浮きこぼれ
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浮きこぼれ(うきこぼれ)とは学校用語である。一般的には、通塾などによって高い学力を身に付けた生徒や、もともと学習意欲が高い生徒が、通常の学校の授業内容に物足りなさや疎外感を感じたり、実際に他の生徒から疎外されたりすること。吹きこぼれとも言う。学業不振の生徒を「落ちこぼれ」というが、それの対義語として使われる。
なお「落ちこぼれ」という用語は、学校に責任はなく、本人に責任がある感じがするので、学校の教育が原因ということを明らかにするために「落ちこぼし」ということもある。
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[編集] 浮きこぼれの原因と結果
学習指導要領の内容の削減による教育内容の簡素化、早期教育を含む通塾による先取り学習、生徒の能力に一致しない授業などが主な原因とされる。授業がつまらなく感じるために学級崩壊や不登校の原因になることもある。またいじめの加害・被害の遠因となる場合もある。学習塾の高度な内容に適合したために浮きこぼれた生徒は、学校の授業よりも塾の授業が楽しくなり、それが一層学校離れを進める。
首都圏などの中学受験の盛んな地域では、受験を目指して進学塾に通う生徒と、そうでない生徒の意識や学力のずれが、新たな問題として浮上している。
[編集] 対策
米国などの諸外国では飛び級や、マグネットスクール[1](磁石のように生徒をひきつけるところから)という、生徒の才能を伸ばすための学校などの、早期教育・ギフテッド教育の諸制度があるため、浮きこぼれが大きな問題になることはあまりない。
日本ではそういった制度がほとんどなく、高度・個別的なカリキュラムの国立・私立の小中学校に入学することくらいしか対策がない。ただ、公立学校であっても習熟度別教育を実施している場合や、教師の力量が高い場合は対応できる場合もある。なお高校以上の場合は、総合選抜などの場合を除いて、高校受験・大学受験時に学力が高い生徒は入学が難しい学校に、学力が低い生徒は入学が易しい学校に行くという、入学生徒が学力で「輪切り」となっている実態があるため、浮きこぼれ・落ちこぼれともにはあまり生じないとされる。しかしながら、高校に入ってから性格や人生観が変わり猛勉強をする者がいないとは限らず、一定数の浮きこぼれは避けられないのが現状である。また、高校受験においては設定できる併願校の数が日程の都合により限られており、必然的に受験者の学力よりも低い高校が併願校として選ばれる。したがって、志望校に入学できなかった者は授業に不満を抱くことになる。この他に、地方における高校の分布は、学力的に平均的、あるいは平均より劣る高校に混じって少数の名門校が存在するという場合が多く、名門校の志望者が受験に失敗した場合はやはり浮きこぼれになりやすいという指摘もある。
[編集] 補足
- ^ ただし、マグネットスクールは英才教育というよりは、地域の優秀な子ども達に適切な教育を与えるために存在する特殊クラスというように捉えた方が良い。例えば、大学の取得単位を高校在学時に取得可能にするといった優遇措置が採られている。但し、これはアメリカにおける大学生の取得単位が国家レベルで標準化されているために可能である点を付け加えておく。
また、アメリカの公立教育では所謂エリート校はなく、その地域の学校にマグネットのような特殊コースを設けている。