アプリリア・RSV1000R
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アプリリア・RSV1000Rとは、アプリリアが製造・販売するスーパースポーツタイプの4ストローク998ccの大型自動二輪(オートバイ)である。
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[編集] 概要
1997年、そのころドゥカティが唯一の1000ccVツインエンジン搭載のスポーツモデルを生産していたが、ホンダ・VTR1000F及びスズキ・TLが相次いで発売された。この1年後の1998年にアプリリアより現在のRSV1000Rの前身である初代RSV milleが誕生した。 RSV mille最大の特徴は他のメーカーが90°Vツインを使用していたのに対し、クランク前方と後方に2軸バランサーを備えた(それでも十分特徴的であるが)60°Vツインを採用していることである。また、それによりVツインモデルとしては非常に高い前輪荷重と長いスイングアーム長を可能にしている。しかし、フロントを軸に旋回していく現代的なハンドリングを持つ反面、60°Vツインは高さがあるために、高重心のものがリターンするのに合わせてコーナリングするきらいもあった。
なお、RSV milleは1998年の発売開始からエンジン搭載位置やエンジンチューニング(ビッグバルブ化)など細かくマイナーチェンジが施されている。 そのため、便宜上1998年から2000年までの初期型RSV milleを「ME型」、2001年から2003年までの後期型RSV milleを「RP型」と呼んで区別することがある。 「RP型」には更に厚みのあるシートカウルを持った1型と薄いシートカウルに変更した2型が存在している。
最終型RSV milleである2003年モデルは、最も熟成された「RSV mille」として高い評価を受けている。後のTUONO1000およびTUONO1000Rは、この2003年モデルをベースとしている。
RSV milleは2003年にフルモデルチェンジを受け、RSV1000Rとして生まれ変わる。新設計されたフレームはマスの集中化を目標に掲げ、フレームはヘッドパイプ位置を下げ、リアフレームも下げられた。これによって先代のクセを解消している。また、Vツインのトルク特性はどの回転域でも味がしっかりと味わえるように調教された。 RSV1000Rは2006年にマイナーチェンジを受け、エンジン特性の適正化、ハンドリングの向上などを掲げて大きな変更を受けている。また、従来型RSV1000Rで新規設計ゆえの様々なトラブルを引き起こしてきた各種部品をリファインし、高い信頼性を獲得するに至っている。
[編集] RSV mille SP
アプリリアはスーパーバイク世界選手権にRSV milleを投入するにあたり、RSV milleをベースとしたエボリューションモデルを開発する。これが、RSV mille SPというモデルである。エンジンは当時交流のあった英国コスワースがチューニングを施し、エンジン搭載位置の変更、ボアストロークの変更、更にプラグをシングルプラグにするなどで、最高出力を150psと大きく向上させたモデルである。レーシングパーツを一通り装備した、このRSV mille SPは、日本にはわずか2台だけ輸入されており、生駒のRS TAICHIに長く飾られていた事が知られている。
[編集] RSV mille R
RSV mille SPと、スタンダードのRSV milleの間を埋めるモデルとしてRSV mille Rが発売されている。このRSV mille Rは、スタンダードをベースとして、専用オーリンズフロントフォークおよびリアサスペンション、カーボンパーツなどを奢った豪華仕様で、目玉としてOZ RACINGのアルミ鍛造ホイールが装備されている。このアルミ鍛造ホイールのデザインは非常に好評だったため、後のRSV1000R Factoryにも採用され、これを模倣したデザインのホイールがPEGASO STRADA、果てはRS125まで採用されることになる。
[編集] FACTORY
RSV1000RにはFACTORY(ファクトリー)と呼ばれるペットネームを持つモデルが存在する。内容としてはフレームを黒塗装に、ブレンボ製ブレーキキャリバーをラジアルマウント式に変更、前後サスペンションをオーリンズ製へと変更、さらにOZ製アルミ鍛造ホイールや車体にカーボンパーツを採用したエボリューションモデルである。車重はカーボンパーツ採用により4㎏の軽量化されている。また、2006年モデルはこのFACTORYのみ発売されている。 なお、更にこのFACTORYをベースとした、限定モデルNEROが存在しているが、日本国内での輸入台数は0台となっている。
[編集] SL1000 FALCO
SL1000 FALCOは1999年にRSV milleのエンジンを低中速向けにリセッティングしたライトスポーツモデルである。 RSV milleとはフレーム形状、スイングアームが異なり剛性の適正化によって乗り易さを追求している。 また、大容量タンクの装備や出力をあえて119psまで落としたことで、ツアラーとしても優秀な性能を発揮した。 アクの強いスタイリングと、やや低出力で性能に秀でたところがないこと、また後発のRST1000 FUTURAと競合してしまったことで販売が低迷、あえなくSL1000 FALCOは生産中止となってしまう。なお、このモデルのポジションは、後のTUONO1000が引き継いでいる。
[編集] ETV1000 CapoNord
ETV1000 CapoNordは2000年にRSV milleのエンジンを更に低中速にリセッティングしたアップライトなツアラーモデルである。 独創的でアクの強いスタイリングに身を包み、フレキシビリティの高いエンジン性能、高い走行安定性などでアプリリアの販売台数を地味に支える秀作で、登場から各誌で非常に高い評価を受け続けている。 日本ではアップライトなツアラーモデルは流行らないことと、メンテナンス体制を維持する事が難しいとの判断で、未だ正規ルートで販売される見込みはない。 途中、ETV1000 CapoNord Rally Raidという足回りをロングストロークにし、オフロード走行にも対応したモデルが追加されている。 現在もなお、ツインプラグエンジンを搭載している唯一のモデルである。
[編集] BLUE MARINE
BLUE MARINEは2001年に欧州モーターサイクルショウに登場したネオクラシカルスタイルのスポーツモデルである。 PEGASO650のフェイスに、1960年代のバイクのような長細いタンク、そして均整な美しいスタイルで非常に大きな反響を呼んだコンセプトモデルであった。 しかし、このモデルの販売実現には非常に大きな障害があった。それはV60エンジンゆえのエアクリーナボックスの配置の難しさで、美しいタンクを再現するためにはエアボックス容量に制限を受けざるを得ないため、作ったは良いものの最高出力が60ps程度と、エンジン性能がいちぢるしく低下してしまう。 結局、改善はできずに惜しまれつつも販売中止が決まってしまった。
[編集] RST1000 Futura
RST1000 Futuraは2000年に発売された、RSV milleのエンジンを低中速向けにリセッティングしたツアラーモデルである。 斬新な近未来的なカウルデザインと非常に美しいメーターパネル、実用性の高いパニアシステムなどなど初めてのツアラーモデルとは思えないほどの完成度で話題となった。 設計者は、元bimotaのピエール・ルイジ・マルコーニ氏であり、このRST1000 Futuraを作るために専用のデザインチームを立ち上げて、フレームから設計しなおすという力の入れようであった。 完成したRST1000 FUTURAは、過去最高とも呼ばれるほどの高い実用性を獲得したものの、新たに投入された技術がまだまだ熟成不足だったこととアプリリアの販売不振により、電撃的にマルコーニ氏解雇、デザインチーム解散の憂き目にあいRST1000 Futuraの開発はストップ。販売不振ではなく、開発チームの消滅によって生産が中止されてしまった。 ちなみに、この時にマルコーニ氏のデザインチームでは、SR500レオナルドを開発しており、世界初の500cc2サイクルインジェクションの販売開始に向けて熟成を進めていたが、これも同時にお蔵入りしている。
[編集] Tuono
Tuonoは2002年にRSV milleをベースとして開発されたネイキッドモデルである。 基本的な構成はRSV milleとほぼ同じだが、特徴としてアップハンドル、ビキニカウルが採用されている。 当初は、限定200台のみデリバリーされたモデルTuono Rであったが、マーケットからの要望により正式ラインナップが決定。TUONO1000としてパーツグレードを落として発売される。 また、現在のFACTORY(ファクトリー)と同系仕様のTuono Racingも存在する。このモデルはTUONO1000をベースに、レーシングカウル(オイルキャッチ機能つきアンダーカウルもセット)と、レーシングエキゾーストを標準で付属させた限定モデルである。購入者は、任意に公道設定とレース設定に変更することができ、中々面白い試みがされていた。
2004年には外装ペイント、デカール類を一新してTuono Rとして発売されたが、2003年までのTUONO1000と同じものである。
2006年にベースを新型RSV1000Rにしたモデルチェンジが行われ、スタンダードモデルとエキゾースト変更・カーボンパーツ装備のFACTYRY(ファクトリー)がラインナップされる。