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イモムシ - Wikipedia

イモムシ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ヤマノイモの葉を食べるキイロスズメの幼虫
ヤマノイモの葉を食べるキイロスズメの幼虫
キアゲハの幼虫
キアゲハの幼虫

イモムシは、チョウ幼虫である。円筒形の体に、疣足をもっている。

目次

[編集] 語源

イモムシは、芋虫の意で、元来はサトイモの葉につくセスジスズメやキイロスズメ、サツマイモの葉につくエビガラスズメなどの類の葉を食べるスズメガ科の幼虫を指す言葉である。伝統的な日本人の食生活においてサトイモやサツマイモは穀物に次ぐ重要な主食作物であった。そのため、これらの葉を食害する巨大なスズメガ科の幼虫は、農村で農耕に携わる日本人にとって非常に印象深い昆虫であった。そのため、イモムシが毛の目立たないチョウやガの幼虫の代名詞として定着するに至ったと考えられる。

[編集] 特徴

イモムシと呼ばれるチョウ、ガの幼虫は、普通、円筒形の体をしている。頭部は丸っぽく、あごは下を向き、触角は短い。触角のそばに小さな単眼が約6個並んでいる。胴体は胸部と腹部の区別なく続く。胸部の下面には3対の歩脚がある。歩脚は短い。腹部の下面には各体節ごとに一対の疣足がある。疣足は節がなく、短い円筒形で先端には爪が多数あって引っ掛かるようになっている。腹部は10節あり、最初の2節には疣足がなく、その後の体節から4対、2節おいて最後の体節に一対の疣足がある。腹部の側面には各体節に1対づつの気門が並んでいる。足はほぼ体の下にあり、体の断面は円形に近い。

シャクトリムシというのは、シャクガ科の幼虫で、典型的なものは細長いイモムシであるが、体の中ほどの疣足が退化している。そのため普通のイモムシのように全身を基物に沿わせるのではなく、体を伸ばし、胸部の歩脚で掴まると、後端の疣足を離して胸部の足の後ろに引き寄せる、特殊な歩き方をする。シャクガ科以外にも、ヤガ科の一部などでシャクトリムシ型の幼虫が知られている。

ハチ目にはハバチという、幼虫が植食性の仲間があり、その幼虫もイモムシ型である。チョウ、ガの幼虫とは、腹部の体節全部に疣足があることで見分けられる。ハバチの幼虫は体の後半部を丸めるものが多い。

歩く時は体を波打つように動かす。多くのものは植食性で、葉をかじる。緑色か黒っぽい糞をする。糞は円筒形。口(下唇)から糸を出すものが多く、種類によって、になる時にまゆを作ったり、葉をつないで巣を作ったりする。

全身に毛や刺が多いものはケムシ(毛虫)と呼ばれる。ただし、明確な区別はできない。また、全身が緑色がかったものはアオムシ(青虫)と呼ばれる。

[編集] 習性

イモムシは多くが植食性で、それぞれの種が、決まった範囲の植物を食べる。それぞれの種が餌とする植物を食草(しょくそう)と言う。親は普通、食草を探して、そこに産卵する。孵化してからは、その上で食べてさえいればよく、そのため移動能力が低い体つきをしていると思われがちだが、実際には、かなりの距離を移動するイモムシは少なくない。ヒョウモンチョウの仲間はスミレを食草にしており、これは小さくてすぐに食べ尽くすので、イモムシは自力で新しい株を探さなければならない。ヨトウムシ(ヨトウガおよび近縁種の幼虫)も、大発生して畑から畑へと移動することが知られる。どちらかというとケムシの部類であるが、ヒトリガ科の幼虫には地表の様々な草本を摂食するものが多く知られており、地表をかなりの速度で移動してはそこに生えている植物を食べる行動を繰り返すものがよく見られる。

イモムシは、鳥などの捕食者に対して防御の仕組みをもつものがある。アゲハチョウの仲間の幼虫は、頭部の後ろから伸縮性のある角状の突起を出し、同時に悪臭を放つ。マダラガ類の幼虫も背中から異臭のする液を出す。

実際に毒をもつものもある。マダラチョウ類は食草に有毒植物を選び、その体内に毒成分を蓄積する。

また、体の側面に黒と黄色や白の同心円の模様を持つものがある。これは目玉模様と言われ、鳥にとっては猛禽を想像させるため、脅かす効果があるとも言われるが、よく分かっていない。しかし、実験室内でムクドリなどを用いた実験では、確かに目玉模様が鳥の忌避反応を引き起こす場合があることが示されているという報告もあり、実際に種によって刺激を受けるとこの模様を誇示する行動が見られるのは確かである。たとえば、アケビコノハの幼虫は真っ黒な体に側面に目玉模様を並べた細長いイモムシであるが、指でつついたりすると体の前半分を持ち上げて曲げ、そうすると目玉が2つ並んだ部分がひどくはっきり見える。また、スズメガの幼虫では、体の前の方に1対の目玉模様を持つものがあり、刺激すると、体をやや縮め、前半身を激しく左右に振る動作をする。この場合、体をやや縮めることで目玉模様がある部分が幅広くなり、マムシの頭を想像させるとも言われる。

[編集] 目立つイモムシ

最もよく知られたイモムシはカイコであろうが、養蚕業の衰退に伴い、最近は身近に目にする機会が少なくなっている。

モンシロチョウの幼虫は、キャベツなど、アブラナ科の植物を食べる。緑色をしており、アオムシとも呼ばれる。アゲハチョウの幼虫は、ミカン類の葉を食べる。若齢幼虫は焦げ茶色、終齢幼虫になると緑色となる。この2つがよく教科書などに取り上げられるイモムシである。

道端などでよく目立つのは、体の後端の背中側に1本の角をもつ、スズメガ科の幼虫である。サツマイモサトイモヘクソカズラなど、身近な植物にいろいろな種がおり、目にする機会が多い。

ヨトウムシ(夜盗虫)というのは、何種かのヨトウガ科の幼虫で、さまざまな野菜を食べる害虫として名高い。昼間は草の根もとの物陰に潜み、夜に出てきて野菜を荒らすのでこの名がある。

[編集] 特に名を持つイモムシ

[編集] その他

名古屋鉄道(名鉄)で1937年から2002年まで使用された3400系電車は外観から「芋虫」の愛称で親しまれていた。同様に、1969年に廃止された東急玉川線(玉電)で活躍していたデハ200形電車も、その姿形や色から「ペコちゃん」・「タルゴ」・「芋虫」と呼ばれていたといわれる。

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズ


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