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ヘンリエッタ・アン・ステュアート - Wikipedia

ヘンリエッタ・アン・ステュアート

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


ステュアート朝

アンリエッタ
サミュエル・クーパー画

ジェームズ1世
   ヘンリー
   エリザベス
   チャールズ1世
   ロバート
チャールズ1世
   チャールズ2世
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   ジェームズ2世
   ヘンリー
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チャールズ2世
ジェームズ2世
   メアリ2世
   アン
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      チャールズ若僭王
      ヘンリー
メアリ2世
ウィリアム3世
アン
   ウィリアム

ヘンリエッタ・アン・ステュアートHenrietta Anne Stuart, 1644年6月16日 - 1670年6月30日)は、イングランドチャールズ2世およびジェームズ2世の妹、フランスルイ14世の弟オルレアン公フィリップ1世の妃。兄チャールズ2世は彼女のことを“ミネッテ”(Minette、子猫ちゃんという意味)と呼んで可愛がり、フランスでは、アンリエット・ダングルテールHenriette d'Angleterre)、または単にマダムMadame)と呼ばれた。

目次


[編集] 生涯

[編集] 生い立ちから結婚まで

アンリエッタは1644年にチャールズ1世と王妃ヘンリエッタ・マリア(フランス王アンリ4世の娘)の子として生まれた。1642年清教徒革命が起こり、内乱の末1646年チャールズはスコットランド側に投降するに至る。同年、1646年に母ヘンリエッタ・マリアは、チャールズやヘンリエッタたち子供を連れて実家のあるフランスに亡命した。その後、1660年にチャールズがチャールズ2世として即位したため、ヘンリエッタはイングランドに帰国した。ヘンリエッタは美しく、優れた話術を持った王女に成長していた。イングランド宮廷でもヘンリエッタの賞賛者は多かった。

その評判を聞きつけたルイ13世の王妃アンヌ・ドートリッシュは、ヘンリエッタをぜひ次男フィリップの妻にと熱心に申し込みをした。ヘンリエッタ・マリアも、それほど熱心に言ってくれるのなら、と、この縁談が成立した。

[編集] ルイ14世との不倫関係と宮廷生活

ヘンリエッタは1661年3月31日、母方の従兄に当たるオルレアン公フィリップと結婚した。しかし、夫は男色家であり、彼女に性的関心を示さなかった。淋しさから、ヘンリエッタは義兄でもう1人の従兄ルイ14世と不倫関係になった。王との密会をカムフラージュするため、侍女のルイーズ・ド・ラヴァリエールが王の偽の愛人となった。しかしそのうち、ルイ14世は本当にルイーズに恋してしまった。ヘンリエッタはショックを受け、傷ついたが、もともと義理の兄妹として許されない関係という事は承知していた事もあり、ルイ14世の事はあきらめた。その後、彼女は夫フィリップの愛人と噂されているギシェ公を新しい情夫にした。

ヘンリエッタは教養豊かで、若く才能に恵まれた芸術家達の育成と保護に励んだ。ヘンリエッタのサロンには、哲学者画家文学者音楽家が集まり、芸術論について語り合った。

2人の間にマリー・ルイーズ、フィリップ・シャルル、アンヌ・マリーと3人の子供達が生まれても、夫婦仲は改善されなかった。フィリップはやがてサン・クルーにある夫妻の館にまで、お気に入りの美男の恋人ロレーヌ公フィリップとその仲間達を連れ込むようになり、妻の存在を無視して大騒ぎをしていた。ついに思い余ったヘンリエッタは、ルイ14世にこの苦境を訴えた。ヘンリエッタの訴えを聞いた王は、フィリップとヘンリエッタの不仲が微妙なイングランドとの関係に悪影響を与える事を恐れた。既にルイ14世はチャールズ2世から、理由はわからないが妹が思い悩んでいる様子で心配だ、という手紙を受け取っていた。王はすぐにロレーヌ公をマルセイユ海上の孤島シャトー・ディフに投獄し、文通を一切禁止した。

[編集] ドーバー条約の締結と突然の死

1668年12月、ルイ14世はオランダと対抗するため、イングランドと同盟を結ぶことを決め、そのための協力をヘンリエッタに求めた。王とヘンリエッタとコルベールの3者の間で、同盟案が綿密に練られた。同盟案がまとまり、1670年5月にヘンリエッタは密使としてイングランドに向けて旅立った。兄チャールズ2世は、仲の良い妹との再会を大変に喜び、5月22日にヘンリエッタの努力によって、フランス・イングランド間でドーバー秘密条約が結ばれた。

チャールズ2世とヘンリエッタは贈り物の交換をした。チャールズ2世からは銀器・絵画宝石コッカー・スパニエルが、ヘンリエッタからはネル・グウィンが生む子供のための細々とした品々が贈られた。大任を果たし終え、ヘンリエッタはフランスに戻った。その年の6月、サン・クルーの館でチコリを飲んでいたヘンリエッタは、突然苦しみ出し、そのまま急死してしまった。ヘンリエッタがイングランドに旅立つ前に釈放されてローマにいたロレーヌ公が、ヘンリエッタの召使を買収して、ローマで入手した毒薬をティーカップに塗らせて復讐しようとした、という噂が流れたが、本当の死因は潰瘍による重い腹膜炎だった。

[編集] ヘンリエッタの子供達

1661年の結婚以後、1669年までにヘンリエッタは計8回の妊娠をしているが、そのうち1663年1666年、そして1667年1668年の計4回流産をしていて、無事成人したのは1662年に生まれたマリー・ルイーズと、1669年に生まれたアンヌ・マリーの2人だけである。1664年には長男フィリップ・シャルルを出産するが、わずか2歳でこの世を去っている。以下ではヘンリエッタの成長した2人の娘のその後と子孫達について記す。

スペイン王カルロス2世1679年11月18日に結婚するも、病弱で後継者をもうけきれない夫の没後を巡って、後継者をオーストリア・ハプスブルク家から迎えようと画策するカルロスの生母・摂政王太后マリアナのオーストリア派と、カルロスの異母姉であるルイ14世妃マリア・テレサを通じて王位継承権がフランス王家にあると主張するフランス派の争いに巻き込まれた。1689年、26歳の若さで死亡するが、オーストリア派による毒殺とされている。なお、スペインではマリア・ルイサ・デ・オルレアンMaría Luisa de Orleáns)と呼ばれた。
1684年4月10日に、後のサルデーニャ王で当時はサヴォイア公であったヴィットーリオ・アメデーオ2世と結婚。カルロ・エマヌエーレ3世をはじめ、6人の子供が生まれている。なお、長女のマリー・アデライードは、ルイ14世の孫ブルゴーニュ公ルイと1697年12月7日に結婚し、後のルイ15世の母となった。よってアンヌ・マリーは、ルイ15世の母方の祖母である。
ウィキメディア・コモンズ


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