体操着
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体操着(たいそうぎ)とは、日本で広義にはトレーニングウェアなど運動をする為の服装一般を指す言葉であるが、普通は学校教育における体育等の時間に着用される服装をさす。一般的には体育着(たいいくぎ)、体操服(たいそうふく)、体育服(たいいくふく)とよばれることが多い。この項では主に学校(小学校・中学校・高等学校)の体操着について記す。
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[編集] 概要
体操着は普段着より身体の動かしやすさを重視して作られている。 かつて、1970年代から1990年代前半までは、男子の体操着は半袖の体操シャツにナイロンやポリエステル製の股の短い短パン(ショートパンツ)またはスポーマーが、女子の体操着は半袖の体操シャツにブルマーが定番であったが、1990年代後半以降は男女ともに半袖のシャツにハーフパンツやジャージが一般的になってきている。また、女子用にはスコートを着用することも有る。
多くの学校では体操着は基本的に、夏用の体操シャツ(冬季はジャージの下に着用)・ハーフパンツ(一部の学校では短パン)と、冬用のジャージ上下(トレーニングシャツ・トレーニングパンツ)の5点セットで揃っており、制服と同様に季節ごとに分けられている。地域や学校によっては、気候的、もしくは精神論的な理由等から一年中半袖だけで過ごさせる場合も有る。学校によっては、学年別に体操着またはラインの色や名前の刺繍や校章の色を変えて分けて区別していたり、ジャージ上下のみ学校指定で、体操シャツ・ハーフパンツは色だけ指定しているところもある。
体操シャツには長袖と半袖があり、首周りのタイプは、クルーネック(丸首)、ファスナータイプ(襟付きでタートルネックにもなる)、Vネック・セーラーズニット・ヨークシャツなどがある。
色は白一色、または白を基調として、首周りや袖口などをスクールカラーや学年色(主に赤・青・緑・黄など)としたり、袖にスクールカラーや学年色のラインを入れることが多い。
児童・生徒の管理や運動中の事故対応等の目的のため、名前・クラス・出席番号などが記入された白布の名札を縫い付ける学校や服の生地に校名と氏名(または氏名のみ)の刺繍が入る学校がある。前者の場合、体操シャツ、トレーニングシャツは前部または前部後部両方に縫い付ける大きいゼッケンタイプと、左胸に縫い付ける小さいタイプがあり、トレーニングパンツ、短パン、ブルマーは右後ろ、右前、左前のいずれかに小さいタイプのものを縫い付ける。
ゼッケンは学校指定の物を購入する場合と、各家庭で布を買い、学校から指定されたとおりの寸法で製作する場合がある。後者の場合は、体操シャツ、トレーニングシャツは左胸に、トレーニングパンツ、短パン、ブルマーは左側に名前の刺繍が入ることが多い。
体操シャツやトレーニングシャツの左胸に校章のプリントが入る学校も多く、学校によっては体操着本体の裏面や表面に校名などの文字(英字または漢字)のプリントや、文字を図案化した柄が入ることもある。
なお、近年の社会情勢の変化により、ゼッケンそのものをつけさせなかったり、大きめのゼッケンを小型にするよう指導する学校も見られるようになっている(→ゼッケン項目を参照)。
体を動きやすくするために掃除活動、ボランティア活動、部活、遠足、健康診断などの体育授業以外の学校活動時でも着用することがある。
[編集] 戦後の主な歴史
日本国内においては「全国学校体育振興会」なる団体の存在が大きく影響している。日本の体操着がある時期画一的に決まっていたのはこの団体の各学校およびメーカーへの指導によるものではないかと思われる。
1960年代前半までは、男子は白綿のランニングシャツに白のブロード地の短パン、女子は白綿のブロード地の開襟シャツに紺サージのちょうちんブルマーだった。
1960年代後半には、男子は白のメリヤス地のトレーニングシャツに白サージの短パン、女子は白のメリヤス地のトレーニンクシャツに紺サージの半ズボン型ショートパンツとなった。この頃には既に「学校体育振興会」のマークがつけられていることが多かった。
1970年代初めには、男女とも白のメリヤス地に青や紺のラインの入ったトレーニングシャツ、当時「サッカーパンツ」「カラーパンツ」と呼ばれていた紺や青のナイロン製のトランクスタイプの短パン、そして女子用として紺ニット生地ショーツ型ブルマーが一般的になり、それぞれに「振」という学校体育振興会のマークがつけられていた。
1980年代末にそれまで男子用(一部女子用)に普及していたナイロン製の短パンから、当時「バレーパンツ」と呼ばれた紺のコットン合繊の短パンに取って代わられるようになり、1990年代に入るとブルマーに対する批判が高まったのを受け、女子もブルマーから「バレーパンツ」へと移行する。そして1990年代中ごろにニット生地の「クオーターパンツ」「ハーフパンツ」が考案され、全国に普及した。
[編集] 日本国外の例
欧米では体育の授業の際は各自で運動しやすい服装や靴を自由に着用するのがほとんどであり、日本のような体操着の着用強制を人権侵害と捉える人もいる。
韓国では多くの小・中・高校で体操着を定めている。小学校では白を基調とする日本と違い、青や水色を基調としている場合が多い。また中学校・高校ではジャージや丸首のトレーナーを着用する。体操着は「体育服(チェユッポク、체육복)」と呼ぶが、学校の体操着だけでなく、成人が着用するジャージやトレーニングウェアなども「体育服」と呼ぶことがある。