死者の書
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『死者の書』(ししゃのしょ)と呼ばれる宗教的な書には、古代エジプトのものと、チベットのものがある。
- 死者の書(英語綴りBook of the Dead)は古代エジプトで死者とともに埋葬されたパピルスの巻き物。死者の霊魂が肉体を離れてから冥府の国に入るまでの過程を描いたもので、コフィンテキストとしても存在する。心臓を天秤にかける死者の裁判の章は有名である。秤の目盛りを見つめるのはアヌビス神。また、秤には真実の羽根と死者の魂がそれぞれ乗っており、死者が真実を語ればオシリスの治める死後の国へ、嘘偽りであればアメミットという魂を食らう鰐に似た怪物に食べられるというシーンも描かれている。あの世とこの世の中間を「ドゥアト」と呼ぶ。おもに、絵とヒエログリフという神聖文字で構成されている。
- 『チベットの死者の書』はチベット仏教の教典。ウォルター・エヴァンス=ヴェンツ(en:Walter Evans-Wentz)により英訳され、近年各種のメディアを通して、日本でも広く知られているものは、特にチベット仏教ニンマ派の『バルドゥ・トェ・ドル』(en:Bardo Thodol)である。ただしチベットでは、多数派を占めるチベット仏教ゲルク派の『クスムナムシャ』が一般的である。『バルドゥ・トェ・ドル』は臨終に際してラマ僧によって読まれるが、『クスムナムシャ』は死んでから聞かせても意味が無く生きているうちに学ぶべきとされる。前者はニンマ派の宗祖パドマサンバヴァが著し弟子が山中に埋め、後代にパドマサンバヴァの五代目の転生者によって発掘されたテルマ(en:Terma)と伝えられる。後者は18世紀のラマ僧ヤンチェン・ガロが無上瑜伽タントラの「死」「中有(バルド、バルドゥ)」「生」に関する内容を簡略にまとめた著作であり、両者ともインドの初期仏教に由来するものではなく、チベットで成立した、特有の教典であるとされる。参考:チベット仏教哲学の意義。
- 『死者の書』は、釈迢空による小説で、古代エジプトにおける死者の書を古代日本に舞台を置き換えて話を展開している。
- 川本喜八郎の人形アニメーション。
- 寺山修司が1974年に出版した評論集のタイトル。
- 3をもとにした野田暉行の無伴奏混声合唱曲。
- ジョナサン・キャロルが1980年に発表した小説(The Land of Laughs)の日本語版タイトル(東京創元社。浅羽莢子訳)。