ミネベア 9mm自動拳銃
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9mm拳銃(陸上自衛隊) |
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9mm拳銃 | |
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種類 | 拳銃 |
製造国 | 日本 |
設計・製造 | ミネベア社と大森製作所 (ライセンス生産) |
口径 | 9mm |
銃身長 | 112mm |
ライフリング | 6条右回り |
使用弾薬 | 9mmパラベラム弾 |
装弾数 | 9発 |
作動方式 | ショートリコイル コンベンショナルダブルアクション |
全長 | 206mm |
重量 | 830g |
発射速度 | 40発/分 |
銃口初速 | 345m/s |
有効射程 | 約30~50m |
ミネベア 9mm自動拳銃(みねべあ9みりじどうけんじゅう)は、1982年に採用された自衛隊の制式拳銃。自衛隊では「9mm拳銃」と呼ばれる。(本来なら「拳」は、政府機関が使用出来ない常用外の漢字であるが、自衛隊内では制式呼称「9mm拳銃」と表記される)。
目次 |
[編集] 概要
スイスのSIG SAUER P220をライセンス生産したもの。使用カートリッジは9mm普通弾。
現在の感覚では9発の弾倉容量は少ないが、これは自衛隊の選定作業がアメリカ軍より先行し、ダブルカラムマガジンのP226(1981年開発、83年発売)がまだ開発されていなかったことと、手の小さな日本人の握り易さを考慮した為と思われる。また、もともとスイス軍の正式拳銃として開発された銃であり、当時の軍では拳銃の攻撃用兵器としての価値が低かったことも関係すると思われる。
P220は9mmx19弾のシングルカラムとしてはグリップの前後長が大きいが、これはP220がアメリカへの輸出を考慮して45口径(.45ACP弾)を使用可能なサイズで本体やマガジン(弾倉)が設計されている為である。.45ACP弾より全長の短い9mmx19弾用のマガジンは、後部にU字型のインサートが入ったものとなっている。また、38スーパー、30ルガー口径のものも販売されていた。
9mm拳銃のスライド(遊底)は、前方上部が角張り、後部のセレーション(滑り止めの溝)は幅広で数が少なくなったP220後期型のプレススライドとなっている。
スライドには、
が、それぞれあしらわれているマークと、その横に「9mm拳銃」の文字、シリアルナンバーの刻印が入っている。
伝統的なダブルアクションメカニズムに、オートマチックファイヤリングピンブロッキングシステムを組み込み、マニュアルセフティを廃している。デコッキングレバーを備えているため安全にハンマーを待機位置に戻せることと合わせ、初弾を装填したまま持ち歩き緊急時に安全かつ素早く射撃できる設計コンセプトとなっている。なおシングルアクションによる操作も可能で、主に命中精度を上げたい時などに用いられる。
陸上自衛隊では幹部自衛官、無反動砲の砲手、特科部隊員が使用する。最近では普通科隊員がCQB時に用いる。海上自衛隊では、護衛艦付き立入検査隊や特別警備隊などの船舶突入部隊の他、警務官が用いている。航空自衛隊では基地防衛教導隊他、基地の防護を任務とする部隊が使用する。
[編集] 採用経緯
月刊GUN1996年8月号の記事によると、本装備の採用に至る前は、ブローニングHP、ブローニングDA140、新中央工業M57A1(M1911を参考に9mm弾を使用できるようにし、サイズも小型化したもの)も採用候補に入れられてテストされたといわれている。
[編集] 運用
以前は幹部や砲手などの護身用であったが、最近では一般の普通科隊員がCQB訓練時にサイドアームとして、レッグホルスターで携行することも多くなっている。また、陸上自衛隊のイラク派遣隊員はレッグホルスターに収めていた。
採用当時は先進的な機能を持った拳銃であったが、現在の視点では弱点も散見される。
- 装弾数が9+1発と、CQBなどで使うサイドアームとしては少ない
- マガジンキャッチがグリップ底部にありマガジンが脱落する可能性は低いが、素早い交換が難しい
- フラッシュライトなどを取り付けるためのレールが無いため、拡張性が低い
等である。
もっとも、本銃が採用された1982年においてはライト等を付けた軍用拳銃で近接戦闘をする概念はなく、諸外国の軍用拳銃でもレールを備えたものはなかった。また現在でも、諸外国の一般部隊員が装備する拳銃に、フラッシュライト等を取り付ける例は稀である。
高度な装備を持つ米軍においても、主力拳銃として採用されているM9はレールが付いていないタイプが大部分であり、一部の特殊部隊がレール付きのタイプを(M9以外にSIGやH&K社製品含む)採用しているにすぎない。
近年、タスコジャパンよりフラッシュライト等を取り付け可能な9mm拳銃専用のレールアダプターキットが販売されており、自衛隊の一部の部隊が購入したという話も聞かれる。
[編集] 性能に関する議論
9mm拳銃の品質がP220オリジナルに比べ低いとする意見が一部に存在する。以下例をあげる。
- SIG社製P220に比べて品質が悪くスライドにヒビが入る、撃針が簡単に折れる、精度が不良で初期の輸入品P220のほうが命中する等、問題が多いという点を指摘する声が一部で聞かれる。しかし、これらの情報元は不明であり信憑性には疑問がある。
- 自衛隊では空撃ちが厳禁されている事をもって、日本製P220が脆弱である証拠だとする意見があるが、安全確認等の必要がある場合を除き、不要な空撃ちが禁じられているのは他国の軍でも同様である。また、射撃予習(実弾を使用しない射撃訓練)では、空撃ちを行うことは制限されていない。またリボルバーではともかくオートマチックの銃はリターンスプリングが強力な事もあって、一般的な銃でも空撃ちでファイヤリングピンが折れる事がある(特に競技用途の銃になると1発で折れる事も多い)。
- SIG社によると、構造から材質まで全ての情報を渡しているが最終の調整までは関与しておらず、ライセンス製品の品質については同社は保証していないとする意見がある。しかし、すべての情報が渡されているのであれば、生産者の工作精度や品質管理などに問題がない限り、同程度の製品が製造可能と考えられ、日本製P220の品質を疑う理由にはならない。
- 記念祭等で触れることの出来る9mm拳銃と現行のP220を操作した感触を比較してみると、握り心地からして大きな差を感じると主張する者もいるが、空撃ちだけでは銃の性能のすべてを判断することは不可能であり、また現行のP220のグリップは9mm拳銃のものとはデザインが変更されているため、直接の比較は無意味と考えられる。
[編集] 使用弾
使用するカートリッジは9mmパラベラム弾であり、軍用であるためハーグ陸戦条約に準拠したフルメタルジャケットの弾頭を使用している。興味深いのはフルメタルジャケットでありながら頭部がフラットな弾頭を使用している事で、フルメタルジャケットの範囲内でマンストッピングパワーに考慮した意図が伺われる(ただし、一見してホローポイントではない一般的なFMJ弾頭であっても、AK-74に使用される5.45mm×39弾やSS109小銃弾をはじめとして弾頭の先端に空洞が設けられている場合があり、これらは命中時に変形、横転し人体に多大なダメージを与えられる)。
[編集] 登場する作品
自衛隊の制式拳銃なので下記以外にも自衛隊が出てくる作品には当然ながら登場する。
- 『戦国自衛隊1549』:第三特別実験中隊、ロメオ隊双方が装備。
- 『続・戦国自衛隊』
- 『ガメラ2 レギオン襲来』
- 『亡国のイージス』
- 『機動警察パトレイバー 2 the Movie』:警視庁特車二課の南雲しのぶが使用。また「機動警察パトレイバー」初期OVAにも登場。
- 『戦国自衛隊・関ヶ原の戦い』(日本テレビ-TVドラマ)
- 『SIREN2』:一樹守、永井頼人、三沢岳明、屍人、闇人が使用。ゲーム内で最も良く登場する武器。
- 『最終兵器彼女』
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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