ナインチェ・プラウス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナインチェ・プラウス(オランダ語:Nijntje Pluis。以下ナインチェ)は、日本においてうさこちゃんまたはミッフィー(英語:Miffy)として知られる、ウサギの女の子のキャラクターであり、オランダのデザイナー、ディック・ブルーナが描いた絵本に主人公として登場する。ナインチェの絵本は2004年時点で全世界で8,500万部を売る。
目次 |
[編集] ナインチェとディック・ブルーナ
作者のブルーナは元々、オランダの抽象美術運動「デ・ステイル」の傾向を色濃く受け、単純明快な色とデザインによる書籍装丁などを手がけるデザイナーであった。そして、当時は写実的な絵柄作りが当然とされていた絵本の挿し絵に、自分のデザインと同様の、単純で抽象化された線と原色の色遣いとを用いる手法を持ち込み、擬人化された子ウサギの主人公たちの日常を描写した新しいタイプの絵本を書き上げた。ブルーナはその主人公に、「ウサギ」を意味するオランダ語 konijn に接尾語 -tje (小さく愛らしいもの)を付けるなどして、 Nijntje という名前を与えた。これが、ナインチェの誕生である。
初期のナインチェは現在のものとはキャラクターデザインが異なる。1963年に現在のデザインに近いものに改定された。
[編集] 名前
日本でナインチェは、母国と同じ名で呼ばれることはほとんど無く、以下の2種の内いずれかの名で呼ばれる。
ただし、日本においてもナインチェという名前がまったく使用されていない訳ではない。例えばフェリシモの商品カタログ「ミッフィーとおともだち」(2003年に休刊)では、オランダ直輸入のキャラクター商品に対して「ナインチェ」が使われていた。また、ハウステンボスには、ナインチェ関連商品専門の売店「ナインチェ」がある。
なお、Nijntje に対するカナ転写には、ナインチェとネインチェの両者が見受けられ[1]、福音館書店のサイトでは「ネインチェ」と表記されている[2]。
また、Pluis に対するカナ転写には、多くプラウスが用いられており、上記の福音館書店のサイトでも「プラウス」と表記されている[2]。しかし、オランダ語の母音 ui の発音は、日本語のそれにはまったく存在しないものであるため、転写は非常に難しく、統一された転写規則が存在しない。しかし、多くの場合「アイ」と転写されるため、この慣用に従えば「プライス」となる[3]。ui を同様に「アウ」と転写する例として、他に「Huis Ten Bosch → ハウス・テン・ボス」がある。
ナインチェの絵本は世界約40ヶ国語に翻訳されて親しまれているが、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクではオリジナル名である「ナインチェ」の名前で発行されている。「ミッフィー」とは英語及び英語からの訳による版で見られる名前である。ただし英語での展開の広さ、日本では講談社による販路の大きさや出版媒体の多彩さから、こちらの名前の方が広く普及している。ブルーナ自身もナインチェが「ミッフィー」として認知されている現状を肯定している(話によれば、最初の英訳時にブルーナとイギリスの翻訳者が直接協議した)、と言われる。
日本では、1970年代頃の生まれを境に、「うさこちゃん」の方が馴染み深い層と「ミッフィー」がより身近である層とに分かれるという見方もある。
2005年4月現在、日本での絵本のタイトル数は福音館書店刊行の「うさこちゃん」が14冊、講談社刊行の「ミッフィー」が12冊。売上上位3冊のトータル部数は「うさこちゃん」が537万部、「ミッフィー」が17万5000部と「うさこちゃん」が圧倒するが、キャラクターブームに伴って他業種からキャラクターグッズが相次いで発売され、近年では「ミッフィー」の方が身近になっているといわれる[4]。
[編集] キャラクター
- ナインチェ・プラウス (Nijntje Pluis);ふわふわ うさこちゃん(福音館書店)、ミッフィー・バニー(講談社)
- 主人公のウサギの女の子。ふわふわ家の第1子。
- 両親とペットとの3人+1匹暮らし。ただし、『うさこちゃんとあかちゃん』では第2子が誕生するため、4人+1匹となる。
- オランダで最初の絵本(『ちいさなうさこちゃん』と『うさこちゃんとどうぶつえん』の2冊)が出版された1955年6月21日がナインチェの誕生日という設定。
- 初期には性別は設定されていなかった。
- 口のバッテン(×)は口と鼻の合体したものである。
- 原語名の姓は「ふわふわ」の意。
- ファデル・プラウス (Vader Pluis);ふわふわさん(福音館書店)、おとうさん(講談社)
- ナインチェの父。
- ナインチェと異なり、口部の表現はバッテンに横棒を付け足した、線三本で表現されるアスタリスク風になっているが、これは「しわを表現した」とのことである。なお、以下大人のキャラクターはみなこの「三本型」である。
- 原語名は「ふわふわ おとうさん」の意。
- ムデル・プラウス (Moeder Pluis);ふわおくさん(福音館書店)、おかあさん(講談社)
- ナインチェの母。
- 原語名は「ふわふわ おかあさん」の意。
- オパ・プラウス (Opa Pluis);おじいちゃん(福音館書店・講談社とも)
- ナインチェの祖父。趣味は大工仕事。
- 原語名は「ふわふわ おじいちゃん」の意。
- オマ・プラウス (Oma Pluis);おばあちゃん(福音館書店・講談社とも)
- ナインチェの祖母。趣味は編み物。『ミッフィーのおばあちゃん』にて亡くなる。
- 原語名は「ふわふわ おばあちゃん」の意。
- トラインおばさん (Tante Trijn);ふんわりふわこさん(福音館書店)、アリスおばさん(講談社)
- ナインチェのおば。ふわふわ家の近所に住む。料理上手。
- フリゲニルおじさん (Oom Vliegenier);おじさん(福音館書店)
- ナインチェのおじ。職業はパイロット。
- 赤ちゃん(本名不詳);赤ちゃん(福音館書店)
- 『うさこちゃんとあかちゃん』で生まれた赤ちゃん。ふわふわ家の第2子。
- スヌッフィ (Snuffie);くんくん(福音館書店)、スナッフィー(講談社)
- ふわふわ家で飼われているイヌ。ただし「くんくんシリーズ」中ではくんくんの飼い主は人間の奥さんとなっている。
- ニナ (Nina);メラニー(講談社)
- ナインチェの友だちの女の子。外見はナインチェにそっくりだが、色が茶色。
- 子供なので口はバッテン型。
[編集] ナインチェ・作品一覧
[編集] 福音館書店の邦訳
- ちいさなうさこちゃん
- うさこちゃんとうみ
- うさこちゃんとどうぶつえん
- ゆきのひのうさこちゃん
- うさこちゃんとゆうえんち
- うさこちゃんのたんじょうび
- うさこちゃんひこうきにのる
- うさこちゃんのにゅういん
- うさこちゃんのおじいちゃんとおばあちゃん
- うさこちゃんがっこうへいく
- うさこちゃんおとまりにいく
- うさこちゃんとじてんしゃ
- うさこちゃんとあかちゃん
- うさこちゃんのはたけ
- うさこちゃんとふえ
- おかしのくにのうさこちゃん
2007年4月には、福音館版の邦訳『うさこちゃんとふえ』と『おかしのくにのうさこちゃん』が出版された。
[編集] 講談社の邦訳
- ミッフィーどうしたの?
- ミッフィーとメラニー
- ミッフィーのおばあちゃん
- ミッフィーのおばけごっこ
- ミッフィーのたのしいテント
- ミッフィーのたのしいびじゅつかん
- ミッフィーのてがみ
- ミッフィーのなにしているの?
- ミッフィーのあれ?だあれ?
- ミッフィーのおうち
- ミッフィーのゆめ
- ミッフィーのまるさんかくしかく
- ミッフィーのかぞえていくつ1・2・3
- ミッフィーとおどろう
- まほうつかいミッフィー
- ミッフィーのいちにち
- ミッフィーのおばけごっこ
- ミッフィーのとけいあそび
[編集] テレビ番組
5分番組「アニメ ブルーナの絵本」(2Dアニメ)がオランダで制作され、1993年4月5日から1994年4月1日までNHK教育テレビで放送された。ナレーションは長沢彩。全52話だが、そのうち5本は未放送。引き続き1994年4月9日から1994年10月29日までNHK衛星第2テレビジョンでも放送され、未放送エピソードのうち4本(「シンデレラ」「ポピーさんのおかいもの」「こねこのネリー」「こうつうしんごう」)が放送された。残りの1本「なんでもできるよ」はビデオソフトにのみ収録されている。1997年4月8日から1998年10月2日には同タイトルの続編が放送された。監督は西内としお。全30話。ビデオソフト化のさいは「ブルーナのおはなしちえあそび」に改題されている。これらは、「母と子のテレビタイム」や「ニャンちゅうワールド放送局」内でも放送されている。
その後「ミッフィーとおともだち」として独立し、2003年には3Dアニメーションが制作された。全65話。このアニメは現在もテレビ放送されているほか、DVDも発売されている。ミッフィーの声は薄井千織。その他の声とナレーションは兵藤まこ。2007年度現在、毎週土曜日午後5時40分~45分 NHK教育テレビジョンで放送されている。
また、2007年9月6日から28日まで、「ミッフィーのせかいりょこう」がNHK教育テレビジョンで毎週木・金曜日午前7時15~25分に放送。全4話。ミッフィーの声は酒井乃碧、ナレーションとその他の声は兵藤まこ。
[編集] DVD
[編集] ミッフィーとおともだちシリーズ
- ミッフィーのお誕生日
- わんわん!スナッフィー
- あそびにいきましょ
- つくったのなあに?
- こぐまのボリス
- ミッフィーとおかあさん
- ふしぎね どうして?
- なかよし うれしいな!
[編集] CD
- ミッフィー どうようパーティー
- ミッフィー はじめてのえいごのうた
[編集] 豆知識
- ナインチェ誕生45周年を迎えた2000年に、ナインチェを「世界で最もバースデーカードを貰ったキャラクター」としてギネスブックに登録しようという呼びかけが行われ、世界から約38000枚のバースデーカードが届けられギネスブックに掲載された。
- ナインチェ誕生50周年を迎えた2005年にも同様の呼びかけが行われ、世界43ヶ国から39670枚のバースデーカードが届けられ記録を更新した[5]。
- ナインチェ誕生50周年を記念して50 years with miffy ミッフィー展が開催され、日本未刊行の絵本『ちいさなうさこちゃん』初版から、近作『うさこちゃんのはたけ』までのスケッチや原画、また約40ヶ国で読まれている各国の翻訳本などが紹介された。
- ナインチェ誕生50周年を迎え、クック諸島発行、オーストラリアのパース造幣局鋳造で誕生50周年記念コイン(金貨、銀貨)が限定発売された。また2005年、オランダ郵政から、ナインチェの切手が発行されている。
[編集] 企業への起用
- 協和銀行・あさひ銀行(現りそな銀行及び埼玉りそな銀行)
- フジパン
- ミサワホーム
- 王子ネピア「ネピア」
- コダック
- 日本エアシステム(現日本航空インターナショナル) ナインチェに限らず、ブルーナのキャラクターを全般的に採用。
- 大阪ガス
- ユースキン製薬
- ローソン 商品購入やローソンカード加入者にミッフィーグッズのプレゼント。ただし応募用紙にはうさこちゃん書籍からとして画像が載っている。
- サントリーフーズ 「なっちゃん」 ペットボトル附属のおまけや抽選プレゼントなどに広く起用される。
- KLMオランダ航空 2000年に「日蘭友好400年記念」として日本-オランダ間のフライトの機内販売として、客室乗務員の制服を着たぬいぐるみを登場させた。
[編集] 脚注
[編集] 外部リンク
- De officiële Dick Bruna site 公式サイト(オランダ語版)
- The official Dick Bruna site 公式サイト(日本語版)
- The official Dick Bruna site 公式サイト(英語版)
- ぶるーな倶楽部 ライセンシー企業・関連企業などによる組織
- ブルーナ×ブルーナ オフィシャルオンラインショップ
- miffyhouse オフィシャルオンラインショップ
- "We love miffy" 日本のファンによるサイト
- ミッフィーチャンネル ナインチェのミュージカルやイベントの情報サイト
- miffyの素顔に迫る