モトクロッサー
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モトクロッサーはモトクロスレースのために作られた競技用オートバイの一種。
[編集] 概要
この車両は未舗装路の走行を目的としており、凹凸の激しい低摩擦面を走行するための工夫がなされており、跳ね上がる泥を避けるための大きな泥除けが見られ、泥除けとタイヤは泥が詰まらないように大きく離して取り付けられており、また軽量・高速・高トルク重視である。
サスペンションは激しい凹凸に対応して長いストローク(可動範囲)が設定されているが、これは乗り心地を考慮した物ではなく、あくまでも地面との接地性やジャンプして着地する際に車体が分解しないようにするためのものである。タイヤも不整地でのグリップ力が良い・大きなブロック状の突起がついた専用のオフロードタイヤが取り付けられている。軽量化を優先するため、また長時間の走行は前提とされず燃料タンクはそれほど大きな物は積まれず、5〜10リッター程度である。これには同レースにつきものの転倒に伴う車体破損時の火災防止の観点もある。
モトクロス競技では、軽量で機敏な車体が大きく跳ねたり、転倒・クラッシュは起きて当然とされる激しさもあり、他のモータースポーツには無い魅力があるため、世界各国でこのオートバイ車種の販売が見られる。ただし現在は日本国内4メーカーの車両の販売が大半を占めている。
軽量化のため保安部品(前照灯、方向指示器、警笛、バックミラー等)は元々無いか、外されているため、ナンバープレートを取得することは出来ない。そのため公道での走行は不可能で、原則としてトランスポーターに積載して走行可能な場所まで運ぶことが前提であるが、草レース等の市民参加型レースの盛んな地域では、会場までこの車両に乗って来る人のために脱着可能な保守部品の用意された車両もある。ただ、オフロードタイヤは舗装面での長距離高速走行には向いておらず、大きく変形するブロックが発熱し、欠損してしまう場合も見られる。
エンジンは1980年代までは軽量化のために排気量のあまり大きくない空冷式2ストロークエンジン・単気筒の物がほとんどで、2ストロークエンジンの常として引き込み効果を得るためにエンジン部分に程近い所で大きく脹らんだチャンバー(膨張室)と出口にサイレンサー(消音機)が取り付けられているが、本来のサイレンサーに求められる消音性能はレース車の常として求められず、非常に排気音が大きく、独特の甲高い連続した破裂音を立てるものであった。更なる性能向上にエンジンの水冷化、アルミフレームへの変更などが行われたが、しかし、環境意識の高まりとともにレース専用のオートバイにおいてすらも、2ストロークエンジンの構造に由来する未燃ガスや潤滑用オイルの大気中への排出や騒音が問題視され、効率の良いサイレンサー(排気の消音装置)の装備、小型・軽量な4ストロークエンジンの開発/採用が進み、最近(2005年現在)では4ストロークエンジンの車両の方が販売台数が増えている。
[編集] 類似車種
似た用途のものでは更に軽量化を施して、スピードではなく搭乗者の運転操作技術を主に競うトライアル競技に用いるためのトライアラーがある一方、耐久レースにおいて長距離をひたすら走る(場合によっては公道も走破する)エンデューロレース用の公道走行が可能なエンデューロマシンや、公道走破を重視して不整地でも舗装地でも走破できるデュアルパーパスマシンがある。またデュアルパーパスと重なるが舗装道路での高速走破性やその他の道での広範囲な利用を重視したマルチパーパスがあるがデュアルパーパスとの区分はしばしば曖昧である。
特にエンデューロマシンやデュアルパーパスマシンの場合は、公道走行も可能なように保守部品が取り付けられている事から、一般の人が公道で乗る用途にも利用できるため市販されており、人によってはこちらを含めてモトクロッサーと呼ぶ場合がある。この場合においてマルチパーパスもしばしば同一視される。
なおエンデューロマシンはモトクロッサーに保守部品を取り付け、乗り心地も良くなるようサスペンションが柔らか目にセッティングされてはいるが燃料タンク以外ではモトクロッサーと同じ設計思想に基いている。ただエンジンは耐久力を重視して、近年では軽量化の進んだ4サイクル油冷エンジンや水冷化されたものも普及する傾向が見られる。排気量は余り大きくない物が多い。
マルチパーパスマシンではヨーロッパなどで盛んに開催されるラリーを意識しており、特に整地走破性を重視して、不整地走破性がやや犠牲となっているが、大容量の燃料タンクが積まれている・大排気量の4サイクル水冷エンジンを搭載したり、タイヤが損耗の激しいオフロードタイヤではなく専用の溝の深い舗装道路走行を意識したタイヤが用いられるといった具合で、特に一般車両として市販されている事から、ツーリング用にと熱心に愛好するライダーも多く存在する。
なお、モトクロッサーにスリックタイヤなど舗装された道路向けのタイヤを履かせ行われる競技としてスーパーモタードがあり、こちらでは舗装道路(オンロード)を主体としてオフロードも舗装道路用タイヤで走るために、モトクロッサーのオフロードタイヤが持つ高いダートコースでのグリップ力は期待できないが、逆にこのグリップ力のなさをアピールした演出重視の走りでファン筋を魅了している。