵戦が前線の近接戦闘部隊の援護に先だって行われるようになっている。対砲兵戦に勝利して火力が優位になった側が勝算を得るというわけである。このため、偵察用の航空機や対砲迫レーダなどを活用して敵の砲兵位置を敵より早く知ること、そして、その情報を素早く伝達し分析して砲撃につなげる情報戦が鍵を握る傾向がある。このため、コンピュータと通信の活用いわゆるIT化が進められている。 砲兵部隊の砲撃は綿密な射撃計画に基づいた「計画射撃」を行うことが多いが、最前線の部隊からの射撃要請によって開始する「要請射撃」、また砲兵部隊の観測者が直接部隊に目標を指定して行う「臨機目標射撃」もある。その射撃の方法には大きく分けて弾幕射撃と集中射撃がある。
弾幕射撃とは特定の地点を狙うのではなく、敵のあらゆる行動を妨害、無力化することを目的とし、戦線に対して横一列に並んだ砲撃を加える射撃である。この弾幕射撃を戦闘部隊の前進と速度を合わせて前方に狙いを変えていけば、前進弾幕を行うことができる。前進弾幕を的確に行えば前進する部隊は敵の反撃を受けることなく前進することが可能である。集中射撃は特定の目標に対する射撃であり、一点に砲撃が集中される。
[編集] 装備
ここでは、陸上自衛隊の装備について解説する。
- 野戦特科
- 155mmりゅう弾砲 FH70
- 74式自走105mmりゅう弾砲(退役済み)
- 75式自走155mmりゅう弾砲
- 99式自走155mmりゅう弾砲
- 203mm自走りゅう弾砲
- 多連装ロケットシステム(MLRS)
- 88式地対艦誘導弾(SSM-1)
- 高射特科
- ホーク
- 35mm2連装高射機関砲_L-90
- 81式短距離地対空誘導弾(SAM-1)
- 87式自走高射機関砲
- 03式中距離地対空誘導弾(中SAM,SAM-4)
[編集] 関連項目
陸上自衛隊の職種 | |
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