フランス式序曲
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フランス式序曲(またはフランス風序曲)とは、バロック音楽で幅広く用いられた音楽形式を指す。3部形式で構成され、緩やかな(しばしば複付点リズムが特徴的な)第1部、フーガ(ないしはフーガ的書法)に発展する急速な中間部、第1部の再現部(ないしは最初のテンポによる第3部)という順序で楽想が配置される。
フランス式序曲の発展の歴史においては、バロック時代のフランスの作曲家ジャン=バティスト・リュリの重要性が認められている。リュリはしばしばフランス風序曲を抒情悲劇(仏語:tragédies en musique)の開始に用いた。したがってフランス式序曲は、本来は管弦楽曲であり、後には意味が転じて、フランス式序曲に始まる管弦楽組曲をも含めるようになった。後者の例として名高いものに、バッハの《管弦楽組曲》やヘンデルの《王宮の花火の音楽》が挙げられる。またヘンデルは、さまざまなオラトリオの開始にフランス風序曲を利用した。
なおバッハは、独奏用の作品にもフランス式序曲を用いており、チェンバロのための《フランス様式による序曲》や《パルティータ》、パイプオルガンのための《前奏曲 変ホ長調「聖アン」》BWV 532-1(いずれも『クラヴィーア練習曲集』に含まれる)のほか、《無伴奏リュート組曲 第3番》BWV995といった作品がある。また変わったところでは、《ゴルトベルク変奏曲》の後半部分の開始に微小なフランス式序曲を用いたという例がある。
フランス式序曲では、壮麗な効果を狙ってトランペットやティンパニを管弦楽配置に加えており、王族や貴族が宮廷オーケストラを雇った時代にすこぶる適した音楽形式であったといえる。
フランス式序曲を、「急-緩-急」構成のイタリア式序曲と混同してはならない。