序曲
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序曲(じょきょく)は本来フランス語ouvertureの訳語で、歌劇や劇付随音楽、古典組曲などの最初に演奏される音楽である。
- 仏:ouverture (ウヴェルテュール)
- 英:overture (オーヴァーチュア)
- 独:Ouvertüre (ウヴェアテューレ)
- 露:увертюра(ウヴェルテューラ)
オペラや劇付随音楽などの劇音楽の序曲と、組曲などの序曲では多少性格を異にするが、前座の音楽という位置づけではなく、全体の開始にふさわしい規模と内容を持つのが一般的である。
目次 |
[編集] 性格
[編集] 劇音楽の序曲
もともと、劇音楽の序曲は、聴衆がまだざわめいている中で、聴衆の注意を引く目的を持って演奏されるのが常であった。おおむね劇全体の性格や粗筋を予告するように作曲された。歌劇など声楽を伴う劇音楽でも、序曲は器楽(オーケストラ)のみで演奏され、従って器楽の形式で構成される。バロック期には後述のフランス風序曲形式、古典派期以降ソナタ形式が確立してからは、ソナタ形式またはその簡略な形式である序曲形式で書かれるのが普通である。こうして、序曲は交響曲の第一楽章同等の楽式と物語性とを兼ね備えるようになる。
[編集] 組曲の序曲
古典組曲の各楽曲は舞曲を中心に構成されるが、第一曲は舞曲形式ではなく、自由な形式による前奏曲(プレリュード)や、後述するフランス風序曲の形式で作曲されることがあった。フランス風序曲付きの組曲は、本来組曲全体が「序曲」(Ouverture)と名付けられていた。
J.S.バッハの管弦楽組曲、クラヴィーア練習曲集第2巻の「フランス風序曲ロ短調」などがその代表的な作例である。
[編集] フランス風序曲
16世紀後半からフランスで起こったバレエやフランスオペラにおいて用いられ、リュリによって一典型とされた形式がバロック期のドイツを中心に流行し、フランス風序曲と言われた。
これは、緩やかなテンポの2拍子系でしばしば付点リズムを付けて奏されるグラーヴェ(Grave)と、速いテンポの3拍子系または2拍子系でフーガ形式をとるヴィヴァーチェ(Vivace)という、緩・急の2部分により構成される形式である。グラーヴェ部分を2回リピートしたのちヴィヴァーチェという形式が基本で、より本格的な形式では、その後冒頭のグラーヴェを再現的に変奏した第2グラーヴェが来て締めくくる三部形式となり、またさらにその後ヴィヴァーチェ→第2グラーヴェと繰り返す場合もある(ヴィヴァーチェと第2グラーヴェを繰り返すか否かは、ある程度演奏者の選択に任されるため、同一曲でも場合によって異なる演奏がなされる場合がある)。
- 模式図 [G-G-V] [G1-G1-V-G2] [G1-G1-V-G2-V-G2] (G=Grave/V=Vivace)
特にグラーヴェ部分は、付点リズムを付けたり上昇・下降の音形を繰り返す、メリハリのある荘重な雰囲気を持った独特の形式が特徴的であり、これがフランス風序曲形式の最大の特色である。J.S.バッハのフーガの技法には、"Stylo Francese"(フランス様式)と題して、フランス風序曲のグラーヴェ部分の形式のみで展開される曲もある。
当時は"Ouverture"といえばすなわちこの形式を指し、イタリア式オペラやオラトリオ、古典組曲などにおける、それ以外の形式を取る前奏曲の類は、プレリュードまたはシンフォニアと呼ばれ区別された(もっとも、ヘンデルのオラトリオ「メサイア」の冒頭合奏は、典型的なフランス風序曲形式でありながら「シンフォニア」と名付けられているように、必ずしも一定ではない)。
バロック期後半には前述の古典組曲の他にも、チェンバロやオルガンなどの器楽曲、オラトリオ・カンタータ等の声楽曲などに広くこのような形式が用いられた。
なお、のちにはモーツァルトのレクイエムの冒頭(入祭誦とキリエ)が、この形式を意識して作られたと言われる。
[編集] 演奏用への変化
ベートーヴェン以降、歌劇や劇付随音楽の序曲では、劇全体の粗筋や雰囲気をまとめてあらかじめ伝えるように作られた。このことからストーリー性を持ち、のちに交響詩などの標題音楽に発展していく。また、序曲だけが演奏会で独立して演奏されるようになり、このことから序曲だけを演奏会用序曲として作曲することが起こった。
一方、それより以前に、17世紀イタリアで歌劇の序曲として用いられたシンフォニアが、交響曲へと発展した。
また遡れば、前述のようにフランス風序曲を中心にした管弦楽組曲(バッハの作品に代表される)は、フランスオペラに由来する序曲や舞曲が劇音楽から独立して演奏用の管弦楽曲へと変化したジャンルともいえる。
[編集] 前奏曲へ
また、歌劇の序曲については、ロマン派中期より、劇が始まる前に冗長で、劇の開始自体とは関係のない種明かし的な序曲が演奏される事に対し、もっと短く、種明かしがなく、劇の開始と一体化した曲が作曲されるようになった。これは前奏曲(プレリュード)と名付けられた。
[編集] 現在
現在では、序曲はもっぱら演奏用にしか作曲されていない。組曲などでは本来の目的で使われている。