山手トンネル
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山手トンネル(やまてトンネル)は、首都高速道路中央環状新宿線の高松入口と大橋JCTの間にある道路トンネル。延長約11kmで、そのうちの高松と西新宿JCTの間は2007年12月22日に開通した。 なお、山手トンネルの南端から延長する格好で、中央環状品川線のトンネルが建設中である。このトンネルの名称は未定であるが、事実上山手トンネルと一体となる一連のトンネルであることから、本稿ではこのトンネルについても触れる。
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[編集] 概要
首都高速道路中央環状線のうち、高松入口と大橋JCTの間に位置し、ほぼ全区間山手通りの地下を通る。そのうち本トンネルの高松-西新宿間を含む熊野町JCT-西新宿JCT間が2007年12月22日に開通。地表から約30mの深さにあり、約7割の区間がシールド工法で建設されている。内回り・外回り各2車線。大橋JCT以南の、中央環状品川線と呼ばれる区間のトンネル名称は未定だが、山手トンネルと地下で直接接続するため、事実上山手トンネルの延伸と言える。大井JCTまでの全線開通時には関越自動車道の関越トンネルを凌ぎ、日本最長の道路トンネルとなる予定である。
最終的に長大トンネルとなるため、危険物積載車両の通行は禁止されている。
[編集] 歴史
- 1992年 - 着工
- 2007年12月1日 - BSデジタル放送局、BS11デジタルの開局記念特番『未来へのトンネル』の会場として使用される。
- 2007年12月22日 - 熊野町JCT-西新宿JCT間開通。
- 2009年度 - 西新宿JCT-大橋JCT間開通予定。
- 2013年度 - 大橋JCT-大井JCT間開通予定。
[編集] 設備
地底深くを通る長大トンネルであるため、下記のような防災・環境設備が設けられている。
- 管制関係
- 路側帯側に100m間隔で非常電話が設置され、管制室と連絡を取ることが出来る。また、100m間隔でカメラが設置され、管制室で常時トンネル内の状況を把握している。
- 消火設備
- 消火用の水噴霧器と、赤外線センサーを使用した自動火災検知機が25m間隔で設置されている。また、消火器・泡消火栓と押ボタン式火災報知器が、路側帯側に50m間隔で設置されている。なお、トンネル上部は摂氏1,200度まで対応できる耐火構造になっている。
- 避難設備
- 車道と区切られた避難通路と、350m以内毎に地上に避難できる非常口が設けられている。
- 全線の7割にあたるシールドトンネル区間では、円形のトンネルの中央よりやや下に床を造り、走行車線としている。このため、床下の空間が平常時は吸気ダクト、火災発生時には避難通路として用いられる。避難する際は、車道左側の路肩部分の非常口から避難通路へ降りる、らせん状の滑り台を用いる。この構成は、東京湾アクアラインと同一である。火災発生中もこの通路には外部から新鮮な空気が送られており、一旦避難した人がふたたび煙に巻かれないよう考慮されている。
- 開削区間では、内外のトンネルの間の空間が避難通路となるため、車道右側に非常口が設置されている場合もある。シールド区間からの避難者もこの空間へ到達し、階段を登って地上の山手通りの中央分離帯へ脱出する。
- 換気設備
- 横流方式を採用している。これは、車道と並行して給気・排気ダクトを設けて、トンネルの各所で同時に換気を行う方法である。これに対し、自動車の流れを利用して進行方向に空気を流し、ある場所で一気に排気する方法は縦流方式と呼ばれる。
- 排気口はトンネル天井部に10m間隔に、給気口は下部に設置されている。シールド工法区間ではトンネル底部、開削工法区間ではトンネル天井部に排気・給気ダクトを設ける。
- 換気所は要町・中落合・上落合・東中野・本町・西新宿・代々木・神山町・大橋の9ヶ所に設置されており、浮遊粒子状物質(SPM)を80%以上除去する機能を持った電気集塵機と、二酸化窒素を90%以上除去できる低濃度脱硝装置(松下エコシステムズ製)で浄化処理された排気を、消音装置を通した上で、高さ45mの排気塔から上空約100mに放出・拡散する。
- 換気所で浄化処理された排気は山手通りの空気と比べて充分にクリーンであるため、排気塔を設けなくても大気汚染にはならない。にも関わらず排気塔を設置した理由は、トンネル内の火災発生時には高温の煙をそのまま排気せざるを得ず、地上に排気口を設ければ地上での消火救援活動を阻害するばかりか、沿道にも多大な影響を与えるからである。しかし換気塔は目立つことから、中央環状新宿線の地下化が決定した後も一部沿線住民の反発を招き、威圧感を与えないデザインを考慮することになった。
[編集] ランプ・ジャンクション
山手通りの中央分離帯に設置するため、いずれも右側分合流である。なお、東京外環自動車道都内区間ではこの問題への解決策として、トンネルを右側通行にする(対向車線は見えないので、ドライバーが意識することはない)ことで左側分合流にすることが予定されている。
[編集] 交差する地下構造物
○印は山手トンネルより下側の構造物、●印は山手トンネルより上側の構造物を表す。
- ○東京地下鉄有楽町線
- ○都営地下鉄大江戸線(中井駅北側から西新宿五丁目駅西側にかけ、大江戸線が山手トンネルの下部に並行する)
- ●東京地下鉄東西線
- ●東京地下鉄丸ノ内線
- ●京王線・京王新線
- ●東急田園都市線
[編集] 都営地下鉄大江戸線との関係
大江戸線は山手トンネル着工前に開業したが、現在は一部区間で並行している。この区間では、下部に大江戸線の単線トンネル2本、上部に山手トンネル2本と、4本のシールドトンネルが並ぶ。また、中井駅と中野坂上駅は駅舎建設時に道路部分も同時建設しており、この区間は開削工法の箱形トンネルであるため、山手トンネルを走行する車からも容易に判別できる。駅部では、山手トンネル両方向の間の部分(中央分離帯に相当する部分)に、下部の大江戸線ホームと上部の改札階を結ぶエスカレーターやエレベーターが設置されている。エスカレーターからは、山手トンネルに相当する高さに、階高が高い部分があることを確認できる。
[編集] 関連作品
- 西澤丞著『首都高山手トンネル』求龍堂(2007年) ISBN 9784763007254