大阪2011年問題
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大阪2011年問題(おおさか2011ねんもんだい)、あるいは「2011年問題」「平成23年問題」とは、大阪市中心部で、2011年(平成23年)までに百貨店などの新設・増床が出揃い(同年特に大量に完成)、商業施設の供給が過剰になってしまうのではないかと懸念されている事象である。
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概要
まず、2005年9月7日にそごう心斎橋本店が開店し、それに伴い大丸心斎橋本店の改装も併せて行われるなど、既に前哨戦は始まっている。さらに、2006年に南街会館へ丸井が出店を果たしている。以下は、今後の予定及び近年の開店情報である。
- 2005年9月7日:そごう心斎橋本店、建て替えにより再オープン
- 2006年9月22日:建て替えられた南街会館になんばマルイ出店
- 2008年春:近鉄百貨店阿倍野本店新館完成(阿倍野・天王寺)
- 2009年秋:高島屋大阪店本館増床(難波)
- 2011年春:三越大阪店(JR大阪駅新北ビル)に出店(梅田)
- 2011年春:大丸梅田店(アクティ大阪)増床(同)
- 2011年度下期:阪急百貨店梅田本店(梅田阪急ビル)建て替え、日本最大級に(同)
- 2011年以降:阪神百貨店梅田本店(大阪神ビル)建て替え(南隣の新阪急ビルも建て替えられ、ツインタワーとなる予定)同)
- 2014年春:近鉄百貨店阿倍野本店本館増床(阿部野橋ターミナルビル旧館部分を建て替え)、日本最大(2007年4月時点の比較)に(阿倍野・天王寺)
以上の新規出店・建て替え・増床の大半が出揃う2011年には、大阪市内の百貨店の総売り場面積は2005年と比較して50%以上増える事になる。この事は近畿地方全体における小売業態の活性化につながると言われている一方で、近畿の人口増加が関東地方や東海地方と比較しても鈍化している現状では、いわゆる「パイの奪い合い」状態に陥るのではと言う懸念もある。郊外の大型ショッピングモールにも消費者を奪われ、加えて少子・高齢化で毎年百貨店業界全体の売り上げが右肩下がりの中、今後いかに各百貨店が差別化を図り、各店独自の売場作りができるかどうかが非常に大きな鍵を握ると見られている。しかし、これを深刻な問題とはせず、各社が積極的に投資をすることが、まさに大阪の景気の好調さを表していると見る肯定的な見方もある。
各百貨店の新設・増床の概要
阪急百貨店うめだ本店(梅田阪急ビル)(梅田)
阪急百貨店梅田本店が入居する「梅田阪急ビル」は、世界初のターミナルデパートとして1929年に開店してから7回にわたって増・改築をして来たが、耐震構造の見直しや大阪地区の商業地の激変に対応するため、都市再生特別措置法に基づく容積率の大幅な緩和を機に、建て直される事になった。
営業しながら建て直すという工法をとる。工区を南側の第I期と北側の第II期に分ける2段階の建て替え施行で、建て替え期間中も営業を続ける。
第I期工事中の不足売場面積の確保のために、新たに「阪急サン広場」「コンコース2階部分」「既存建物の北館バックヤード部分・9階屋上部分」に売り場スペースを設けている。
百貨店部分の上には、地上187mのオフィス棟(14F~41F)も建設される。建て替えにより、百貨店の売り場階数は「B2~9F」から「B2~13F」に、総面積は約116,000m²から約140,000m²に、営業面積は約61,000m²から約84,000m²にそれぞれ増え、国内最大級となる[1]。
2007年3月発表
阪急百貨店は3月26日、建て替え中の梅田本店が全館完成して営業開始する時期が、当初予定していた2011年春から、同年10月~12年3月にずれ込む見通しを発表した。これは、工事の進み具合が遅れている為とのことで、第1期工事分の営業開始も、当初予定の2007年秋から2008年10月~2009年3月に遅れる[2]。
合わせて、梅田本店建て替え工事中の売場面積確保と、競争力強化・顧客サービスの充実を目的に2008年2月、HEPナビオ地下1階~地上5階の物販部分へ出店することを発表した[3]。 紳士服や雑貨を集めた「メンズ館」(仮称)に改装し、隣接する梅田本店の6、7階にあるメンズ売り場をすべて移転させる計画。伊勢丹のメンズ館同様、ビジネススーツからカジュアルまでの内外の高級ブランドを網羅するほか、靴やバッグ、ベルト、財布などの紳士用品をとりそろえる計画。男性用化粧品店などの出店も検討している。阪急は、「メンズ館」のノウハウを持つ伊勢丹との経営統合を決めた三越が2011年、梅田に新店を出すのを前に、先手を打って男性客の囲い込みを狙う[4]。
これに伴い、HEPナビオは、10月28日をもって地下1階~地上5階までが閉館する[5]。
大丸梅田店(アクティ大阪)(梅田)
大丸梅田店が入居している大阪駅ビル「アクティ大阪」は、JR西日本が主体となって現在のビルに隣接する15階建ての別館を建設し、両者のフロアを通路で一体化するという形で、増床する事にしている。200億円から250億円を投じ、2011年完成予定。[6]。
これにより、アクティ大阪の床面積は約138,000m²から約173,000m²に、大丸梅田店の売場面積は約40,000m²から約64,000m²に増える事になる。増床分は、リビング用品や生活雑貨を中心とするフロアにし、年商800億円を見込んでいる。
三越大阪店(大阪駅新北ビル)(梅田)
2005年5月5日に北浜・堺筋沿いにあった三越大阪店が閉店したが、同社は2011年に完成する大阪駅新北ビルに再出店する事になっている。売場面積は約50,000m²となる予定[7]。
なお、当初は現在ヨドバシ梅田が建っている大阪鉄道管理局跡地に出店する予定だったが、用地取得に失敗している。
阪神百貨店梅田本店(大阪神ビル、新阪急ビル)(梅田)
2006年末発表
発足直後の阪急阪神ホールディングスの角和夫社長が、大阪・梅田の阪神百貨店本店が入居する大阪神ビルと南隣の新阪急ビルを一体的に建て替える方針を表明した。但し、既に着工済みの阪急百貨店梅田本店の建て替えが優先のため、実現は2011年以降となる模様である。
阪神百貨店は当初、梅田地区各百貨店の大増床に対し、大阪神ビルを耐震補強を兼ねた改修工事でしのぐ予定だったが、親会社の阪神電鉄が阪急HDと経営統合し、阪急阪神HDとなった事で建て替えに方針を急転換した。因みに、現在の大阪神ビルは1963年(3階~地下部分など一部は1939年)、新阪急ビルは1962年の完成と、共に老朽化していた。
阪神百貨店の営業が継続できる様に、まず新阪急ビルの改築から着手し、同ビルの完成後に百貨店を一時的に移転させ、大阪神ビルに取り掛かるという2段階方式で進める。阪急阪神HDの角和夫社長は、両ビルの建て替えプロジェクトについて「阪急と阪神による街づくりのシンボルにしたい」としている。
また、新しい大阪神ビルの規模については「(容積率の緩和を受けて地上41階建てとなる)梅田阪急ビルがモデル」(阪神電気鉄道・坂井信也社長)としており、梅田という立地を活かした高層ビルの建設を検討している。この場合、阪急と阪神のビルがツインタワーとしてJR大阪駅前にそびえる事になる。
2007年9月発表
阪急阪神ホールディングスの角和夫社長は、記者会見にて、阪神百貨店が入居する大阪神ビルと隣接する新阪急ビルの建て替え計画について「都市再生特別措置法の活用を検討する」との考えを明らかにした。特措法の活用により同区域が都市再生特別地区に指定された場合、現在の容積率1000%を超える高層ビルの建設が可能になる。これにより、大阪神ビルと新阪急ビルとの高層ツインビル計画の実現を目指す (2011年度下期の完成を目指す新梅田阪急ビルも地区指定を受け、容積率が1000%から1800%に緩和されているほか、近畿日本鉄道も地区指定を受ける前提で大阪阿部野橋駅に日本一の高層ビルを建設する計画を発表している)[8]。
建て替え時期については、特措法の期限である平成23年までの計画策定が、目途になるとの考えを示した。また「大阪神ビルは(現在の梅田阪急ビルを建て替えて誕生する)新梅田阪急ビルの完成後に着工するが、新阪急ビルはその前に着工したい」と述べ、新阪急ビルの建て替えは大阪神ビルに先行する形で、阪急百貨店の入居する新梅田阪急ビルの建設中に着工する構想を明らかにした。具体的着工時期については、「遅くとも2009年に着工する」とも述べている[9]。
これは、新阪急ビルについて「阪神百貨店の建て替え期間中は(同店の)補完機能が必要。」とも述べていることから、阪神百貨店の建て替え工事中、売り場面積が狭くなる同店を新阪急ビルが補完できるようにすることがねらいだと考えられる[10]。
高島屋大阪店(南海ビル他)(難波)
高島屋大阪店本館として使われている南海ビル(1932年築)の東側にある新事務館・事務別館・別館・南分館・南別館の後方施設を取り壊し、TE館を新築、本館と連結し、一体化したフロア構成にする。デザインはガラスを多く用いるが、本館のイメージをそのまま踏襲したものとなる[11]。
同時に本館も全フロアを改装して南海ビル、TE館をあわせて「新本館」とする。南海ビルの約56,000m²に22,000m²のTE館を加えて、それまでの約1.4倍の約78,000m²まで拡大する[12]。
また、それに先立ち2007年4月開業の高島屋大阪店に隣接するなんばパークス第2期エリア内に「T-Terrace by TAKASHIMAYA GROUP」として7,200m²の専門店街を開業させた。さらに、南海ビルに隣接する「南海会館」の建て替えも検討されている[13]。
近鉄百貨店阿倍野本店(阿部野橋ターミナルビル)(阿倍野・天王寺)
大阪阿部野橋駅がビル内にある近鉄百貨店阿倍野本店は、3回の構想を計画していた。
2006年10月発表
近鉄百貨店阿倍野本店(大阪阿部野橋駅・阿部野橋ターミナルビル)の南側にある別館、Hoopのさらに南側の敷地に2008年春に新館をオープンさせ、総合百貨店の本館(約68,000m²)、ファッションのHoop(14,000m²)、生活雑貨の新館(14,000m²)の3館体制にする事を発表した。
2007年4月発表
当初、改装すると表明していた本館の西半分(旧館部分)を建て替えると発表した。1937年築の建物を改装して使用していた本館西半分を建て替え、少なくとも20,000m²以上増床、新本館単体でも松坂屋名古屋本店を上回り、国内最大の百貨店(新本館約88,000m²以上、別館2つを合わせて約116,000m²以上)となる。また、このビルはオフィスなどとの複合ビルとなり、280mの高さとなると報道されていた[14]。
キタ(阪急・阪神・大丸・三越)ともミナミ(大丸・高島屋・そごう)とも離れた立地で、キタやミナミに比べ阿倍野・天王寺に百貨店や大型商業施設が集積していない事をカバーし、阿倍野でキタやミナミに対抗するために、近鉄百貨店は拡大戦略をとる事にしたと見られている[15]。
近鉄百貨店では、「本館単独でも日本一の規模を確保し、競争力を強化する」(中川社長)としている。また、2km程離れた上六の上本町店も、近鉄劇場跡の再開発(新歌舞伎座の誘致)により完成する建物内にも売り場を設ける事を検討している[16]。
2007年8月8日発表
近畿日本鉄道が近鉄阿倍野本店本館を含めた阿部野橋ターミナルビル(旧館部分)の再開発計画の詳細を発表した。それによると、ターミナルビル旧館部分を撤去し、高さ300mの複合ビル(仮称:タワー館)を建設し、新しい超高層ビル内に10万平方メートル(既存の駅ビル新館部分46,600m²を含む)の店舗を構える構想で、2014年春の竣工を目指す。完成すると、横浜ランドマークタワー(1993年開業・約296m)を抜き、日本一の高さとなる。高層ビル日本一の記録が塗り換わるのは21年振りとなる[17]。 これにより、2007年4月発表通り百貨店本館のみで単独日本一の規模(100,000m²)となる他、百貨店別館:Hoop(14,000m²)・百貨店新館(2008年春完成予定:14,000m²)となり、阿倍野本店全体で、128,000m²規模となる模様となる。
補足・出典
- ^ 2005年2月の発表時点で松坂屋名古屋本店(名古屋・矢場町)の86,758m²に次ぎ国内2位の面積であったが、2007年に発表された近鉄百貨店阿倍野本店は阪急新うめだ本店はおろか、松坂屋名古屋本店をも上回った。
- ^ 2百貨店 競争と補完、阪急阪神HD中期計画
- ^ HEPナビオへの出店について 阪急百貨店
- ^ メンズ「ナビオ」へ囲い込め! 阪急が大改装
- ^ ナビオ閉館のお知らせ
- ^ アクティ大阪増築計画の概要について
- ^ 大阪駅新北ビル紹介/三越からのリリース(PDF)
- ^ 阪神百・新阪急ビルの建て替え、容積率と高さの緩和求める
- ^ 阪神百ビル建て替え 隣接阪急と一体、09年までに着工
- ^ 新阪急ビルを先行建て替え 阪急阪神HD
- ^ 高島屋「新本館」 ガラス多用…09年秋開業
- ^ 高島屋大阪店新本館(TE館)新築工事を受注 銭高組
- ^ 『南海ターミナルビル』等の再生計画に着手します 南海電気鉄道株式会社
- ^ 近鉄百阿倍野本店の本館、日本最大に──8万8000平方メートル以上、2011年めどに建て替え(日経ネット関西版 2007年4月12日)
- ^ 近鉄百増床構想 商業集積高め生き残り(読売オンライン関西発2007年4月12日)
- ^ 「新歌舞伎座」近鉄劇場跡に移転──老朽化で活用難しく(日経ネット関西版2007年4月26日)
- ^ 阿部野橋ターミナルビル整備計画について