ギフト (テレビドラマ)
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『ギフト』は、1997年4月16日から6月25日の毎週水曜21:00~21:54に、フジテレビ系列で放映された連続テレビドラマ。ただし、初回は21:02~22:24、最終回は21:03~22:24に拡大して放送。
全11回、木村拓哉主演。飯田譲治と梓河人の共著によるノベライズもある。飯田はこのドラマの脚本家でもある。
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[編集] 概要
木村拓哉が演じる記憶喪失の青年の葛藤を描く社会派サスペンスドラマ。当時は恋愛ドラマの人気が高かったため、異色のテーマ設定だった。1970~80年代のチープさや独特の怪しげな雰囲気を再現している。壮大なテーマを封じ込めた飯田譲治の脚本や、木村主演のドラマとしては珍しく恋愛要素を中心に持ってこなかった点、コミカルな演出面なども高く評価されいている。また共演者やゲストも、実力派やテレビ出演が少ない俳優を揃え、それぞれが魅力的な役を演じた。同時期放送のドラマ「いいひと。」(フジテレビ)とのコラボレーション(第7話)も話題になった。
木村主演のドラマの中では、裏番組に「とんねるずの生でダラダラいかせて!!」があったこともあり、視聴率は低かった(平均視聴率18.2%、最高視聴率23.0%)。作品の評価は高かったが、1998年の事件(後述)で加害者が「ドラマを見てバタフライナイフを持った」などと供述したために再放送されず(東海テレビは再放送を途中で打ち切っている)、封印作品となった。事件後、脚本を担当した飯田譲治は自ら『TVドラマギフトの問題 少年犯罪と作り手のモラル』(岩波書店刊)を書き下ろし、この事件、そして本作に対しての思いを綴った。
本放送後、未放送部分も収録したビデオ『ギフト 完全版』全4巻がフジテレビから発売(廃盤)。DVDの発売はアナウンスされていない。
[編集] 1998年1、2月起こった事件との関連性
1998年1月28日、栃木県黒磯市にある中学校で、男子生徒が女性教諭を刺殺。同年2月2日、東京都江東区で中学3年生の少年が警察官から拳銃を奪おうと襲った。それらの事件で使用された凶器は、共にバタフライナイフであり、女性教諭を刺殺した少年は、本作の主人公が器用にバタフライナイフを振り回している場面を見て、そこに「かっこ良さ」を見出したなどと供述した。この供述が報道されると東海テレビは直ぐに再放送中の本作を放送中止とし、その他、再放送を予定していた仙台放送がプログラムの変更を決定。それを見た各マスコミは「少年がドラマの影響で人を殺した」等と報道し始めた。以降、本作は未だ再放送はされていない。また、これらの経緯によって本作を「青少年に悪影響を及ぼす暴力場面を含む作品」、もしくは「不良少年もの」等と誤認している人までも生んでしまった。(「ドラマのテーマを理解していればそのような事件を起こすことはない 」との意見もあるが、そもそも視聴したもの全員がテーマを理解するはずもない)。
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
[編集] あらすじ
代議士・岸和田は、横領した51億円と共に失踪した。横領の共謀者である奈緒美は、岸和田の部屋に残されたクローゼットの中から、血にまみれ意識を失った青年を発見する。3年後、「早坂由紀夫」と名付けられた彼は、奈緒美の元で様々な「ギフト」の配達を請け負う「届け屋」として働いていた。記憶喪失の早坂由紀夫。異様に足が速く、「届ける」ということに異様な執念を持つが、それは記憶を失う前と関係があるのか?「届け屋」という仕事をしていく中で、由紀夫はさまざまな人と出会い、記憶を取り戻していく・・・。
[編集] 出演
- 早坂由紀夫-木村拓哉
- 記憶喪失の「届け屋」。岸和田のマンションのクローゼットの中で傷だらけになっていた。「届ける」ということに強い執念があり、如何なる場合でも相手に依頼の品を届けようとする。直情的、かつ繊細な心を持った青年。足が速く、「頭が空っぽ」なので記憶力が良い。奈緒美に保護された後レンタルビデオ屋の経営を任されているせいもあり、映画に詳しい。マウンテンバイクに乗って届ける相手の元に行き、受取の代わりとしてポラロイドカメラで届け物を受け取った相手を写真に収めている。
- 腰越奈緒美-室井滋
- 人材派遣会社の社長。愛人の岸和田と横領した51億円が岸和田と共に消えてしまう。失った由紀夫の記憶から横領金の手がかりを掴むために由紀夫を保護する。派手好き。「早坂由紀夫」の名付け親。
- ジュリエット星川-小林聡美
- 占い師。奈緒美の友人で、不思議な能力の持ち主。由紀夫の免許証を偽造したことがある。
- 秋山千明-篠原涼子
- 由紀夫に付きまとう女性。由紀夫の記憶に関する情報を奈緒美に伝えるために雇われている。非常に自由奔放。由紀夫に気があり、部屋によく現れる。
- 野長瀬定幸-今井雅之
- 奈緒美の部下。お調子者。それ故なのか作中度々怪我を負うなど痛い目に合うが、作品のコメディ面を盛り上げている。
- 朔原玲子-倍賞美津子
- 岸和田を追っている女刑事。映画好き。お金が大好き。
- 筑波新次-梶原善
- 朔原の部下の刑事。女たらし。
- 田村アキラ-忌野清志郎
- 犯罪マニアの変人。由紀夫の情報屋的役割を担っている。
- 明穂-角田智美
- 昔の由紀夫を見たことがある。
- 古橋典子-春日井静奈
- 奈緒美の部下。
- 畠山菊江-島村千草
- 星川の助手。
ゲスト出演者
- 第1話
- 奈留崎香織-希良梨
- 由紀夫が届ける相手で政治家の娘。愛人を何人も作る父親に反発し、援助交際で金を稼いでいる。届けるものは父親からの手紙と小切手。
- 郡司幸太郎-尾藤イサオ
- 風俗関係のヤクザ。香織に金をぼったくられたことを根に持っている。
- 吉原英二-清水章吾
- 第2話
- 神林トメ-赤木春恵
- 由紀夫が届ける相手。不仲だった夫の死後、銀行から夫の預金を引き出した。銀行が預金欲しさに夫に女を紹介し、あげく夫が死んだため銀行に恨みを抱いている。届けるものは金銅仏。
- 藍川和男-井川比佐志
- 元金庫破り。漫画好きで、パーマンと呼ばれている。金が嫌い。依頼の域を超えて「届ける」ことに徹する由紀夫を高く評価した。
- 大川-中丸新将
- 銀行の支店長。銀行の金を使い込んだため、その穴埋めのためトメの預金が必要。
- 戸塚-近藤芳正
- 銀行員。大川と共に銀行の金を使い込んだ。トメが預金の条件として提示した金銅仏を届けることを奈緒美の会社に依頼する。
- 第3話
- 戎岡悟-岸部一徳
- 由紀夫が届ける相手。一週間前はサラリーマンだった殺し屋。借金を背負わされ、妻と子供を人質に取られた為、宮戸を殺すことを強要される。癌に侵されている。届けるものは家族の写真と殺人の指示が書かれている書類。
- 戎岡永子-香坂みゆき
- 戎岡の妻。夫の身を案じている。
- 戎岡さやか-鈴木杏(当時は子役)
- 戎岡の娘。
- 宮戸大四郎-大塚周夫
- 日本大栄建設社長。手抜き工事が原因で起きたデパート倒壊事件の責任者。20人の死者を出したにも関わらず責任を逃れようとする最低の男。戎岡が殺す相手。
- 殺し屋-高杉亘
- 宮戸大四郎を殺害。
- 第4話
- 橘川梨江-桃井かおり
- 男を見る眼がない女医。男に貢ぐ金欲しさに臓器売買に手を出している。由紀夫と共に腎臓を届けることに。
- 室田-北村総一郎
- 由紀夫が届ける相手のわがままな性格の代議士。届けるものは死人の腎臓。腎臓を患っており、腎臓が来るのを待ちわびている。
- 息吹-石丸謙二郎
- 室田の秘書。一見室田に忠実に見えるが…。
- 八木-羽場裕一
- 梨江の彼氏。梨江に金をせびっているヒモ男。パソコンショップを経営しているが、借金を抱え倒産寸前。梨江が室田に腎臓を届ける理由も八木の借金を返すため。
- 仲井戸-大杉漣
- 警部。筑波と共に臓器売買に関わる梨江を追う。室田に世話になって、警部になっている。
- 看護婦-池津祥子
- 梨江の病院で働く看護婦。
- 第5話
- 加奈-大河内奈々子
- 由紀夫が届ける相手。医者の娘で医大生。傲慢で世間をなめた態度を取り、大学も親の力で裏口入学している。麻薬の横流しをしている。届けるものは医師国家試験問題(AタイプとBタイプある)。
- クニコ-黒沢あすか
- 加奈の友人。
- 五味-六角精児
- 由紀夫から医師国家試験問題を奪った男。足が速く、200m走で国体ベスト5の成績を持っているが、優勝候補が3人棄権したたけというラッキーな結果なだけ。
- 藤堂-新井康弘
- 五味と医師国家試験問題を取引するヤクザ。
- 第6話
- 柴崎日彦-宇崎竜童
- 由紀夫が届ける相手で刑務所を仮出所したばかりの男。届けるものは歌の入ったカセットテープ。友人の村上が隠した金を村上の恋人のみどりに渡す約束を果たそうとする。
- 望月登-金田明夫
- 村上が盗んで隠した金の行方を捜すヤクザ。その手がかりを掴んでいる柴崎を拉致する。
- 瀬川みどり-沖直未
- 村上から柴崎にカセットテープを届けることを頼まれた女性。星川を通じ野長瀬に依頼する。居酒屋を営んでいる。
- 第7話
- アオイ-葉月里緒菜
- ホテトル嬢。由紀夫が届ける相手で保科が探している同名のアオイを知っている。
- 保科雅彦-寺脇康文
- 証券マン。ホテトル嬢のアオイに心底惚れ、水曜日の誕生日に薔薇の花を届けるために奈緒美の会社に依頼する。
- 第8話
- 高瀬良子-松下由樹
- 由紀夫が届ける相手の整形美人。宝石会社の保険金詐欺に関わり死んだことにされ3年間タイに亡命していたが、二度強盗に襲われたため会社に金を要求してくる。届けるものは宝石会社からの100万ドルのキャッシュカード。日本に帰国してからも痴漢に襲われたため用心深くなり、由紀夫を信用するまで次々と指令を言い渡す。
- 第9話
- 愛川リツ子-藤谷美和子
- 由紀夫が届ける相手。かつて清純派で売り出していたスキャンダル女優。届けるものは苺、その後にリツ子の娘。
- 愛川なつみ-田島穂奈美
- リツ子の娘。親の言うことはちゃんと聞いたりする素直でしっかり者。演技力はリツ子譲り。
- 栗原順一-光石研
- 弁護士。リツ子の元夫でなつみの父親。
- 誘拐犯-梅垣義明
- なつみを誘拐してリツ子から身代金を手にしようとする。
- 第10話/最終話
- 岸和田裕二郎-緒形拳
- 厚生省の代議士で51億の横領金と共に姿を消した奈緒美の愛人。
- 美樹-鈴木京香
- 永井の恋人。昔の由紀夫とは恋人だった。
- 永井-真木蔵人
- 刑事。昔の由紀夫とは昔馴染だった。暴力団の策に嵌り死亡している。
また、このドラマがデビューとなった加藤あい(第1話)、木村拓哉の舎弟役で出演の宮藤官九郎(最終話)など、現在は知名度が大幅にアップし人気も掴んでいる俳優・女優も出演していた。
[編集] スタッフ
- 脚本・・・飯田譲治、井上由美子
- 音楽・・・日向敏文
- 演出・・・河毛俊作、中江功、澤田鎌作
- プロデュース・・・山口雅俊
- 演出補・・・板谷恒一、桜庭信一
- プロデュース補・・・塚田洋子、小林正知
- 制作主任・・・由利芳伸、片岡俊哉
- 制作著作・・・フジテレビ
[編集] 主題歌
- ブライアン・フェリー 「TOKYO JOE」
- ブライアン自身も第8話にカメオ出演した。
[編集] サブタイトル・放送日・視聴率
- 第1話 「女子高生を援助交際ブローカーに届ける」(1997年4月16日)23.0%(82分)
- 第2話 「大切な思い出を届ける」(1997年4月23日)18.7%
- 第3話 「殺人の指令を気の弱い人に届ける」(1997年4月30日)15.5%
- 第4話 「腎臓を死体ごと届ける」(1997年5月7日)17.8%
- 第5話 「過去に会った女に届ける」(1997年5月14日)16.6%
- 第6話 「金塊の場所と歌を届ける」(1997年5月21日)15.9%
- 第7話 「ホテトル嬢にバラの花を届ける」(1997年5月28日)15.6%
- 第8話 「過去に戻って由紀夫が別人になる」(1997年6月4日)16.9%
- 第9話 「消えゆく由紀夫、スキャンダル女優にギフト」(1997年6月11日)19.0%
- 第10話 「思い出した!最後のギフトに秘密」(1997年6月18日)16.5%
- 最終回 「謎がすべて明らかに!さようなら由紀夫」(1997年6月25日)20.9%(81分)
[編集] こぼれ話
- 第4話で主人公・由紀夫は「きしわだゆうじろう」(岸和田裕次郎?)という偽名を使うが、看護婦に名前の字を「裕次郎、『黒部の太陽』の」と説明している。「裕次郎」は無論、石原裕次郎から来ていると思われるが、『黒部の太陽』とややマニアックな作品名を言っているところが、いかにも映画に詳しい由紀夫らしい発言である。
- 前述の騒動以来、作品全編は放送されていないものの、フジテレビの特番内で断片的に劇中のシーンが紹介されたことはある。2008年1月7日に放送された「平成20年間1億3000万人のがんばった大賞」(司会・草彅剛)で2007年までの月9ドラマが紹介され、品川庄司の品川が放送当時の思い出として前述の「いいひと。」と「ギフト」のコラボレーションに興奮したことを語った際、「ギフト」の該当シーンも紹介された。
[編集] 前後番組の移り変わり
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