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弾丸 - Wikipedia

弾丸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

拳銃弾 / 左:.45ACP弾と右:9mmパラベラム弾。丸みのある銅色の部分が弾丸。
拳銃弾 / 左:.45ACP弾と右:9mmパラベラム弾。丸みのある銅色の部分が弾丸。
ライフル弾 /上: 12.7x99mm NATO弾、中:ベルトリンクで連結された5.56mm NATO弾で円錐状の銅色の部分が弾丸。右下:比較用の拳銃弾
ライフル弾 /上: 12.7x99mm NATO弾、中:ベルトリンクで連結された5.56mm NATO弾で円錐状の銅色の部分が弾丸。右下:比較用の拳銃弾

弾丸(だんがん)とは、に使用され、それらから発射・推進して主に目標に物理的損傷を与えるもの。材質や形状は用途により多岐に渡るが、基本的に鉛合金の弾芯に銅合金の被甲をかぶせた構造である。

英語ではブレット(bullet [bʊrɪt])。バレット、ビュレットは不正確。

発射薬(パウダー)や銃用雷管(プライマー)と共に薬莢(ケース)に収められたものは実包(カートリッジ Cartridge)、弾薬(アムニション Ammunition、アモ Ammo)という。

目次

[編集] 弾丸の種類

フルメタルジャケット弾(full metal jacket / 被覆鋼弾、完全被甲弾)
貫通性が高い通常の弾丸。弾芯が金属(メタル)の覆い(ジャケット)で覆われているメタルジャケット弾の一つ。
ほとんどのフルメタルジャケット弾は弾芯である鉛をギルディング・メタル(95%、亜鉛5%の合金、即ち真鍮)で覆っている。
軍用ライフルでは、目標衝突時の弾頭変形を防ぎ貫通力を高めるため、このフルメタルジャケット弾が使われる。
メタルジャケット弾にはフルメタルジャケット弾(弾頭を完全に真鍮で覆った弾)とパーシャルジャケット弾(弾頭の先端部分以外を真鍮で覆った弾)があり、パーシャルジャケット弾は目標に衝突した際にメタルに被われていない弾頭先端が変形し破壊力を増す構造で、主に大型動物のハンティング用に用いられる。ハーグ陸戦条約第23条の「不必要な苦痛を与える兵器、投射物、その他の物質を使用すること」(平仮名訳)への抵触を避けるなどの人道上の理由から、軍用弾にはフルメタルジャケット弾が用いられる。ボール弾ともいう。
ソフトポイント (soft point)
弾頭先端がギルディング・メタルで覆われておらず、鉛が剥き出しの弾丸。命中すると柔らかい鉛により弾頭が激しく変形・破砕し、運動エネルギーを完全に目標に伝えることにより、致命的なダメージを与える。鉛が剥き出しの弾丸は、連続発射するとその発射熱により鉛が融解してしまうため、現在軍用では狙撃・練習など一部用途でしか使われておらず、主に狩猟用として利用されている。
ホローポイント (hollow point)
弾頭が凹レンズのように窪んでいる弾丸。人体等に命中すると先端がキノコ状に変形・拡張(マッシュルーミングという)し、運動エネルギーを効率よく目標に与えることにより、大きなダメージを与える。ライフル弾と比べて圧倒的に威力の低いピストル弾によくみられるデザインである。広義ではダムダム弾もこれに分類される。
なお、ほとんどのホローポイントのピストル弾は、建材等の固い目標に命中すると窪みに目標物が詰り、マッシュルーミングを起さず貫通力が上がってしまうので注意が必要である。
徹甲弾(アーマーピアシング armor-piercing bullet)
炭化タングステン劣化ウラン合金や鋼鉄などの硬質で比重が重い材料によって弾芯が作られ、運動エネルギーにより装甲を撃ち抜くための弾丸。弾丸という言葉が使用されるサイズの銃では主に高速徹甲弾 (HVAP) が用いられている。
純銀弾(シルバーブレット)
比重の大きい、堅牢な純銀製の弾丸。銃弾としての性能はピカイチであるが、非常に高価であるため、そもそも消耗品である銃弾には適さない。もったいない物の代表例とされる。対人よりも退魔用として、フィクションの世界で使用されることの方が多い。
同じような銀色の弾頭には「シルバーチップ」と呼ばれる物が存在するが、こちらはアルミニッケル合金を利用したホローポイント弾である。通常の鉛銅ジャケット弾頭より軽量化されていて、同じ装薬量でも高速で射出する。
照明弾
発射されると強いを放つ弾丸。夜間戦闘や信号弾に用いられる。通常は照射のために上空に向けて打ち上げられる。星弾(せいだん)、スターシェルとも呼称する。弾丸と呼ばれるサイズの照明弾は信号銃を除いて存在しない。
曳光弾 (tracer bullet)
発射されると後方に光を曳く、弾道を視認しやすくするための弾丸。機関銃などの照準確認用として通常弾とともに用いられる。飛翔距離と共に内蔵した発火薬が減少して軽くなるため、ある程度の距離を飛翔すると通常弾とは違う弾道を描くため、あくまで目安である。また“残弾あと僅か”を確認するのにも使われる。
たいてい5~7発に1発の割合で(残数確認の場合は残り5発程度の部分に)曳光弾が混入される。燃料タンクなどに着弾した場合、ごくまれに発火させる効果もある。
ゴム弾 (rubber bullet)
弾頭を硬質ゴムで作成した弾丸。多くの場合、弾丸は切れ目の有る円筒状で先端にくぼみがあり、発射されると先端のくぼみが受ける風圧で切れ目に沿って十字形に開いて飛翔する。弾丸の重量やその構造上、有効射程が短く、目標に対して弾丸が貫通することがないので非致死性兵器として扱われる。しかし、至近距離では十分な殺傷力があり、目標にヘビー級プロボクサーのパンチ並みの衝撃を与えるうえ、数m以内では皮膚を貫通する威力のものがほとんどのため、当たり所によっては目標が死亡することも十分あり得る。この特性を生かして大型獣の撃退、警察軍隊による暴徒鎮圧などに用いられる。
エクスプローダー (exploder)
ホローポイントのくぼみに銃用雷管や少量の火薬を埋め込んだもの。目標に命中すると弾頭が爆発的に変形するので、殺傷能力の向上を期待されたが、実際の効果はさほどではなかった。
散弾 (shot)
散弾銃を参照。
フランジブル弾 (frangible bullet)
粉体金属(銅、スズなど)を押し固めた弾丸。
人体は貫通するが壁など固い物質に当ると粉々に砕けるので近接戦闘での跳弾防止、運行中の航空機内での犯罪者制圧に利用される。
フレシェット弾 (flechette)
型の弾体を発射する弾丸。矢は1本とは限らず、散弾銃の散弾代わりに矢型子弾を詰めた実包も存在する。
APFSDSと似たようなプラスチック製サボットを用いるが、APFSDS程の初速が得られず風に流されやすい。小口径であるがゆえにサボットが脱落せず希望しない方向に弾丸が飛翔するので命中精度が期待できないという欠点が目立つ。詳細は外部リンクを参照されたい。
ダムダム弾 (dumdum bullet)
かつて殺傷力の高いといわれていた弾丸のひとつ。弾頭に十字の切れ込みがあり、目標内部で十字に沿って4つに分裂することにより、運動エネルギーを効率よく目標のダメージへと変換する。そのため、人体に残酷な被害を与えるとして1899年にダムダム弾禁止宣言が、次いで1907年にハーグ陸戦条約が結ばれ軍用弾としての使用が禁止された。イギリス軍がインドコルカタ近郊のダムダム兵器工場で初めて作ったことが名前の由来となっている。
ダムダム弾はハーグ陸戦条約第23条に抵触するため戦争での使用は禁止されているが、それに拘束されない狩猟や警察等では、一発で多大なダメージを与えることができ、また対象物内部で弾丸がとまる可能性が高い(貫通による二次被害の軽減)ため、現在でも多く使用されている(いわゆるホローポイント)。
しかしながら現在、かつてよりライフル弾の高初速化がすすみ、通常のフルメタルジャケットでも人体等に命中すればその強力な運動エネルギーに弾丸が耐え切れず、容易に弾芯とジャケットが破壊・分離し、ダムダム弾に匹敵する銃創を引き起こす。最近では貫通力も両立させるための弾薬も開発された。これは弾丸の前後の素材を変え、各素材の密度の違いによって軟目標に入った場合 目標内部で回転しダムダム弾に匹敵する被害をもたらしつつ、硬目標に対しては弾丸前方がマイルドスチール・コアで作られているため通常弾頭より高い貫通力をもたらす。
よって現在ではダムダム弾禁止はほとんど形骸化してしまっている。なお、映画やマンガ等のエンターテイメント作品では通常のフルメタルジャケットに刃物等で弾丸の先端に切れ目を入れて即席のダムダム弾を作る描写がなされているのを時々見かけるが、実際にそのような弾薬を発射すると弾芯である鉛だけが押し出されてジャケットのみが薬室に残されてしまい、次弾以降の発射が大変危険になるので絶対にマネをしてはいけない。
ワッドカッター (wadcutter)
射撃競技用の弾丸。先端が平坦なため、パンチしたように標的に丸い穴を開ける。このため着弾位置の確認が容易である(他の弾丸では紙を指で突き抜くような弾痕になるので分かりにくい)。
ピストン・プリンシプル弾
薬莢そのものに消音効果を持たせた弾丸。薬莢内部にピストンがあり、発射ガスをピストンで受け止める事で弾丸を押しだし、発射ガスを薬莢内部にとどめ、発射音を軽減する構造を持つ。

[編集] 鉛弾問題

現在、狩猟家たちの間で製の弾頭についての問題が持ち上がっている。

鳥は歯を持たず、代わりに食べ物をすり潰すための砂嚢と呼ばれる器官を持っており、これに外部から摂取された砂粒を蓄えている。鳥を撃つための散弾粒のサイズが、砂嚢に蓄えるために鳥が好んで飲み込む砂礫のサイズに近いことから、散弾粒を誤飲して鉛中毒になるという現象が観察されている。このプロセスで鉛中毒になって死亡する野鳥個体は少なくない。

また、鉛中毒によって衰弱した個体や、鉛弾によって仕留められたが放置された獲物などが食物連鎖に乗ることにより、その死骸を食べた猛禽類や哺乳類にも鉛中毒が広まっている。米国では保護動物であるオオイヌワシがこの被害にあっているとされ、同国の狩猟愛好者らは心を痛めている。日本でも北海道においてイヌワシが鉛中毒により死亡した事例が報告されている。

また、放置された発射後の散弾(回収は不可能である)による、鉛による土壌汚染が起きることも指摘されている。

このため日本を含む世界の各地でも狩猟用の鉛弾規制が進められており、代替としてスチール・タングステン・錫・銅等の素材で出来た物が製造されている。当初は、銅弾は柔らか過ぎて銃腔内に銅の層が付着して銃腔内を狭め、スチール弾は硬すぎて鉛散弾仕様の銃腔内を傷つけてしまうため、共に銃身破裂などの問題を起こしやすいとして、鉛弾規制反対の声もかなり聞かれたが、近年ではそれらに対応した銃器の普及も進み、規制反対の声は少なくなっている。ただし、主としてコスト面での課題は残されている。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク


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