検疫
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検疫(けんえき)とは、港湾や空港にて、海外から持ち込まれた、もしくは海外へ持ち出す動物・植物・食品などが、病原体や有害物質に汚染されていないかどうかを確認すること。
またこれに例えて、コンピュータウイルス対策ソフトでシステムがウイルスに感染していないか、不正に侵入された形跡はないか確認することも「検疫」と呼ぶことがある。
検疫(けんえき)とは、特定の国や施設に出入りする人、輸出入される動物や植物及び食品等を一定期間隔離した状況に置いて、伝染病の病原体などに汚染されているか否かを確認することである。英語のQuarantineは、イタリア語を語源としており、その意味は40日間である。これは中世に感染者がいないことを確認し、疫病を予防するために、入港を許可する前に港外に40日間、疑わしい船を停泊させるという法律があったためである。また、近年では外来種を水際で防止するために必要な対策となっている。日本における人や食品の検疫は厚生労働省が、動植物の検疫は農林水産省が担当しており、全国の主要な空港・海港に設置された検疫所にて行なわれている。尚、日本では植物の検疫を防疫(ぼうえき、「植物防疫」とも)という。
様々な検疫が各国で行われており、例えば21世紀までイギリスでは狂犬病を予防するために全ての犬を含むほとんどの動物を6ヶ月間拘留するという法律が施行されていた。現在では、正しく予防接種が行われているという証明書を提出することで拘留を免れることができる。
検疫、特にその後の長期間の隔離は、その有効性や必然性が疑問視される場合には人権問題になることがある。
その他、野菜や果物など農作物については、国内に生息しない害虫を持ち込む可能性のあるものについては品目を特定して持ち込みを許さない場合もある。たとえば日本では南西諸島にアリモドキゾウムシがおり、これはサツマイモの大害虫として警戒されている。そのため、この地域から日本本土への未消毒のサツマイモ類の持ち込みは禁止されている。野生植物のグンバイヒルガオもその宿主になるため同様である。また、柑橘類などは検査を受けなければ持ち込みが出来ない。
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[編集] 生物多様性に関連して
検疫は元来は上記のように病原体や害虫などの有害生物の侵入を防ぐ意味を持つものであった。しかし、近年では、生物多様性の観点からの検疫も行われる。典型的な例はオーストラリアで、雑草の種子が含まれている可能性のある品目など、国外から生きて動植物が入ることを厳しく制限している。これは、オーストラリアの生物相が世界の多の地域に比べて特異であり、これまでに国内に持ち込まれた他地域の生物が大被害を与えた例が多々あることと共に、国内の特異な生物相を保護することを目ざしての措置である。
なお、検疫とは異なるがガラパゴス諸島ではさらに厳格な措置がもうけられ、島に立ち入る際には足を洗わなければならない。
[編集] 競走馬
日本馬が海外のレースに出走する場合は、検疫厩舎で出国検疫を受けなければならない。期間は通常7日間である。帰国時にも検疫を受ける必要がある。その場合はJRA競馬学校で検疫が行われることが多い。競馬場で行われる場合もある。
外国馬が日本のレースに出走する場合も同様である。
[編集] 日本における検疫
検疫の対象になる、検疫感染症は感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 )に規定する一類感染症 で具体的には、エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱であり、隔離処分の対象となる。
さらに、政令でインフルエンザ(H5N1)、デング熱、マラリアがさらに指定されており、検疫法に基づく隔離、停留処分以外の対象となる。
なお、出入国管理及び難民認定法により感染症予防法の一類感染症、二類感染症、指定感染症又は新感染症の所見がある外国人(特別永住者を除く)は日本に上陸できない。
- 二類感染症-急性灰白髄炎、結核、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(病原体がコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る。)
- 指定感染症-インフルエンザ(H5N1)