ジョン・テューダー
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ジョン・テューダー(John Tudor , 1954年2月2日 - )は、アメリカメジャーリーグで活躍した投手。左投左打。 アメリカニューヨーク州出身。
[編集] 人物・来歴
1976年のドラフト会議でボストン・レッドソックスから3巡目に指名され、入団。 1979年にメジャー昇格し、8月16日に初登板。 レッドソックスの本拠地フェンウェイ・パークは、「グリーン・モンスター」があるとは言え左翼が狭く、左投手には不利な球場であり、歴史的に左腕投手が苦労するが、1982年と1983年には2年連続で13勝を挙げる。 1984年はピッツバーグ・パイレーツに移籍し、この年も12勝をあげる。
1985年にはセントルイス・カージナルスに移籍。 シーズン序盤は苦しみ、5月の時点で1勝7敗防御率3.74の成績で、ローテーション落ち間近と思われたが、そこから奮起。 以後はなんと20勝1敗、防御率1.16と見違えるような成績を残し、シーズン通算で21勝8敗、防御率1.93という大活躍でチームの地区優勝に貢献。 例年ならば幾多のタイトルを獲得して、サイ・ヤング賞に選ばれてもおかしくない好成績だが、この年はドワイト・グッデン(ニューヨーク・メッツ)が24勝4敗、防御率1.53という途方もない成績を残したため、何のタイトルも得られなかった。 6月以降の4か月間であげた10完封はリーグ1位で、メジャー全体でも10完封は1975年のジム・パーマー(ボルチモア・オリオールズ)以来10年ぶりであった。 これ以後、年間10完封を記録した投手は2007年終了時点でいない。現在は投手の分業化がより進んでおり、1990年以後では最高でもシーズン5完封でしかなく、1985年のテューダーがメジャー最後のシーズン10完封投手となってしまう可能性は高い。
この年終盤には、メッツと激しい地区優勝争いを繰り広げる中で、9月の最初の2先発でいずれも完封勝利。 9月11日にグッデンと投げ合って、0-0のまま延長戦に突入。 グッデンは降板し、リリーフしたジェシー・オロスコから味方のホームランで1点を奪い、テューダーはそのまま10回も投げ、3試合連続完封勝利をマーク。 さらに2勝をあげ、最終登板では再びメッツを10回まで完封したが、味方打線ももロン・ダーリングに抑えられ、11回に救援した投手が打たれ、月間4完封勝利はならなかった。
ドジャースとのナ・リーグチャンピオンシップシリーズ(NLCS)では第1戦に先発して敗戦投手。チームは第2戦も敗れ、連敗スタートとなったが、第3戦に勝った後、第4戦で勝利投手となり、2勝2敗のタイに戻した。 チームは第5戦、第6戦と勝ってワールドシリーズ進出を果たす。
カンザスシティ・ロイヤルズとのワールドシリーズでは、第1戦で勝利投手となり、第4戦ではロイヤルズ打線を完封。 チームはこの時点で3勝1敗とロイヤルズを追い込んだが、そこから第6戦での一塁塁審ドン・デンキンガーの「世紀の誤審」で敗れ、3勝3敗のタイとなる。 迎えた第7戦ではそのデンキンガーが球審を務める中、テューダーが先発。 ロイヤルズ打線に序盤に捕まり、5点を失って3回に降板。 試合はカージナルスの監督ホワイティ・ハーゾグと救援したウォーキーン・アンドゥハーが退場となる等荒れ模様で、打線もブレット・セイバーヘイゲンに完封され0-11で大敗。
以後は「普通の投手」に戻り、1986年は13勝7敗、防御率2.92。 1987年には、メッツとの試合中、登板しておらずダグアウトに居たところ、ファウルフライを追ったメッツの捕手バリー・ライオンズがカージナルスのダグアウトに突っ込み、テューダーは激突して足を骨折。 その影響で16試合の先発に終わるが、その中で10勝(2敗)し、チームのリーグ優勝に貢献。 サンフランシスコ・ジャイアンツとのNCLSでは第2戦で敗戦投手となったが、2勝3敗で迎えた第6戦で勝利投手となる。チームは第7戦に勝ってワールドシリーズに進出。 ミネソタ・ツインズとのシリーズでは第3戦で勝利投手となるが、3勝2敗と王手をかけた第6戦で敗戦投手。 チームは第7戦に敗れ、またしてもワールドシリーズ制覇を逃した。
1988年には故障で開幕から3週間出遅れる。それでも、21試合先発で、その時点でリーグ1位の防御率2.29をマークしていたが、四番打者ボブ・ホーナーの不調・故障等で打線の援護がなく、6勝5敗。フェルナンド・バレンズエラの故障で左腕投手の補強を急務とするロサンゼルス・ドジャースと利害が一致し、8月16日にドジャースの主砲ペドロ・ゲレーロとの交換トレードで移籍。 ドジャース移籍後も9登板で4勝をあげ、チームの地区優勝に貢献。 防御率1位のタイトルはカージナルス時代のチームメイト、ジョン・マグレーンが獲得したが、こちらも打線の援護がなく、2.18の防御率で5勝9敗に終わっていた。
メッツとのNLCSでは、ドジャースの1勝2敗で迎えた第4戦(シェイ・スタジアム)に先発し、グッデンと対戦。 この試合はまれに見る熱戦となった。 ドジャースは初回に2点を先制するが、テューダーが4回に3点を失い、メッツはさらに6回にも1点を追加し、8回を終わって4-2とリード。 グッデンの出来からして、このままメッツが王手をかけると思われたが、レギュラーシーズンでわずか3本塁打のマイク・ソーシアが、被本塁打わずか8のグッデンから起死回生の同点2ランホームランを打ち、延長戦に突入。 ドジャースは延長12回の死闘を制し、第7戦までもつれたシリーズを制し、リーグ優勝を果たした。 オークランド・アスレチックスとのワールドシリーズでは第3戦に先発したが、肩を痛めて2回に降板。 チームは4勝1敗でアスレチックスを下して、自身初のワールドシリーズ制覇を果たすが、この故障、さらに肘も痛め、翌年は1勝も挙げられず、解雇となった。 1990年にはカージナルスと契約。 この年最下位に終わったチームにあって、12勝4敗、防御率2.40の好成績をあげてカムバック賞を受賞するが、この年限りで現役を引退。
[編集] 受賞歴・記録
- カムバック賞1回(1990年)
[編集] 年度別成績
年 | 球団 | 勝利 | 敗戦 | 防御率 | 登板 | 先発 | 完投 | 完封 | セーブ | 投球回 | 被安打 | 失点 | 自責点 | 被本塁打 | 与死球 | 与四球 | 奪三振 |
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1979年 | BOS | 1 | 2 | 6.43 | 6 | 6 | 1 | 0 | 0 | 28.0 | 39 | 23 | 20 | 2 | 0 | 9 | 11 |
1980年 | BOS | 8 | 5 | 3.02 | 16 | 13 | 5 | 0 | 0 | 92.2 | 81 | 35 | 31 | 4 | 3 | 31 | 45 |
1981年 | BOS | 4 | 3 | 4.58 | 18 | 11 | 2 | 0 | 1 | 78.2 | 74 | 44 | 40 | 11 | 3 | 28 | 44 |
1982年 | BOS | 13 | 10 | 3.63 | 32 | 30 | 6 | 1 | 0 | 195.2 | 215 | 90 | 79 | 20 | 8 | 59 | 146 |
1983年 | BOS | 13 | 12 | 4.09 | 34 | 34 | 7 | 2 | 0 | 242.0 | 236 | 122 | 110 | 32 | 4 | 81 | 136 |
1984年 | PIT | 12 | 11 | 3.27 | 32 | 32 | 6 | 1 | 0 | 212.0 | 200 | 81 | 77 | 19 | 1 | 56 | 117 |
1985年 | STL | 21 | 8 | 1.93 | 36 | 36 | 14 | 10 | 0 | 275.0 | 209 | 68 | 59 | 14 | 5 | 49 | 169 |
1986年 | STL | 13 | 7 | 2.92 | 30 | 30 | 3 | 0 | 0 | 219.0 | 197 | 81 | 71 | 22 | 1 | 53 | 107 |
1987年 | STL | 10 | 2 | 3.84 | 16 | 16 | 0 | 0 | 0 | 96.0 | 100 | 43 | 41 | 11 | 1 | 32 | 54 |
1988年 | STL / LAD | 10 | 8 | 2.32 | 30 | 30 | 5 | 1 | 0 | 197.2 | 189 | 60 | 51 | 10 | 1 | 41 | 87 |
1989年 | LAD | 0 | 0 | 3.14 | 6 | 3 | 0 | 0 | 0 | 14.1 | 17 | 5 | 5 | 1 | 0 | 6 | 9 |
1990年 | STL | 12 | 4 | 2.40 | 25 | 22 | 1 | 1 | 0 | 146.1 | 120 | 48 | 39 | 10 | 2 | 30 | 63 |
通算 | 12年 | 117 | 72 | 3.12 | 281 | 263 | 50 | 16 | 1 | 1797.0 | 1677 | 700 | 623 | 156 | 29 | 475 | 988 |
※太字はリーグ最多。
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3 スティーブ・サックス / 5 マイク・マーシャル / 7 アルフレンド・ グリフィン / 9 ミッキー・ハッチャー / 10 デーブ・アンダーソン / 12 ダニー・ヒープ / 14 マイク・ソーシア / 17 リック・デンプシー / 21 トレーシー・ウッドソン / 22 フランクリン・スタブス / 23 カーク・ギブソン / 26 アレハンドロ・ペーニャ / 30 ジョン・チューダー / 31 ジョン・シェルビー / 33 ジェフ・ハミルトン / 37 マイク・デービス / 38 ホセ・ゴンザレス / 49 ティム・ベルチャー / 50 ジェイ・ハウェル / 51 ブライアン・ホルトン / 54 ティム・リアリー / 55 オーレル・ハーシハイザー 監督 2 トミー・ラソーダ |
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