奨学金
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奨学金(しょうがくきん)は、能力のある学生に対して、金銭の給付・貸与を行う制度。金銭的・経済的理由により修学困難とされる学生に修学を促すことを目的とすることも多いが、金銭的・経済的な必要性を問わず、学生の能力に対して給付されることもある。
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[編集] 給付奨学金
企業や自治体の主宰する奨学金に多い。UWCのようにNPO教育組織が行う場合もある。日本では比較的少ないが、欧米では伝統的に奨学金が大学や高校から一部の学生・生徒に給付される例はよくみられる。2004年4月からの国立大学法人化に伴い護送船団でなくなった国立大学でも個別に給付奨学金制度の整備が行われてきている(例:「一橋大学学業優秀学生奨学金制度」)。
[編集] 貸与奨学金
[編集] 日本学生支援機構
2004年4月1日より、奨学事業、留学生支援事業、学生相談等の事業を統合して行う独立行政法人として、それまでの日本育英会、文部科学省・国立大学の業務の一部、財団法人日本国際教育協会、財団法人内外学生センター、財団法人国際学友会、財団法人関西国際学友会の一部の業務を引き継いで、独立行政法人日本学生支援機構として誕生。奨学事業に関しては利用者の最も多い奨学金制度の一つ。
高等専門学校、専修学校専門課程、大学、大学院に在籍する学生に対して奨学金を貸与する。奨学金には、第一種(無利子)、第二種(有利子)などの区分が設けられており、第一種の方が採用基準が厳しく(学力等)、第二種は条件(保護者の年収等)を満たせばほぼ全員が採用される。
留学生支援事業に関しては、外国人留学生や交換留学生への奨学金給付を行っているほか、日本に留学する外国人への相談・情報提供、日本から海外に留学を希望する人への相談・情報提供事業などがある。留学相談は誰でも利用可能[1]。
一方、当然のことながら「第一種(無利子)」と「第二種(有利子)」の間では将来の実質的な返還額が大きく異なる実情がある(「第二種(有利子)」では年利の変動如何によっては、実際の貸与総額に利子として数十万から百万円余を加えた額が返還総額になる可能性がある)。このような極めて重大な採用区分に関して、採用基準を「高校の成績(入学前の成績)」だけに求め、「大学の成績(入学後の成績)」に求めていない点には批判も少なくない。学生の将来における返還金(借金)の差異を、実質的に「高校の成績」というわずかな一時期のみによって判断し、実際に奨学金を貸与して勉学に励む「大学の成績」を考慮しないこと、また「高校の成績」はその高校内での成績であって、高校自体のレベルを考慮しない事に対して、公平・公正の観点から多くの疑問が投げかけられている。
また貸与奨学金である以上、卒業後の返済は当然の義務であるにもかかわらず、返済しない者が後をたたず、制度の根幹にかかわる問題になっている。関係者からは、利息のある第二種奨学金は民間金融機関の学生ローンと同じなのだから、民間に任せて機構は第一種奨学金のみにすべきだとの声も聞かれる。
いずれにせよ、奨学金とは借金であるという意識を学生に持たせ、返済計画を学生自身がしっかり考えることが、本人のためにも制度存続のためにも必要なことだという認識が高まっている。
[編集] 技能者育成資金
文部科学省が所管しない職業能力開発総合大学校及び公共職業能力開発施設に在籍する学生や訓練生は、日本学生支援機構の奨学金貸与の対象とならない。これに代わるものとして、独立行政法人雇用・能力開発機構が設けている技能者育成資金制度がある。
日本学生支援機構の奨学金制度と同様に、第一種(無利子)、第二種(有利子、年3%)の区分がある。第二種の対象者は、都道府県立では職業能力開発短期大学校、雇用・能力開発機構立では、職業能力開発総合大学校、職業能力開発大学校、職業能力開発短期大学校に在籍する学生及び訓練生である。第一種の対象者は、第二種の対象者に加えて、都道府県立では職業能力開発校、雇用・能力開発機構立では職業能力開発促進センターに在籍する訓練生である。
融資条件には経済的理由と成績基準があるが、第一種では特に優れた学生及び訓練生が対象となり、第二種では成績基準が緩くなっている。融資月額は、条件に応じて18,200円〜85,000円(第一種)、40,000円〜47,600円(第二種)である。
技能者育成資金の返還期間は、最長16年以内である。以前は、特定の職業(専修学校、職業能力開発総合大学校の教職員など)に指定された期間以上勤務すれば、返還が猶予及び免除される制度があったが、現在は廃止されている。
[編集] あしなが育英会
病気や事故、災害、自殺などにより親を亡くした子供に対し、高校、大学、専門学校に通うための奨学金を貸与する。
[編集] 留学のための奨学金
海外留学には多額の費用が必要となることが多く、奨学金を利用する学生も多い。「海外留学奨学金パンフレット」で概要がわかる。海外留学のための奨学金
[編集] 日米教育委員会による奨学金
俗にフルブライト奨学金と呼ばれるもの。アメリカ留学に関する奨学金として有名。
[編集] 国費で実施されている奨学金制度
特定の目的のために国費によって運営されている奨学金制度である。いずれも管轄省庁の指定する職に一定期間勤務すれば返還免除となる。各省庁が管轄している場合でも、実施機関は都道府県である場合が多いが、以下の制度は国費によって運営されている。いずれも日本学生支援機構の奨学金との重複を認めている。
[編集] 防衛省による貸費学生制度
自衛隊法第九十八条に基づく制度である。技術貸費学生と衛生貸費学生があり、技術は理工学系・衛生は医歯学系の学生を対象としている。採用は例年十数名程度である。
[編集] 矯正医官修学資金貸与法による修学資金貸与制度
法務省所轄の奨学金制度である。医学専攻の学生のうち、卒業後各種矯正施設に勤務しようとするものを対象とする。こちらも例年十数名程度の採用である。
[編集] 地方自治体による奨学金制度
都道府県レベルや市町村単位など、その募集内容や奨学金の額、そして、返済の有無など制度内容は千差万別ではあるものの多くの自治体に制度がある。
主な自治体による奨学金制度一覧を参照
[編集] 民間企業による奨学金制度
民間企業が独自に実施する奨学金制度。通年募集されているものもあれば、小額を突発的に募集を行うもの、特定の学校限定の奨学制度など多岐に渡る。
[編集] 新聞社による奨学金制度
新聞社による新聞奨学生と呼ばれる奨学金貸与/支給制度である。学生は就学期間中販売店で新聞配達に従事する事で奨学金の支給を受ける事ができる。主に都市部の新聞社が実施している。
[編集] 問題点
- 日本学生支援機構の貸与奨学金の場合、受給には本人と父母の所得制限があるため、中産階級・中流階級以上の子弟が何らかの金銭的理由により修学困難である場合でも、現状では支給されない。
- 新聞奨学生の場合、時間的制約が大きく、研修等がある学科では利用が困難となる。また一部の店舗において労働環境が劣悪で、過労死事件などが起きるなど問題が少なくない。