エキスパンダーサイクル
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エキスパンダーサイクルはの2液推進系ロケットエンジンの動作サイクルの1つである。
推進剤を高温の燃焼室やノズルの周囲へ巡らし、熱交換でエネルギーを受け取った後の推進剤でターボポンプを駆動する。駆動した後のターボポンプも主燃焼室に送られて燃焼される。日本の液体酸素/液体水素上段エンジンであるLE-5Bではこの動作サイクルの前半のみを利用する。すなわち、LE-5Bではターボポンプを駆動した後の水素ガスはノズル内に捨てられ、燃焼には用いられない。
エキスパンダーサイクルにはいくつかの利点がある。
- プレバーナーやガス発生器で生じさせた燃焼ガスに比べて低温のガスでターボポンプを駆動する。低温で動作するのでタービンへの損傷が少ない。二段燃焼サイクルを採用したSSMEの場合、飛行ごとにターボポンプを交換している。
- 動作に対する許容範囲が広い。RL-10エンジンの開発時に断熱材を燃料タンク内に置き忘れた時があったが問題なかった。他の動作形式であれば重大な損傷を与えていたと予想される。
- 安全性が高い。ベルノズルを用いたエキスパンダーサイクルのエンジンでは、高温部の壁面を通じてターボポンプの駆動ガスに与えられるエネルギーには限界があり、それゆえ推力が制限される。他の形式であればより複雑な機構で推力を制御しており、制御が利かなくなる場合がある。
代表的なエキスパンダーサイクルのロケットエンジンにはPratt & Whitney RL-10とアリアン5のVinci[1]、それに日本のLE-5Bがあげられる。
[編集] 用途
エキスパンダーサイクルのエンジン:
- Pratt & Whitney RL-10
- Pratt & Whitney RL-60
- Vinci
エキスパンダーサイクルエンジンの用途Expander cycle engines have been used in: