丸山ワクチン
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[編集] 開発の経緯と現状
丸山ワクチン(まるやまワクチン、英:Specific Substance Maruyama;SSM)とは、1944年に皮膚結核の治療薬として誕生した薬。蛋白質を除去したヒト型結核菌青山B株から抽出したリポアラビノマンナンおよびその他のリポ多糖(LPS)を主成分とする。
発明者丸山千里(まるやま ちさと。日本医科大学名誉教授・元学長、1901.11.27~1992.3.6)の名前から後に「丸山ワクチン」と呼ばれるようになったこのワクチンは、ドイツのロベルト・コッホが1890年に発明したヒト型結核菌製剤ツベルクリンにヒントを得ている。現在では結核診断用の薬剤として知られるツベルクリンは、もともとは結核の免疫療法として開発されたものだったが、逆に症状を悪化させる結果を招き、治療薬としては失敗に終わった。丸山はコッホの試みに強い関心を持ち、「副作用につながる毒素を特定し、それをツベルクリンから取り除く」という発想の下に実験に着手。その結果、ヒト型結核菌においては蛋白質が病状を、多糖体が治癒を促進するものであることを突き止めた。
1945年より丸山は、開発した多糖体を主成分とするワクチンによる治療を開始。皮膚結核、肺結核に対して著しい効果をもたらすだけでなく、やがて結核菌近縁の抗酸菌であるらい菌を病原とするハンセン病にも効果が確認された。
丸山はさらに、上述2種の病の患者にはがんが少ないという観察結果をもとに(実際の因果関係は不明で交絡因子[1]によるバイアスが推測されている)、がん治療にワクチンを用いることを決意する。 そして、昭和40年代以降『がんの特効薬』との噂が一気に高まり、医薬品の承認の手続きより世論が先行することになってしまった。 癌患者やその家族の団体による嘆願署名運動などが行われ、国会でも医薬品として扱うよう要請された[1]が、今日においても、その薬効の証明の目処は立っておらず、医薬品として承認されるには至っていない。
[編集] 支持者の動向
丸山ワクチンは、現在も、有償治験薬という中途半端な位置づけのままである。丸山ワクチンによる治療を望む患者あるいはその家族は、丸山ワクチンの治験を引き受けてくれる医師を探し出し、治験承諾書(丸山ワクチンによる治験を引き受けるという担当医師の承諾書)[2]およびSSM治験登録書(現在までの治療経過をまとめた書類)[3]を整えさえすれば、丸山ワクチンの投与が受けられるという1972年以来の状況が続いている。
なお、放射線療法による白血球減少症の治療薬として、1991年認可された「アンサー20」(ゼリア新薬工業)は、丸山ワクチンと同成分である。丸山ワクチンが効果ありとされた白血球減少症は、悪性腫瘍によって引き起こされる症状、あるいは、その化学療法や放射線療法時の副作用である。丸山および丸山ワクチンの支持者たちは、抗がん剤として認可されることを切望していたが、"放射線療法時の白血球減少抑制剤"としての認可に留まり、生みの親である丸山が部分認可の9カ月後に死去したため、丸山の生存中にはついに抗がん剤としての認可は果たせなかった。しかし、支持者たちの需要は以後も衰えず、末期がん患者の最後の切り札と位置づけ、現在でも抗がん剤としての一刻も早い認可を望んでいる。
[編集] 脚注
- ^ 第095回国会 社会労働委員会 第3号
[編集] 関連項目
- 将棋棋士の丸山忠久九段が、ゴキゲン中飛車戦法への対策として編み出した指し方を、本項に因んで丸山ワクチンと呼んでいる。
- テレビアニメ 『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』に架空の薬品として登場する村井ワクチンとそのシナリオは、丸山ワクチンをモデルにしている。
- 自律神経免疫療法