リニアモーターカー
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リニアモーターカー (Linear motor car) とは、リニアモーターにより駆動する鉄道車両のことである。JRマグレブの最初の開発者であった京谷好泰が名付けた。単にリニアと略すこともある。
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[編集] 概要
リニアとはLineの形容詞で、「直線の」という意味である。リニアモーターとは、本来は円筒状のモーターを、線状に展開し、回転運動の代わりに直線運動をするようにしたものである。
リニアモーターカーは具体的には、車両に電磁石を備え、直線ないしほぼ直線の軌道側にも何らかの設備(たとえば電磁石)を並べることによって、それらの間の反発力と吸引力により進む。
リニアモーターカーとはリニアモーターで駆動する車両全般のことで、対して磁気で浮かぶ車両は磁気浮上式鉄道と呼ばれる。日本では磁気浮上式鉄道を一般にリニアモーターカーと呼ぶことが多い。しかし、リニアモーターカーが磁気で浮上するとは限らず、磁気浮上式鉄道もリニアモーターで駆動されるとは限らない。 日本以外の各国およびJR(旧国鉄も)などでは、磁気により浮上するリニアモーターカーを、"Magnetic Levitation"(磁気浮上)を略した"Maglev"「マグレブ」と呼ぶことが多い。
[編集] 磁気浮上式リニアモーターカー
磁気浮上式リニアモーターカー(磁気浮上式鉄道)とは、磁力の反発・吸引力により浮上し、リニアモーターで駆動する移動車両の総称である。推進にはリニアモーターが用いられ、高速化が可能である。磁気浮上式リニアモーターカーは、浮上にも駆動にも磁気を使うので、原理や設備の面から相性がいいが、駆動だけでなく浮上にも新技術を用いるため、技術的障害が多い。また浮上式車両でも、停車・低速時や緊急時のために車輪を装備していることが多い。
現在営業運転を行っているものは中国の上海トランスラピッドと日本のリニモのみで、他は実験・試験段階にとどまるか、廃止されている。
詳細は磁気浮上式鉄道を参照
[編集] 世界で開発されている磁気浮上式リニアモーターカー
日本のJRマグレブ・HSST、ドイツのトランスラピッド・TSST・EET・M-Bahn・KOMET(後にドイツではトランスラピッドに研究を集約)、イギリスのバーミンガムピープルムーバ(1995年に廃止)、アメリカのインダクトラック[要出典]式であるSkytran、中国の中華01号などがある。
磁気浮上式鉄道 の項目も参照
[編集] 鉄輪式リニアモーターカー
鉄輪式リニアモーターカーとは、動力にリニアモーターを使い通常のレールと車輪によって走行する列車のことで、地下鉄で多く実用化されている。鉄車輪式、接地式ともいい、鉄輪式以外にゴム輪なども可能である。
特徴としては、以下のようなものである。
- リニアモーターは非常に薄いため通常の電車よりも台車を薄くでき、車両断面を小型化できる。このためトンネル断面を小さくでき、建設費を削減可能(ミニ地下鉄)。
- 駆動力を車輪とレールの摩擦に頼らないため、急勾配での走行性能が高い。大都市では地下鉄路線の過密化により直線的路線空間の確保が困難になっており、急勾配・急カーブを多く持つ線形にせざるを得ないが、そのような場合に有効である。
- リアクションプレートと車両側の電磁石との間隔が狭いため、地上区間ではゴミなどが挟まらないよう、点検する必要がある。
- ギアボックス、撓み継ぎ手等の可動部分が無いので保守が容易。
- 従来の粘着式推進に比べるとリニア誘導モータ固有の損失、及び、一次側コイルとリアクションプレート間の隙間が従来の回転式誘導モータに比べ大きいので(磁界の強度は距離の2乗に反比例する)エネルギーの損失が大きく、単位輸送量あたりの消費電力が従来型に比べ大幅に増える。
[編集] 日本の鉄輪式リニアモーターカー
- リムトレン - 1988年のさいたま博覧会(3月19日‐5月29日)で日本モノレールが出資し、鉄車輪(4輪)のボギー台車2組を取付け2両編成による展示走行を行った。製作は三菱重工。
- 大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線 - 1990年に日本初の常設実用線として開業し、この路線で使用される70系車両はこの年のローレル賞を受賞した。
- 都営地下鉄大江戸線 - 1991年開業
- 神戸市営地下鉄海岸線 - 2001年開業
- 福岡市地下鉄七隈線 - 2005年開業
- 大阪市営地下鉄今里筋線 - 2006年開業
- 横浜市営地下鉄グリーンライン - 2008年開業
- 仙台市営地下鉄東西線 - 建設中
[編集] 世界の鉄輪式リニアモーターカー
- 1986年に開業したカナダ・バンクーバー市のスカイトレイン
- 2005年に開業した中国・広州市の広州地下鉄4号線
- トロントの「スカーバラ RT line」
- マレーシアのクアラルンプールの「Putra LRT」
- デトロイトのピープルムーバ(新交通システム)
- ニューヨークの「JFK AirTrain」
その他、香港の地下鉄などでも採用計画があるとされる。
[編集] 空気浮上式リニアモーターカー
- TLRV - アメリカの空気浮上式リニアモーターカー試験車両
[編集] 駆動方式の種類
- 詳細は磁気浮上式鉄道のリニアモーターの種類を参照。
リニアモーターも通常のモーターと同様、以下のように分類できる。
- リニア同期モーター (LSM) - 軌道にも電磁石または永久磁石を並べなくてはならないため、軌道敷設・保線のコストがかさむ。効率や出力には優れる。
- リニア誘導モーター (LIM) - 車上一次式の場合、軌道側には電磁石が不要で、「リアクションプレート」と呼ばれる単なる金属板ですむ。LSMと比較した場合、効率が低い。
- リニア整流子モーター - 機械的接触がある、寿命が短いなどの問題があるため、実用レベルではほとんど使われない。