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ルブリン合同 - Wikipedia

ルブリン合同

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

『ルブリン合同』ヤン・マテイコ画
『ルブリン合同』ヤン・マテイコ

ルブリン合同(ルブリンごうどう、リトアニア語:Liublino unijaポーランド語:Unia lubelska)もしくはルブリン連合(ルブリンれんごう)は、1569年7月1日に成立した物的同君連合である。これにより、ポーランド王国リトアニア大公国ポーランド・リトアニア連合となった。

実質的には、ポーランドによるリトアニアの併合であり、ポーランド・リトアニア連合は、選挙された一人の君主ポーランド王リトアニア大公)・元老院・合同議会(Sejm)によって統治される事となった。これは、リトアニア大公国がロシア帝国との戦争リヴォニア戦争を参照)によって危険な状態にあった事が原因だった。

ルブリン合同に対する見方は歴史家によって異なる。ポーランド歴史家は、平和的・自発的な手続きや、ポーランドの文化が広まった事など、正の側面を強調する。リトアニアの歴史家は、より批判的であり、ポーランドによる支配であると指摘する。また、連合国の農民は、その他の地域(リトアニアの敵国モスクワ大公国など)よりも自由を手にする事になったと指摘する歴史家もいる。実際に、一部の農民はモスクワ大公国から逃げて来ている[1]

目次

[編集] 歴史

1569年のリトアニア大公国(黄)とポーランド王国(ベージュ)の領域
1569年のリトアニア大公国(黄)とポーランド王国(ベージュ)の領域

[編集] 背景

法的見地からすると、合同によってリトアニアのマグナート(大貴族)は、地位の低い多数のポーランド貴族と同等の格となってしまうため、条約が調印されるまで長い論争があった。しかし、リトアニアはモスクワ大公国との戦争(Muscovite-Lithuanian Wars)で徐々に形勢が悪化しており、16世紀後半からのリヴォニア戦争ロシア帝国に完敗する事で、ロシア側に合併される事を恐れていた。一方、ポーランドの貴族シュラフタは、見返りなしにリトアニアに援軍を派遣する事を渋っていた。その様な中、ジグムント2世アウグストは、リトアニアへの脅威を鑑みて、連邦化を強く求め、徐々に支持者を増やして行った。

[編集] 1567年の議会(セイム)

1567年1月、ポーランドのルブリンで議会(セイムSejm)が開かれたが、合意には至らなかった。合同締結へのポーランド人の強い圧力に抗議して、ビリニュス知事ミカローユス・ラドヴィラ・ルダシス(Mikalojus Radvila Rudasis)に率いられたリトアニア人はルブリンを3月1日に離れた。彼らは、ジグムント2世アウグストが決断する事を恐れていた。

3月26日に、ジグムント2世は、リトアニア人が支配する南部の土地であるポドラシェ(Podlachia)、ヴォルイニア(Volhynia)、ポドリア(Podolia)、キエフ地方をポーランドに割譲するようにシュラフタから強要された。これらのルーシの歴史的な土地は、現在のウクライナ領土の半分以上を構成しており、当時上流階級を主にルテニア人が占めていたリトアニアにとって重要な土地だった。この時、ポーランド王に忠誠を誓うことを拒否したリトアニア貴族は領土を剥奪された。

ルブリンを離れたリトアニア人はヤン・カロル・ホトキェヴィチ(Jan Karol Chodkiewicz)の父ヤン・ホトキェヴィチ(Jan Chodkiewicz)に率いられ帰還し、ミコワイ・ラヂヴィウとは若干異なる戦略で交渉を継続した。ポーランド貴族シュラフタは、リトアニアのポーランドへの完全な併合を望んでいたが、リトアニア人は反対し続け、連邦国家の形を取ることで合意した。1569年6月28日最終的に交渉はまとまり、7月4日にルブリン城で王によりこの法令への調印が行われた[2]

[編集] 影響・余波

[編集] 軍事

この合同の後、ポーランドはリトアニアに対して軍事支援を行ったが、以前に併合した地域を返還する事はなかった。リトアニアはポドラシェ、ヴォルイニア、ポドリア、キエフ地方のポーランドへの併合を承認せざるを得なかった[3]

[編集] 政治

ルブリン合同はジグムント2世の偉業であるが、大いなる失敗でもある。この合同によって、ポーランド・リトアニア連合は当時のヨーロッパで最大規模の国家となり[4]、以後200年以上この繁栄は続いたが[5]、ジグムント2世は実行可能な政治体制への変革を成し遂げる事に失敗した。ジグムントは国家を下流貴族の支持で強化し、下流貴族とマグナートの力のバランスを取ることを望んでいた。しかし、連合国家の全ての貴族は、法の観点から理論的には等しい地位にあるにも関わらず、マグナートの政治力は著しく衰える事はなく、結局賄賂などで腐敗していく事となった[2]。その結果として、周囲の国家が強い中央集権的な絶対王政に発展しているのに対し、王の権力(王権)は徐々に衰えていき、連合国家の "Golden Liberty"(貴族民主主義とも)体制は、政治的混乱状態へと陥いっていく事となった[6]

ルブリン合同では、2つの国家は合併はしたものの、それぞれかなりの程度の自治権と、個別の軍隊、国庫、法律、政権を維持していた[3]。リトアニアとポーランドは理論的には等しい立場だったが、より大きく、文化的にも魅力的なポーランド側の力が支配的となっていった。また、人口の差によって、議会におけるポーランドとリトアニアの代議士の比率は3:1とポーランドが上回っていた[3]

ルブリン合同の立案者達は、リトアニアとポーランドが実際よりも密接に結び付く事を期待していたが、1566年の第二リトアニア法典が効力を失っておらず、その条項の一部はルブリン合同法と実質的に異っていた[要出典]。最終的には、1588年に第三リトアニア法典が成立したが、これも多くの点においてルブリン合同と相反していた[要出典]

したがって、ポーランド貴族は、ルブリン合同の調印時に「合同法はいかなる法にも抵触する事はない」とされた事を理由に、リトアニア法典を違憲であると見做した。しかし、リトアニア法典の下でルブリン合同法は宣言された。リトアニア法典は、ルブリン合同の直前にポーランドに併合されたリトアニアの地域でも使われた。これらの法体系の不一致は長年続いた。

リトアニア人のマグナート(特にサピェハ家)の権力を制限し、連邦の法を統一する試みは、結果としてkoekwacja法運動に至った。これは、1697年(5、6月)の戴冠議会(sejm elekcyjny)でのkoekwacja改正で最高潮に達し、1698年4月の議会(セイム)で文書( Porządek sądzenia spraw w Trybunale Wielkiego Księstwa Litewskego.[7])で承認された。

[編集] 文化

ポーランドとの合邦後、リトアニア貴族はポーランド人と同様に、リトアニア領土を統治する正式な権利を有していた。しかし、政治的なローマ・カトリックの振興は別の問題だった。

文化や社会生活においては、ポーランド語およびカトリック教会はルテニア貴族の間で支配的となった(以前はルテニア貴族の大部分はルテニア語話者であり宗教的には正教会に属していた)。しかし、平民、特に農民は自らの言語および信仰を保持し続け、この事が連邦のリトアニアとルテニア地域において、下流階級の人々と貴族の間に著しい亀裂を生じさせる事となった。一部のルテニア貴族(マグナート)には、正教会への信仰を断固として堅持し、ルテニア正教会やルテニア学派に寛大にふるまうなどして、ポーランド化に対し抵抗するものもあった。しかし、その後の世代にとってはポーランド化の圧力への抵抗は困難であり、最終的にはほとんど全てのルテニア貴族がポーランド化された。

ルブリン合同は、スタニスワフ・アウグスト・ポニャトフスキ王が起草した5月3日憲法に取って代わられ、1791年から連邦国家だったポーランド・リトアニア連合は単一国家となった。しかしこの憲法は完全に施行されなかった。

その後、コサックや隣国の介入の末、1795年にロシア帝国プロイセン王国オーストリア大公国によってポーランド・リトアニア連合は分割された(ポーランド分割)。ケダイニアイ条約が効力を有している間、ルブリン合同も一時的に無効となった。

ルブリン合同は、ヨーロッパの歴史上最大の国家を生み出した(ロシア帝国やローマ帝国は除く)。多くの歴史家はポーランド・リトアニア連合を現在の欧州連合(EU)と同様の国家形態と考えており[要出典]、ゆえにルブリン合同を、カルマル同盟やイギリス諸島の連合法、その他の同種の条約と同様に、マーストリヒト条約のある種の前身と見做している。しかし、ルブリン連合は現在の欧州連合よりもより深く結び付いた国家形態だった。

[編集] 関連項目

[編集] 脚注

  1. ^ en:Jerzy Czajewski, "Zbiegostwo ludności Rosji w granice Rzeczypospolitej" (Russian population exodus into the Rzeczpospolita), Promemoria journal, October 2004 nr. (5/15), ISSN 1509-9091 , Table of Content online, Polish language
  2. ^ a b Hubert Zawadzki; Jerzy Lukowski (2001年). A Consise History of Poland. Cambridge University Press. ISBN 0521559170.  Googleブック
  3. ^ a b c Nicholas Valentine Riasanovsky (2000年). A History of Russia. Oxford University Press. ISBN 0195121791.  Googleブック
  4. ^ Len Scales; Oliver Zimmer (2005年). Power and the Nation in European History. Cambridge University Press. ISBN 0521845807.  Googleブック
  5. ^ James T. McHugh; James S. Pacy (2001年). Diplomats Without a Country: Baltic Diplomacy, International Law, and the Cold War. Greenwood Press. ISBN 0313318786.  Googleブック
  6. ^ John Robertson (1995年). A Union for Empire: Political Thought and the British Union of 1707. Cambridge University Press. ISBN 0521431131.  Googleブック
  7. ^ en:Jerzy Malec, Szkice z dziejów federalizmu i myśli federalistycznych w czasach nowożytnych, "Unia Troista", Wydawnictwo UJ, 1999, Kraków, ISBN 83-233-1278-8, Part II, Chapter I Koewkwacja praw.

[編集] 外部リンク


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