あくまき
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あくまき(灰汁巻き)とは、鹿児島県本土、宮崎県、熊本県人吉・球磨地方など南九州で主に端午の節句に作られる独特な季節和菓子である。
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[編集] 概要・製法
予め一晩ほど灰汁(あく)に漬けて置いたもち米を、同じく灰汁に漬けておいた竹の皮などで包み、麻糸や竹の皮から作った糸で縛り、灰汁で3~4時間炊いたもの。 餅米が煮られることで吸水し膨張するが、水は若干通すがもち米は通さず頑丈な竹の皮で包まれていることにより、餅米自らの膨張圧力で餅化する。
灰汁で炊くだけにアルカリ性食品でもあり、ミネラル類が多く含まれる。 灰汁の原料には樫の木の灰が上等とされるが、その他の木の灰でも作られる。
当地方では「ちまき」と称されるが、一般的な青笹の葉で包まれたものと違い、見た目は「鹼粽(けんそう:台湾のちまき)」のような茶褐色の竹の皮で包まれている。
中は鼈甲色のケーシング状の餅。一般的なちまきや鹼粽のように餡は入れず、もち米のみである。餅ながらねばりは少なく、水分が多いため柔らかく冷めても硬くならない。
[編集] 食べ方・味
単体ではほぼ無味である。 このため白砂糖や黒砂糖、きな粉・砂糖と若干の塩、黒蜜、蜂蜜をふりかけたりするのが一般的な食べ方であるが、人によっては溜まり醤油や砂糖醤油、わさび醤油、ココアパウダーと砂糖などで食べる人もいる。 常温で食べるのが一般的だが、冷やしても美味しい。冷やすとえぐみを弱く感じるため、苦手な人でも食べやすくなる。固くなったら軽く暖めると良い。
切る時は包丁などではなく糸が使われるが、包丁で切ると付着したり柔らかすぎて切りにくいためである。皮で包む際に縛った糸がこの切り分け用にも使えるようになっている。糸を若干湿らせておいて、ぐるりとあくまきを一周巻いてから縛るように引くと、刃物で切るより綺麗に切ることが出来る。
そのままだと微妙にえぐみのような味があるが、多めの砂糖などと一緒に食べるとそのえぐみも味の一環となり、独特の美味さとなる。もっちりつぶつぶしていながら口に入れるとさらりと溶ける食感もあり、この灰汁巻きの味を忘れられない人は当地方出身者を中心に多い。
その独特さ故に若干の好き嫌いや慣れを要する場合もある。しかし、灰を使用する調理法などから食べ物とはにわかには信じがたい他地方の人でも、家族に本地方の人が居た縁などで食べてみたら病みつきになった、という場合も少なくない。
いつも食べる菓子というよりは、年に数回食べたくなる菓子である。
[編集] 歴史・現在
始まりは、薩摩藩が関ヶ原の戦いの際、または豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に日持ちする兵糧として作ったといわれる(その大元は中国から伝来した説、日本に伝来した粽の当初の形がこの地域のみ残ったとする説もある)。また西南戦争の際にも西郷隆盛が保存食として持参しており、これを機に薩摩藩外の宮崎県北部や熊本県にも広く普及することとなった。
保存性であくまきを見ると、長時間煮ることによる滅菌、木の成分による抗菌、アルカリ環境による雑菌繁殖の抑制、竹の皮による抗菌、と実に複合的かつ合理的に出来ている。兵糧で多かった干し飯と比較しても、保存性や食べやすさ等で優れており、朝鮮出兵の際も他国の軍勢は兵糧が尽きる中、薩摩の軍勢だけはあくまきで腹を満たしたと言われている。
それだけに水分が多いのに日持ちは良く、常温で1週間程度、冷蔵庫で2週間程度持つが、持ち運びや衛生面から土産物としては真空パックされたものが多い。また、竹の皮で包む代わりにカップに入れて製造する製法も開発されて、手軽に食せるようにパッケージングされた商品もある。
節句前の鹿児島県のスーパーなどでは、家庭での自作用に灰汁のビン詰めや竹の皮を売っている。 また、製造元のこだわり等により、大きさや値段もまちまちであり、製造元にこだわりを持つ人も多い。
材料さえあれば、漬けておいて包んで煮るだけと簡単に作れ、1個作るのも数個作るのも手間が大差ないこともあり、当地方の人にとっては、自分の家で作って近所にも分けたり、親戚や知り合いが作ったのを貰ったりする、家庭的なお菓子としてなじみが深い。 ただ、若干の好き嫌いがあるためか御土産としてはあまり普及しておらず、家庭的な季節菓子ゆえか通年で一般的に販売はされていない[1] ので、この地方以外で手に入れるのは物産展でもないと難しかった。
しかし近年、九州新幹線開通を契機とした魅力的な観光地への独自的な郷土菓子として、また合成保存料・合成添加物を使用しない手作りの素朴なスローフードとして注目され、南九州の旅館のお膳や自治体アンテナショップ、インターネット通販などで地道に取り扱いを増やしつつある。
[編集] 注釈
- ^ 最近では鹿児島県内のスーパー等で通年販売されている所もある。
[編集] 関連項目
竹の子巻き(笹巻き):山形県の庄内地方で作られる灰汁巻き。笹の葉で巻くところや灰汁にはナラや柿の木、藁の灰を使うところなどが違う。江戸時代に薩摩藩から北前船で伝えられた説が有力。
唐あくまき(唐灰汁ちまき):長崎県の一部で作られる灰汁巻き。かんすいの一種である唐灰汁を用いる。また、巻くのではなく筒状の木綿の袋を使用するところも違う。
つのまき:鹿児島県でも本土には無く、種子島・屋久島で作られる灰汁巻き。もち米を色が付く程度に灰汁に漬け、葮竹の葉で巻いて、湯で煮る若しくは蒸したもの。または、もち米をそのまま葮竹の葉で巻いて、灰汁で煮たもの。稀に小豆等の豆も入れる。大きさは小さめのおにぎり程度で三角形。「つのまき」は漢字で書くと「角巻き」で、巻いた状態に角があるから、と言われている。 東北地方にも「つのまき」があり製法等も似ているが、こちらは灰汁を使用しない。
[編集] 外部リンク
- 鹿児島県ホームページ トップページ>鹿児島の特産品>鹿児島の菓子類・その他