最高存在の祭典
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最高存在の祭典(さいこうそんざいのさいてん)は、フランス革命期、マクシミリアン・ロベスピエールの独裁政権下のフランス共和国で1794年5月7日の法令に基づいて6月8日にテュイルリー宮殿で行われた宗教祭典。
[編集] 背景
フランス革命が絶頂に達しロベスピエールの独裁が確立した時期で、恐怖政治がフランス全土を覆っていた。彼は人間の理性を絶対視し、キリスト教を迫害しカトリック教会制度を破壊した。同時に恐怖政治は美徳に基づくべきという理想を持っており、キリスト教に代わる道徳を求めていた。また国内は不安定さを増し革命政府は祖国愛に訴えて革命の危機を乗り越える必要があった。
これらの事情からキリスト教に代わる理性崇拝のための祭典を開く必要に迫られていた。ロベスピエールは、「もし神が存在しないなら、それを発明する必要がある」と語ったという。キリスト教の神に代わるもの、それが「最高存在」である。
この祭典の思想的背景としては、ルソーの「市民宗教」の主張がある。
[編集] 儀式
朝8時、ポン・ヌフの大砲を号令として鳴り響き、人々の参集を求めた。テュイルリー宮の正面に向かって、樫の枝を持った男と薔薇の花を抱いた女たちの行列が進む。ロベスピエールが「最高存在」に敬意を表し、「明日から、なお悪行と専制者と戦う」ことを誓った。その後シャン・ド・マルスまで行進し、そこで無神論をかたどった像に火を放ち祭典は終了した。演出は画家のジャック=ルイ・ダヴィッドによってなされた。
なお、この祭典のメインイベントは二百人もの人間の首を落とすギロチンであった。