バファリン
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バファリン(Bufferin)は、米国ブリストル・マイヤーズ社が1950年代に開発・発売した解熱鎮痛剤の商品名である。オリジナルは主成分のアセチルサリチル酸(アスピリン)と緩衝制酸剤ダイアルミネート(アルミニウムグリシネート・炭酸マグネシウム)を合剤にしたものであり、日本では1963年に提携を結んだライオン歯磨(歯痛にも効く事からとされている)が大衆薬として販売開始[1]し、主成分を変更・追加した製品群を展開して現在までロングセラー製品となっている。1980年にライオン油脂と合併したライオンが現在製造販売を行っている。
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[編集] 特徴
アスピリン単体の解熱剤に比べて胃に負担がかからないことが最大の特徴。
サリチル酸系の解熱剤は素早い効果が期待されるが、胃細胞に取り込まれるとプロスタグランジン生産が抑制され、胃酸分泌制御・胃粘膜保護も同時に抑制するため、体質によっては胃痛や胃潰瘍を引き起こす。その問題を解決するために、バファリンはアセチルサリチル酸を緩衝制酸剤で包み、胃にアセチルサリチル酸が吸収されないようにすることで問題を克服した。
アスピリンとアルミニウム・マグネシウムという比較的原始的な成分であるため販売価格や製造コストが安価であり、かつ成分が広く知られている事から保健室・医務室や航空会社の機内サービスなど幅広い公共施設に常備されている点もロングセラーに拍車をかけている。
BMS社が販売する米国では、日本ほど勢いのある有力な製品ではなくなっているが現在もOTCとして手頃な価格で入手できる。
[編集] 日本での製造・販売
日本ではライオン歯磨(当時)が、米ブリストル・マイヤーズ社(現・ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)社)から技術導入(輸入)を行い、ライオン歯磨が販売していた。後に、ライオン歯磨(合併後はライオン)が製造を担当し、発売元は万有製薬が行った。1980年頃にライオンとBMS日本法人(現在のブリストル・マイヤーズ株式会社)の合弁会社『ブリストルマイヤーズ・ライオン株式会社』であるが、ライオンが製造発売元となり、ライオンが販売する形態が20年以上続いた後、2004年に医療用についてはブリストル製薬(当時)が販売するようになる。さらに2007年7月をもって両社は合弁関係を解消と同時に「バファリン(Bufferin)」の中国を除くアジア・オセアニア地域の商標権をBMS社からライオンに譲渡(実質的には売却)することを決定した。
これにより、日本など中国を除くアジア・オセアニア地域では、2007年8月よりライオンが製造・販売を行うことになり、ブリストルマイヤーズ・ライオンは2007年12月末に清算された。また、日本のバファリンのCMに「LION 医薬品」といった、ライオンのマークの表示がされるようになった。(前回のCMでは最後に表示されていたが、2008年3月から放映されている女優の内田有紀を起用した新CMでは「バファリンA」が登場する時に表示されている。)
また、2008年5月に医療用の「バファリン81mg錠」並びに「バファリン330mg錠」の販売元をブリストル・マイヤーズからエーザイに(2008年7月より)変更するとともに、ライオンとエーザイにおいて、日本国内における独占的販売権許諾における契約を締結した。
[編集] 現在の製品群
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[編集] 大衆薬(OTC)
アセチルサリチル酸含有製剤は、アレルギー症状(ショックやアスピリン喘息など)の既往症・またはそのおそれの有る人・15歳未満の小児・出産予定日12週以内の妊婦は服用禁忌である。また、空腹時の服用も避けるべきである。なお、血栓予防を目的として市販のバファリンもしくは医療用バファリン330mgを服用しても、含有量が大量であるため効果はほとんど無く(アスピリンのジレンマなどと言われている)、胃に負担をかけるので却って逆効果である。また現行の小児用バファリンはアセチルサリチル酸が元々含まれないので無意味である。
- (新)バファリンA
- 2000年から発売されている。1錠あたりの主成分はアセチルサリチル酸330mgと緩衝制酸剤ダイバッファーHT(合成ヒドロタルサイド)100mgである。
- 制酸剤をオリジナルのダイアルミネートからダイバッファーHTに差し替えた事により、錠剤の大きさが一回り程小型化した。これは同年タイレノール(アセトアミノフェン)が日本の大衆薬に参入する事による対抗策と見られている。2000年から15歳未満の小児の服用は禁忌となっている。
- バファリン顆粒
- 2007年9月発売。「バファリンA」の2つの有効成分(アセチルサリチル酸660mg、ダイバッファーHT(合成ヒドロタルサイド)268mg)を飲みやすいシトラス味の顆粒にしたもの。スティック包装になっているため、携帯性にも優れている。
- バファリンプラス
- 2002年から発売されている。早く効く事を念頭に、1錠あたりの主成分はアセチルサリチル酸250mgと解熱鎮痛効果の高いアセトアミノフェン150mg、鎮痛補助成分としてアリルイソプロピルアセチル尿素と無水カフェインが加えられている。なお主成分はバファリンシリーズと同じくライオンが製造・販売している解熱鎮痛剤「エキセドリン」と同一である。
- バファリンルナ
- 2006年発売。主に女性の生理痛や頭痛に即効性があるように、主成分を中枢神経の鎮痛効果が高いアセトアミノフェンとイブプロフェンにしたもの。
- 小児用バファリン
- ライ症候群の懸念から、主成分をアセチルサリチル酸ではなく、アセトアミノフェンとしたもの。飲み易いようにサッカリンなどの甘味料が加えられている。錠剤型の「 - CII」と「 - チュアブル」がある。
[編集] 小児用かぜ薬
15才未満の小児を対象としたシリーズ。アセトアミノフェンを解熱鎮痛成分とし、マレイン酸クロルフェニラミンや塩酸メチルエフェドリンなどを配合したもの。
- バファリンジュニアかぜ薬(錠剤)
- キッズバファリンシロップ/キッズバファリンかぜシロップ
- キッズバファリンせき止めシロップ/鼻炎シロップ
[編集] 医療用医薬品
医療用はブリストル・マイヤーズ株式会社が販売している。(2008年7月より、エーザイ株式会社が販売を行う。)
- バファリン330mg錠(従来の名称および旧大衆薬「バファリン」)
- バファリン発売当初のオリジナルの配合(添加物などは変更されている)であり、主成分はアセチルサリチル酸330mgとダイアルミネート150mg(アルミニウムグリシネート50mg・炭酸マグネシウム100mg)である。
- 一部のドラッグストアや薬局で零売として、医師の処方箋無しで購入でき、またその殆どが「バファリンA」よりも一錠あたりの単価が安く販売されている。(アセチルサリチル酸は「バファリンA」と同一であるが、制酸剤が従来のままであるため錠剤が大きい。)
- バファリン81mg錠(2000年11月迄の名称「小児用バファリン」)
- 主成分はアセチルサリチル酸81mgとダイアルミネート33mg(アルミニウムグリシネート11mg・炭酸マグネシウム22mg)である。
- 少量のアセチルサリチル酸(アスピリン)を継続服用することで、血栓の発生を抑制できる事から2000年に承認されて用いられている。
- 「(医療用)小児用バファリン」の名称だった当時は、文字通り小児(15歳未満)の解熱鎮痛消炎剤として使われてきたが、予てから米国でインフルエンザや水疱瘡などの解熱にサリチル酸系医薬品を服用した小児がライ症候群を発症するリスクが指摘されていた為、2000年に「(医療用)小児用バファリン」の製造承認を取り下げ、入れ替わりに抗血小板剤として内容は同一の「バファリン81mg錠」が承認され販売されている。したがって、医療機関での小児の解熱には現在おもにアセトアミノフェンやイブプロフェン製剤が処方されている。
[編集] 関連項目
[編集] 脚注
- ^ 成分は現行の「医療用バファリン錠330mg」相当。