予想 (競馬)
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この項では「馬券を的中させるために行う予想」について記述する。
予想とは、レースにおいて馬券に関連する着順(日本においては1着、2着、3着)でゴールする競走馬を予想することである。
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[編集] 予想理論
予想のための理論は多岐にわたる。
一般的な予想は、「競馬は強い馬、速い馬が勝つ」ということを前提とし、競走馬の「実力」を予想に強く反映させる。「実力」を算出するための要素としては、調教やレースにおける走破タイム、過去の実績、距離適性などを判断するための血統などがある。さらにレース出走馬の構成からレースの展開を予測し、若干の修正を加えて結論を出す。
一般的な予想理論で重視される要因を考慮しない理論も存在する。そのような理論には、競走馬の個性を無視して馬券対象になると思われる数字のみを予測する「出目理論」や、競馬の着順はあらかじめ主催者によって決定されており、馬券の対象となる競走馬を暗示するメッセージ(サイン)が主催者発表の出馬表や広告、レース施行時の時事ニュースや世相などさまざまな情報に隠されているという前提に立ち、サインを読み取ることで馬券の対象となる競走馬を予想する「サイン理論」などがある。
なお、予想理論に関する著作物は数多く出版されており、競馬関連書籍の中で一大ジャンルを形成している。また、最近はウェブページやブログにおいて研究・発表を行う者も存在する。
[編集] 主な予想理論
[編集] 予想家
予想を専門的に行う者のことを予想家と言う。競馬新聞やスポーツ新聞に所属し取材の後に予想行為を行う記者であるトラックマンがその典型例である。
地方競馬においては、競馬主催者及び競馬場所有者が公認し、競馬場内の「場立ち」と呼ばれる場所において自らの予想を販売する予想屋と呼ばれる職業予想家が存在する。
中央競馬においても自らの予想を販売する法人(馬券予想会社)や個人が多数存在するが、中央競馬は場内の予想屋とその予想の販売活動は一切公認していない。ただし競馬新聞についてはレースや出走馬に関する情報に付随して予想家による予想が行われているが競馬場内における販売が許可されている。
非公認で競馬場や場外馬券売場の内外で予想行為を行う者の一部には違法行為であるノミ行為をする者や闇社会などとも繋がりが存在する場合が少なくない。ノミ行為については参加させた側のみならず、参加した側も警察による取り調べの他、法により罰せられる事がある。競馬主催者もノミ行為防止の為、特に自施設内で非公認の予想屋として活動している者たちに対しては警察などと連携して取り締まりを実施しており、近年では関連法規の改正によりおとり捜査を利用した取り締まりも可能となっている。
[編集] 予想が行われる媒体
かつて日本における予想はラジオ・テレビにおける競馬番組、競馬新聞、スポーツ新聞の競馬欄などで競馬評論家やトラックマン、一部著名人などの限られた人間によって行われていたが現在ではインターネットの普及により一般の競馬ファンがウェブページやブログなどにおいて予想を行うことも盛んとなっている。
[編集] 予想行為についての制限
日本においては1960年代前半までは現役の騎手・調教師が新聞やテレビ・ラジオの競馬中継等で予想を公表する事は一般的に行われていたが[1]、現在は現役の騎手や調教師、厩舎関係者・競馬主催者および統括団体の関係者については競走の公正確保の観点から公の場で予想を公表することは禁止されている[2][3]。
その為、テレビの競馬中継に調教師や騎手、統括団体の関係者の立場にある人物などがゲスト出演する際については、そのコメントを予想行為と取られる事態が起きない様にコメントを引き出す側であるアナウンサーや司会者などは自身の発言にも細心の注意を払っている。
なお当然ではあるが、騎手や調教師が競走に勝利すべく作戦を練る為、事前にレース展開を予想する事は違反ではない。しかし、これを具体的な買い目や「この有力馬は消える[4]」などという結果予想の形で第三者に漏らせば違反行為となる。
なお、自身が中央地方指定交流競走で出走する当日の開催レースに関連していない限り中央競馬の関係者が地方競馬の馬券を、また地方競馬の関係者が中央競馬の馬券を予想し購入したり新聞などで予想行為を行ったりすることは可能である。また、テレビのバラエティ番組などでJRAの騎手がタレントと馬券勝負をする企画がたまに見られるが、この様な番組の収録は騎手自身が競走に関連しない地方競馬場で行っており問題は無い。
他方、騎手引退後に調教師や調教助手などの厩舎関係者に転身せず、一見した限りでは競馬サークルの内部から離れた部外者に見えても、実際には予想行為の制限対象に該当しているという人物もいる。知られる所では騎手として日本の最多勝記録を持つ佐々木竹見がおり、引退後に地方競馬全国協会の管轄する地方競馬教養センターの参与に就任しており、現在でも地方競馬関係者の立場にあるという理由で、大井競馬場など地方競馬の競馬中継などにゲストとして出演する事はあっても、直接の買い目予想行為を行う事は無い[5]。
[編集] 脚注
- ^ 少なくとも関西テレビ版の『競馬中継』で、当時現役の調教師だった武輔彦がレギュラー解説者を務めた記録が残っている。
- ^ 厳密に言えば、現在も競馬法上は第29条において関係者の馬券購入が禁じられているのみで、競馬法や日本中央競馬会法(いずれも施行規則・施行令含む)・日本中央競馬会競馬施行規程等において関係者による予想の公表を直接禁止する規定は無い。ただし競馬法第16条2項・第22条や競馬法施行令第14条・第17条の7において、日本中央競馬会(JRA)や地方競馬全国協会(NAR)、競馬主催者となる自治体は競馬の公正を確保するために必要があると認めた場合に騎手・調教師の免許を取り消したり関係者の競馬への関与を禁止したりすることが認められており、現在では「関係者による予想行為=競馬の公正を乱すもの」と考えられているため事実上予想の公表が禁じられている。
- ^ レース公正確保の観点から選手、主催者、統括団体の関係者による予想行為を禁止しているのはオートレース・競艇・競輪など他の公営競技いずれも同様である。
- ^ ここで言う「消える」とは「馬券の対象となる3着以内にその馬が入ってくる可能性は無い」という意味である。
- ^ 競輪における中野浩一や、競艇における植木通彦が、マスコミなどにレースについてコメントをしても具体的な買い目予想を行わないのは、同様に統括団体の関係者の立場にある為である。